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☆満点の答え【カエヒラ&リズ】

 日本から戻ったカエヒラ・アルベルトは、ミチミチにあるリズ・アルベルトの工房に来ていた。

 2人は夫婦だが、ほぼ別居生活を送っている。といっても、不仲だとか遠距離だとかそういった理由からではない。

 カエヒラは王族直属の魔術師、リズは装飾職人、お互いの仕事が忙しいのだ。

 だが、会いたい時に会う。見た目は若いが落ち着いた年齢の2人は、今の関係で十分満足していた。

 カエヒラは部屋の隅のテーブルセットに座っている。


「カエくん、セリちゃんは一緒に戻ってきてくれなかったのね」

 リズは言いながら、カエヒラの前のテーブルにお茶を置いた。


「向こうの世界の事情があるようです。まあ、きっとすぐに会えますよ」

「ライくん、向こうの世界でちゃんと生活していた?」

「なんだか不思議な仕事をしていましたよ。やたらと服を着替えて大勢の人に見てもらうのです」

「何それ?」

「モデル……とか言う職業のようです」

 カエヒラは少し考えてから答えた。


「ライくん注目されるの苦手なのに、なんでそんなことしてるの?」

「さあ。生活に困らないようこちらの世界の基本の鉱石を持たせたのに、使わなかったようですから」

「鉱石?」

 リズは首を傾げる。


「向こうの世界の鉱石の成分を調べて、似たようなものがあれば売れると思ったのです。多少違っていても成分さえ分かれば魔術で組み変えて、ライルなら難なく同じものを作れるはずです」

 そう言ってカエヒラはようやくカップに口をつけた。どうやら熱いものが苦手らしい。

 そして再び口を開く。


「世界の違うものを持ち込むべきではないなどと綺麗事を言っていたので、鉱石を使うのは最終手段とでも考えていたのでしょう。余程、魔術を使わず自分の力だけで生計を立てたかったのでしょうね。でも、もっと持ち込むべきではないものを持ち込むことにしたようですけど」

 カエヒラは美しい顔で微笑む。


「え?」

「もう1人のセリア姫です」

「向こうのセリちゃんは、8歳違うから今18よね。向こうのセリちゃんも可愛いんでしょうね」

 リズは目を輝かせ、自分の胸の前で両手を組んだ。


「はい、とても。表情が豊かなのはどちらも変わりませんが」

 リズは頷く。


「そっかあ……。カエくんはどうするの?」

「そりゃあ、私も面倒見ますよ。ライルはあちらの世界で生活すると言い出した時点で、そうしようと決めていたのかもしれませんね」

 リズは嬉しそうな表情でカエヒラに抱きつく。


 たとえ不道徳な行いだとしても、カエヒラならきっとライルに協力してくれるだろうと思っていた。

 高等魔術が使えなければ、魂のない躰を維持することはできない。そして高等魔術を使い続けるためには膨大な魔力を要する。

 リズにとって、カエヒラの答えは満点だった。



「それはそうと、カエくん忘れてないわよね? ライくんの異常なキニュレイトを見せてもらうって話」

 リズは話を変えた。


「異常というか姫のことが大好きすぎる"キニュちゃん"ですよね」

 カエヒラは笑っている。


「小さいライくんが居たときから、自分の魔力に想いが入っちゃうって相当なものよね」

「だからこそ、ライルがすんなり見せてくれるとは思えませんけど」

「ええ!? 絶対見たい。見せてもらえる状況、寧ろライくんがキニュちゃんを出さなければならない状況を何としても作るのよ!!」

「姫に協力してもらいましょうか」

 2人の楽しそうな話し声は、いつまでも続いた。

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