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騎士と勇者の戦記譚  作者: くらくら海月
第一章
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第9話 新たな任務

 軍議は荒れた。終いには「制圧任務失敗の被害が大きすぎるからと援軍としてきた我ら第3騎士団に正確な情報をあえて伝えなかったな!」とか「駆けつけ一戦しただけで敗北宣言する無能!」等と罵り合うまでになってしまい…其々の副長達が諌める場面も。


 そこまでして出た結論は帝都に報せ指示を待つという事に収まった。早速、西市街区に設置されたポータルゲートを潜り帝都へと報告を済ませる。


 想定外の被害報告に上層部も自体を深刻に捉えたようだ。しばし待てとだけ告げられ待機させられた翌日。


「オビロン王国攻めは先に派遣されていた部隊全て及び第3騎士団は撤収とする。新たに増強部隊を編成し送ることとなった。それともう一つ、第3騎士団騎士アムス・ベオフィオルドよ。副長の任を解く!これからはルシーク将軍直属の元で特務騎士として新たな部隊の編成を行い遊撃と件の悪鬼対策を任とする」


 元帥閣下からの使者を前に団長達と共に跪き、そして告げられた言はアムスにとって寝耳に水であった。(何故自分がその様な任に!?)内心思うも口上は出来ない。部隊編成には帝都にいる兵を選別しろと言われた。


 団長からは新たな任に精を出せと言われたが…さてどうしたものか。とにかく優秀な人材を揃えなくてはあの子供にどう対応したものか迷ってしまう。


 その後、ルシーク将軍に面会した。顔の左目側に縦に走る大きな傷跡があり、かなり圧迫感を感じさせる40代の男性である。帝国では珍しい赤髪をオールバックに纏めている。


「この度将軍閣下の元へ配属される事となりましたアムス・ベオフィオルドです。今後お世話になります!」

「おぅ!来たな新人!話は聞いているってか俺が引き抜いたのだけどな!ふははっ。お前は優秀らしいからな!前から目は付けていたんだ、新たな部隊を創設するのに当たって丁度いい人材だろう。特務騎士となればある程度の自由権限が認められる。腕の立つモノを好きに集めるがいいぜ!」


「はっ!過分な評価恐れ入ります!出来る限り早急に編成してみせます」

「期待しているぜ!」


 目の前にいるこの人物が原因だったか…と頭が痛くなる思いを胸に、こうして帝国本土で部隊編成を行う事となったのだった。


 さて部隊編成だ。まずは志願者を募ってみた。幾ばくか集まった者達に会ってみたが…勇者と呼ばれる者の存在も知らず興味本位や己が見えていない力自慢の者ばかり。コレじゃない、コレでは駄目だ。


 帝国には士官していないが名を馳せている武人達もいる。(そちらをあたるのが良さそうか…)そう思案する。


 確か帝都の北東にあるエピカラースという山に凄腕の弓師がいるというのを記憶から探り出す。


(名は……テ、テオ-……そうだ『鷹の目』テオドラ!ふむ、行ってみるか)呼付けるのではなく会いに行ってみようと、ルシーク将軍に許可を求めに行った。


 そして現在、目的の山の麓にある村から山に住んでいるとの情報を得向かっていた。供回りとしてついて来た兵士達は村に残してきた。「お一人では危険です!」と言われたが異名持ちの人物がいるところだ、危ないようなモノは出まい。


 馬で進むのがきつくなり引いて歩く。道は細々とだがあるのだが乗馬した高さでは木の枝が体に当たるようになって来た。敢えてそうしているのだろう。


 そうして進むこと半時程過ぎた頃「止まれ…何者だ?山に何の用だ」と上の方から声聞こえた。(女性の声?木の上か!)声のした方を見ると僅かだが気配を感じ位置を特定する。この距離で尚気配を感じ取り難いとは恐れ入った技量だ。


「私は帝国特務騎士アムス・ベオフィオルドという者だ!山に住むというテオドラ殿にお目通りしたく此処に来た!貴女がテオドラ殿であろうか?」

「あたしはテオドラではない。父に何用だ?」


(父?テオドラの娘なのだろう。村での情報では聞かなかったな)そう思いつつ「私と共に戦って欲しい者がいる!鷹の目と呼ばれるテオドラ殿ならば申し分ない働きをしてくれるだろう。どうか私に力を貸して欲しい!」


 それにやや間があってから「無理だ!」と返される。

「無理?どうか直接会って話を聞いて欲しいのだ!」


「だから無理だと言っている!……父は死んだ」

「なっ何!?テオドラ殿は亡くなったのか………ならせめて墓前で冥福を祈らせてくれ…」


 そう言うと声の主が木から飛び降りてきて華麗に着地する。日焼けし褐色した肌に腰まである茶色い髪の先を紐で一つに縛り、左胸を補強した皮鎧を身に着け、左手だけ肘くらいまでの革手袋、そして右目に眼帯という出で立ちの20前後の女性であった。


「…付いて来い」それだけ言うと道を進み始める。


「すまない。名を聞かせては貰えないだろうか?」

「…ナイア」


 沈黙が続く、そして開けた場所に出ると意外としっかりとした家が建っていた。その脇にある大きめの石が乗せられただけの墓標を前にする。


 瞑目して祈り呟く「惜しい人を亡くした…得がたい人物であったであろうに…」

「なぁあんた、都の人間だろ。言葉遣いや服装でなんとなくわかる。あたいで良かったら手を貸そうか…?」


「ナイア殿が?」

「ナイアで構わないよ。父を慕って来たんだ、力を貸して欲しいんだろ?」


「う、うむ。それはそうなのだが…」


「父の力は継承している!」そう言うと左手で右目を指して見せ「それに…山に一人というのも侘しいしな…」と呟くのだった。

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