第十四話 新転生者と犬鬼族”No.4”との邂逅 〜餅木歩夢編〜
〜餅木歩夢の視点〜
――――始まりの大地ストファー、ポラ平原【現在時刻、14時10分】
「だ、大丈夫ですか……? す、凄い数の”切り傷”ですけど……?」
目の前で倒れている”犬鬼族の男”を発見した歩夢と雅隆は、慌てて側に駆け寄った。
〈うわぁ……。 本当に酷い傷だなぁ……。 まだ、”生きてる”……よね?〉
すると、そんな歩夢の心配そうな口調の問い掛けを聞いた、倒れている犬鬼族の男が、耳をピクピクっと動かすと、歩夢達の存在に気が付いたのか瞼をゆっくりと開けた……。
〈あ……っ! 良かったぁ〜っ! どうやら、生きてたみたいだね……〉
すると、自分の事を見下ろしている歩夢と雅隆の”安堵の表情”を見た犬鬼族の男は、僅かに顔を上げながら二人に向けてゆっくりと話し出した。
「バウ……ガウガウ、バキュウゥゥ……。『優しいんだなアンタ等……”返り討ち”にされた俺の事何か、放っとけば良いものを……』」
すると、本来なら聞き取れない筈の、犬鬼族特有の”言語”を完璧に聴き取れた歩夢は、思わず自身の内側から嬉しさが込み上げて来た。
〈わぁ……ッ! す、凄いぞ……! 多分、この人は”人語”を話していないんだろうけど、でも僕にはスキル【慈愛の涙】が有るから、しっかりと何を言ってるのかを”聴き取れた”よ……っ!〉
すると、笑みを浮かべている歩夢とは対照的に、その犬鬼族の男が言い放った言語を聞いた雅隆は、怪訝な顔を浮かべていた。
「むむぅ……? せ、拙者には、残念ながらこの者が言っている言葉の”意味”が良く解らないで御座るよ……。 だって、”バウガウ”としか拙者には聴こえませぬからなぁ……」
〈……うーん。 やっぱり、雅隆君には聴き取れないみたいだね……? よしっそれなら、僕が雅隆君にも伝わる様に”翻訳”して上げないとね……っ!〉
歩夢はそう思い立つと、直ぐに雅隆に向かって犬鬼族の男が言っている言葉の翻訳を始めた。
「えへへ、大丈夫だよ雅隆君っ! だって僕の耳には、ハッキリと聴こえたよ……”彼の言葉”がしっかりとね……ッ! それで、どうやら彼は何者かに“返り討ち“にされちゃったって言ってるみたいだよ……っ!」
「ほぉほぉッ! 成程、彼はその様に話してたので御座るか……! どうやら、早速”スキル”が役に立った様ですなぁ! 流石は天界の神々から授かった力で御座る……!」
と、雅隆が感心していると、歩夢の事が気になる様子の犬鬼族の男が、小声で話し掛ける。
「バウゥバウ……? ウアバウ? 『何だアンタ……? 俺の言葉が”理解る”のか?』」
すると、歩夢はその問い掛けに対して、ニッコリと笑みを浮かべながら答えた。
「ふふっ安心して? 僕は、君の“味方“だよ。 僕はスキルの効果の御蔭で、君が言っている言葉が解るから、好きに喋ってくれても平気だよっ!」
「ウア、バウバウッッ!? 『マジか、そりゃあ凄ぇなぁッッ!?』」
「えへへ~。 良かった。 どうやら僕が言っている言葉も君に上手く通じているみたいだね……。 それで、体調は大丈夫なの……?」
「ハァ……ハァ……。 バウパギュ……ッ! バッキュ……ガウバウ……! 『お、俺は……。 一応”大丈夫”だぜ……ッ! 心配してくれて……ありがとうな……!』」
「ふぅ、それなら良かったぁ〜! あ、でも念の為に安静にしててね……」
「バウッ! 『おうっ!』」
犬鬼族の男の“警戒“を解いた歩夢は、更に犬鬼族の男から詳しい事情を聞き出す為にも質問を投げ掛ける。
「ねぇ、所で君は一体”誰”にやられたの……? どういう経緯で反撃されたの……?」
歩夢は、倒れている犬鬼族の男に問い掛けると、男は歩夢に向かって、詳しく事の経緯を説明してくれた。
「バウゥ、パギュウウー……。 バウガウガウン、ガウッババゥゥ……。 『いやな、今回に関しては俺が”全面的”に悪いんだよ……。 少し弱ってそうな”獣人族の女”を襲おうとしたら、逆に返り討ちに遭っちまったと言う情けない話さ……』」
「そっか……。 要するに君は、"盗賊紛い"な悪い事をしてたんだね……」
「ギャウバウ、バウバウガウ……。 バウ、バウキャウン、バフバオンガフッ? 『あぁ、これは”因果応報”って奴だ……。 だが、その獣人族の女は、俺に”慈悲”を掛けてくれててな?』」
「え、慈悲って……?」
「バオウバウ……。 バウギャウギャウバウバウキャオ……。 バウガ、ガウバウッバオウバウ……ッ! 『その慈悲と言うのが……。 俺が”致命傷”を受けない様に彼女は”峰打ち”をしてくれてたんだよ……。 だから、こんな馬鹿で愚かな俺に治療なんぞは要らねぇぜ……ッ!』」
その犬鬼族の男が言い放った言葉を聞いた歩夢は、考え込みながら再び男に向かって話し掛ける。
「う〜ん……。 治療は要らないって言われてもなぁ……。 やっぱり、倒れている人を僕は放っとけないよ……」
「ケケッ、ギャオガウバウバウバウバウ……! オオバフギャオッバオ、ガウバオオ……! 『へへっ、安心しろこれは俺に課された”戒め”さ……! この痛みを背負って、俺は”変わる”んだよ……!』」
「……! って事は、今は”改心”したんだね……っ!」
「ガウ、バウキャオン……! 『あぁ、これから俺は心を入れ替えて”真っ当に生きる”さ……!』」
〈良かった……! どうやら、彼はもう悪い人じゃ無いみたいだね……っ!〉
と、歩夢が安堵の息を吐いていると、若干蚊帳の外になりつつある雅隆が、歩夢に向かって呼び掛けた。
「あの、所で歩夢殿……。 そろそろ、彼が何と言っているかの翻訳を頼んでも良いで御座るか……? えっと、拙者達に”敵意”は無さそうで御座るか……?」
「あぁ、ごめん雅隆君っ! えっと……うん、そうだね。 どうやら彼は、僕達の”心強い味方”になってくれそうだよ……っ!」
すると、歩夢の口からその言葉を聞いた雅隆は、途端に喜びの表情を浮かべた。
「ほほーッ! そうで御座るか……! それなら、一安心で御座るなぁ〜っ! えっと所で、彼の治療はしなくても宜しいので……?」
「いや、彼は特に治療しなくても平気だって言ってるよっ! よし、それじゃあそろそろ彼の”種族名”とか、”個人名”とかを聞き出してみるねっ!」
「おぉッ! それは頼みましたぞ歩夢殿っ!」
雅隆に促された歩夢は、直ぐに犬鬼族の男に向き直ると彼の名前の事を問い掛けた。
「ねぇ、もし良かったら、君の種族名と名前を教えてくれるかなぁ……?」
「バウ? ガウバウ……? バウバウバルフバ……。 ギャオガウ、バフバオギャオガウバウバウ……! 『ああ? 俺の名前か……? 俺の名は”バルフ”だ……。 犬鬼族の、”No.4”の実力の持ち主だぜ……!』」
〈んー、No.4? それって、どのくらい凄いんだろう……? まぁ、その事は別にいいや。 えっと、それじゃあ次は、僕達の"仲間"に加わってくれるのかを聞いてみようかなぁ……〉
すると、バルフの名を聞いた歩夢は、すかさず彼に向かって”勧誘”の言葉を投げ掛けた。
「バルフさん……ですね? 所で、バルフさんに”お願い”が有るんですが、是非とも僕達と一緒に、この世界を冒険してくれると助かるのですが、どうでしょうか……?」
その歩夢からの勧誘の言葉を聞いたバルフは、驚いた様な表情を浮かべながら思わず聞き返した。
「バウギャウ……!? ギャウギャオ、ガウバオバオバフ……ガウバオオギャオバオガフ……? 『なんだって……!? そいつは詰まり、こんなにも馬鹿で愚かな俺なんかの事を……お前達は仲間に誘ってくれてるってのか……?』」
「はいっ! その通りですよ! 是非とも僕達の仲間になって下さいッ! お願いしますッ!」
「ケッ、バフゥギャオガウ……。 ギャオ、バオガウギャオバフバオガフギャウ……。 『ヘッ、そいつはとても嬉しい誘いだがな……。 生憎、俺は母ちゃん達の居る”故郷”に帰ろうとしていた所だ……』」
「えっ、故郷に帰る……?」
「ケッ、バオウ、バフフゥ……? ギャオバフッガウ、バフ、ガウガウギャオ、バフギャオバオウギャオ……バフゥ? 『へっ、でもまぁ、なんだぁ……? 折角の出逢いだし、もし、お前等が良いってなら、俺の故郷に遊びにでも……来るか?』」
「えっ!? バルフさんの故郷!? おぉ〜っ! 行ってみたい、行ってみた〜いっ!」
「バフ、ガウバオオガウバオバウバウ……! ギャオ、ガウバオバウバウガウガオ……! 『それに、俺の母ちゃんが作る料理は人間が食べてもきっと美味しいと思うぜ……! 特に、母ちゃんお手製の”熟成ドラゴン肉シチュー”は絶品だぜぇ……!』」
〈えっ!? バルフのお母さんお手製の熟成ドラゴン肉シチューだって……!?〉
ゴクリ……。
と、歩夢は生唾を呑み込んだ……。
何故なら、歩夢はシチューが根っからの大好物なのだ。
おまけに、熟成のドラゴン肉と来たもんだ……!
これには、流石の歩夢も涎が止まらなくなって仕舞う……!
「熟成……ドラゴン肉シチューかぁ……!」
ジュルリ……。
「なぬ!? な、なんですかな……? 一体、そのドラゴンシチューとやらは……?」
不意に、歩夢の口から発せられた言葉の意味を理解出来なかった雅隆は、首を捻った。
「あ、そうか。 雅隆君はバルフさんの言語が解らないんだっけか。 えーとね、どうやらバルフさんは僕達をバルフさんの故郷に、”招待”してくれるみたいだよ!」
「ほぉ? バルフ殿の故郷に……?」
「うんっ! そして更に、なんとバルフさんのお母さんのお手製の熟成ドラゴン肉シチューを僕達に振る舞ってくれるみたいだよ……!」
「なんと! それは誠か……ッ!?」
「うんっ! ねっ、ねっ! 凄いでしょー!? 熟成ドラゴン肉シチューだよ……! バルフさんのお母さんお手製だよ……!」
「ほほぉ! 熟成ドラゴン肉シチューとは、中々に心を弾ませる料理名で御座るなぁ〜っ!」
雅隆は舌舐めずりをしながら、熟成ドラゴン肉シチューに思いを馳せる。
「だよねっ! これはもうバルフさんの故郷に行くっきゃないよね! ねっ!!」
「ふむ……。 それならば、厚かましいかも知れぬが、ついでに本日の”寝床”のご提供もバルフ殿に御願い出来るで御座るか……?」
と、雅隆は今日の寝床の確保を試みた。
その提案を聞いた歩夢も、ハッとした様な顔を浮かべると、直ぐ様バルフに向かって必死にお願いした。
「おぉっ、機転が利くね雅隆君! あの、すみませんバルフさん……っ! あの、もし宜しければバルフさんの実家にお泊めして下さると、とても嬉しいのですが……どうでしょうか!?」
「バフ? ガウバウ。 バウバウガウ、ガウバフバオガウバウバウバウ。 『んん? 別に良いぜ。 俺の家の寝床は確か、3つぐらい余ってた筈だから好きに使っていいぜ』」
「やった! ありがとうバルフさん!」
「ギャオッ! バウ、バウガウギャオ、ガウバウバウガウバオ……! 『うしっ! じゃあ、そろそろ動ける程に傷も癒えて来た事だし、俺の故郷に向かうとするか……!』」
「うんっ! よーし、出発進行〜!」
「出発するで御座るか〜!」
「バフッ! ガウガオギャオバオバウバウ! 『ははっ! なんか上機嫌だなお前等!』」
かくして、二人と一匹は、故郷の母ちゃんのお手製シチューを食べる為に”新たなる一歩”を踏み出したのだった……。
【現在位置】
【始まりの大地ストファー、ポラ平原】
【現在の日時】
【4月7日 14時16分 春】
【餅木歩夢】
【状態】:ウキウキ
【装備】:フリフリのワンピース 鞄
【道具】:鞄の中に様々なコスプレ服
【スキル】:慈愛の涙
【思考】
1:シチュー♪ シチュー♪
2:バルフさんのお母さんお手製の♪
3:熟成ドラゴン肉シチュー♪
【基本方針】:シチューを食べる。
※寝床を確保する事に成功しました。
【大宮雅隆】
【状態】:朗らか
【装備】:眼鏡 忍と描かれた白の服 リュック
【道具】:リュックの中に様々なコスプレ服を入れている。
【スキル】:永遠の瞬間移動
【思考】
1:いやはや、拙者にはバルフ殿の言葉はさっぱり解らないで御座るが、良い人っぽくて一安心で御座る……!
2:今宵の食事と寝床を確保出来たのはラッキーで御座る……!
3:しかし、今の拙者達は一文無し……! 何処かにお金を稼げる仕事があれば良いので御座るが……。
【基本方針】:バルフの故郷に行く。お金を稼ぐ。
※寝床を確保する事に成功しました。
【バルフ】
【状態】:健康
【装備】:威嚇の為の爪と牙
【道具】:母の写真
【スキル】:勇気の咆哮
【思考】
1:コイツ等良い奴そうだし、沢山お祝いしてやろう!
2:母ちゃんのシチューを食べたらきっとコイツ等泣いて喜ぶぞ〜っ!
3:それと、俺を峰打ちしてくれたあの獣人族の女に……きちんと謝りたいぜ……。
【基本方針】:歩夢達と一緒に母ちゃんのシチューを食べる。自分が襲おうとした獣人族の女に謝罪する。
※心を入れ替えました。
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