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王子様が迎えに来てくれたと思ったのだけれど  作者: 録宮あまね
11.わたしたちの未来

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満たされなくていい

 は、恥ずかしい……。

 消えたい。

 でも、彼にそういうつもりがなくても、もう引き下がれない。決して軽い気持ちなんかじゃないから。


「怖い夢でも見たのか?」

 わたしは左右に首を振る。


「あの、部屋に入れてください」

 日本に戻ってしまったら、次にいつライルさんと会えるか分からない。


「しかし……」

 ライルさんはそっとわたしの肩に触れる。


「震えている」

 呟くと、ライルさんは優しくわたしの肩を抱き、部屋に入れてくれた。

 そしてわたしに柔らかな毛布をかけて、自分の左手を緩く振る。


 体の奥が温かい。

 魔法だ……。

 けど、寒さからの震えじゃないから、体を温める魔法なんて何の意味もない。

 ライルさんに、直接温めてほしい。

 でも……そんなことは言えない。



「まだ震えている。本当に一体どうしたんだ?」

 ライルさんは不安げな瞳でわたしをソファーに座らせる。

 わたしは俯いたまま顔を上げられない。


「こんな時間に俺と2人きりになって危ないと思わないのか?」

「……危なくていいんです」

「何がいいんだ。よく考えて行動しろ」


 ああ、ダメだ。

 全く伝わらない。

 どうしてこんなに鈍いの?

 もっとはっきり言わないと。

 勇気を出して、もっとはっきり伝えないと。


「だからそれが目的で来たんです。よ、夜這いですから!!」

 わたしは立ち上がって叫んだ。


「は?」

 ライルさんは目を丸くする。


「だって日本に戻ったら、もう次にいつ会えるのか分かりません。わたし……急にお風呂に入りだしたので、ライルさんもそういうつもりなのかと」

「風呂? ああ、風呂なら普段から泊まらなくても利用している。ハンナの白濁の湯は絶品だからな」


 え?

 その情報、もっと早く知りたかったです。

 恥ずかしさのあまり、顔が紅潮し、倒れそうになる。


「お前、昼間からおかしかったが、そんなことを考えていたのか」

「……ごめんなさい」

「何を謝っている」

 ライルさんは笑った。

 酷い……。


「笑わないでください。すごく必死だったのに。大体、ライルさんも悪いんですよ。紛らわしいですし、いくらなんでも鈍すぎです」

「口づけだけであたふたするようなお前が、そんなことを考えるなんて普通思わないだろう」

 ライルさんは返す。


 それから急に真顔になり、

「分かった。では遠慮なく」

と言い、そっとわたしに口付けた。




「本当にいいのか」

 彼は妖艶な表情でわたしを正視している。

 わたしは震えながら頷く。


 ライルさんはわたしを抱き上げ、ベッドに寝かせると今度は数度、深く口づけた。

 彼の美しい瞳に、不安そうな表情のわたしが映っている。

 彼はわたしを強く抱きしめた。


「セリア、ありがとう。もう十分だ。今はこれだけでいい」

「どうして?」

 ライルさんは優しく笑う。


「俺はいつだってお前を欲している。だが今ではない。まだ待てる」

「そんなのダメです。遠く離れる前に」

「離れるつもりはない」

「え?」

 わたしはベッドから起き上がり、その場に座る。


「そうか……きちんと伝えていなかったな。俺もお前と一緒に向こうの世界へ行く」

 ライルさんもわたしの前に座った。


「それは向こうの世界に送ってくれるって意味ですよね?」

「勿論、止めた時を戻さねばならないから一緒には行くが、そのまま俺も向こうへ残る。もう二度とお前から離れるつもりはない」

「でも、向こうのわたしはセリアじゃありません」

「分かっている」

「分かっていません。向こうのわたしは、えっと……そう。ちんちくりん。ちんちくりんですよ? 初めて会ったとき、ライルさん、わたしのことちんちくりんって言いました」

「何故そんなにその言葉を強調する。幼いという意味で使っただけだ。別にあの姿はあの姿で可愛い」

「そう……なんですか?」

 悪口じゃなかった。

 ライルさんの言葉は本当に分かりにくい。


「お前がどんな姿になろうと愛している」

 ライルさんはわたしの瞳を見つめた。


「本当に、一緒に来てくれるんですか?」

 ライルさんは頷く。


「嬉しい。わたしもライルさんと、もう二度と離れたくありません。どんな世界でも一緒にいたい。好きです。ライルさんが大好きです」

 わたしはライルさんに勢いよく抱きつき、そのまま彼を押し倒す。


 ライルさんの体温を感じる。

 ライルさんは、そのまま動かない。



「離してくれ」

「え?」

「さすがに……その気になる」

「あの、わたしは別に」

 ライルさんになら何をされても構わない。

 元々そのつもりで来たのだ。


「向こうの世界のお前は幼すぎる」

「はい?」

「子供だろう」

「子供じゃないです。高校生です」

「コウコウ? いや、駄目だ。まだ子供だった。一度でも体を重ねたら、きっと俺は際限なくお前を求めてしまう。しばらくは満たされなくていい」

 そう言って、ライルさんはわたしから視線を逸した。


 ああ、そうか。

 だからライルさんは……。

 優しすぎて、胸が痛い。


 愛してる。

 言葉では伝えられないほど。

 わたしは初めて、自分からライルさんに口づけた。

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