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赤碕姫香とジャンヌ・ダルク  作者: 本渡りま
EPISODE Ⅰ 出会い編 前編
21/22

第3.5節「ジャンヌの思い」

 ――私は学校の友達から秀才と呼ばれていた。

 幼い時から素晴らしい素質を持っていたらしい。小学校に入ったときは、平凡だったのにいつの間にか楽しく感じて在学途中で主席卒業できる単位を貰った。

 その時に最初に喜んでくれたのは、父と姉だった。よくやった、すごいわ、と言ってすごくうれしそうな顔をしていた。でも、もう一人……母には伝えられなかった。

 一番に伝えたい人物……でも伝えられない……いつになったら母は帰ってくるの?


「大丈夫だ、母さんは必ず帰ってくる。ここは警察に任せよう、な」


 父はいつもそういって私の気分を晴らそうとしてくれたが、何日、何か月、何年……いつまで経っても母は帰ってこなかった。


「死んだだと! ふざけるなッ! 優秀だと思っていたががっかりだ。もういい! お前たちを信用した私がバカだった……出ていけッ!」


 偶然にも聞いた母親が死んだという情報……私は思わず手に持って紅茶の茶葉が入った缶を落としてしまった。とりあえず部屋に向かっていたが、記憶がおぼろけで帰った行動が思い出せない程放心状態になっていた。その放心した後、茶葉をこぼしてそのままにしていたので家政婦さんに怒られた……。


 後日、改めて調査団からの母の報告書が届いた。結果は死亡と断定され、捜査も打ち切られた。

 私は母親の事をあまり覚えていない。でも、覚えていなくても私は母親に会って色々したい。警察が動かないなら、私が動かないといけない……そう決めた瞬間だった。

 私は母を探すことを決めた。……まず、母の最後の目撃情報を頼りに探そう。だが、探す前に日本語を勉強しなければならない。とにかく覚えた。母親のためなら、なんだってやってやった。

 今回の日本に行くことも、父の代わりに私が行くと強くお願いしたのだ。


「――わかった。シャル、お前が日本に行け」


 何度頼んだことか……ようやく念願の日本に行ける機会を作ることができたのだ。


「ただ、条件がある。日本に行ける期間はたった四日だけだ。それまでになんとか西園寺殿の契約を結ぶのだ」


「え……? 何でですか? 滞在期間は一か月じゃ……?」


「お前が心配で期間を短めにしておいた……」


 期間限定の日本滞在、しかも探す場所とはほど遠い場所での滞在だった。今までの苦労がすでにパアになったような気分だった。


「何でですか! お父様!」


「……シャル、まだ幸子のことを探しているだろ? 悪いが、お前だけで母親を見つけるのはやめておけ。……大丈夫だ、私の信頼できる新たな調査団が隈なく探している。だから、来日中に母さんを探すのは止めなさい」


「――――わかりました」


 唇を噛みしめながら、返事をした。ここでふざけないで……と怒鳴り散らしたら、日本に行けるチャンスが無くなってしまう……そうなるのは嫌だった。折角の来日……期間限定のチャンスでも、私は母の情報をもっと手に入れなければ……と、そう思った。


 でも、現実は違った。母を探す旅がいつの間にか観光気分になってしまった。勿論、姫香さんがよそ見しているときに少しずつ聞きまわっていたが、私に対して疎外感な目で見られて相手にされなかった。

 

(絶望的……いったいどうすれば……?)


 このまま……母の情報を手に入れられないまま、母国に戻ってしまうのか……? と、もやもやとしていた。

 けど……一つだけ、偶然にも姫香さんの知り合いであった店主は違った。外国人の疎外感な感じで見ないで、家族同様に優しく接してくれた。その店主に、少しだけ話を聞いてもらって母の写真を見せた。

 そして、店主は驚いた表情で「幸子さん!?」と叫んでいた。


「母のことを……知っているんですか?」


「母……そっか……、幸子さん結婚したんだ……そうなると、君は……幸子さんの娘さん?」


「はい、娘です」


 偶然にもこの店主は母の知り合いだった。そして娘であることを伝えた私は、行方不明の母がどこにいるのか尋ねた。もしかしたら……近くにいるかもしれない……と期待した。


「ごめんね、私にも幸子さんの居場所は解らないの」


 けど、答えは空振りだった。予想はしていたが、母親の親友に出会えて本当に良かった……。


「……でも、もし彼女――お母さんに会うなら甲州の実家に行けば何か手掛かりがあるかもしれないわ」


 店主――京子さんは、母の実家の場所を示した地図と風景写真を私に手渡した。その写真は、日本の歴史本で見た瓦葺の屋根で覆われた家と旗が写っていた。


「何十年も前の写真だけど……多分この場所だと思うわ。この場所が変わってなきゃいいんだけどねぇ……」


 そりゃそうだ。何十年前の写真だ。何かこの家に変化があってもおかしくはない。……でも、数少ない情報を手に入れたんだからここで無駄にするわけにはいかない。


「ねえ。もし幸子さんに出会ったら、よろしくねって伝えといてね」


「はい、母に伝えておきます!」


 バイバイと手を振って、姫香さんと一緒に店を出て行った――



 …………日本に居られる時間は明日まで。

 結局見つからないまま終わってしまうかもしれない。だけど、情報を少しでも手に入れて、日本に再度訪れるときに行動しやすいように準備しなければ……。

 

(もうすぐだから、待っていてね。お母さん――――)




 

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