歴史
短め
魔王ヘル・アーチェ陛下率いる魔族・亜人・人外連合軍、通称「魔王軍」は人類との飽くなき生存戦争を続けている。
具体的に言うと千年くらい。
俺も人間だけど大丈夫なの?
「アキラ様は、『陛下に忠実なる僕』として召喚されました。ですので、問題ありません」
「それって陛下の奴隷とか下僕ってこと?」
「概ねそうですが、何か問題でも?」
「い、いや、ないです」
陛下の僕となることの何が問題なのか、と言いたげな目を前に否定するだけの勇気と度量は俺は持ち合わせていない。
ファンタジーの魔王よろしく、強いと言う事実が忠誠心を集めているのだろうか。
「……では、続きをお話ししても?」
「どうぞどうぞ」
コホン、と一度咳込んでからソフィアさんが説明を再開。
この世界には、不思議な術がある。
魔術や精霊術、召喚術など、物理法則を無視した奇跡の術。それを持つ魔族ら魔王軍は、最初の数百年くらいは人類軍に対して優勢だった。
しかし、人類軍は物理法則を進化させた科学の力でもってその差を縮め、ついに直近数十年では魔王軍に対して優位に立つようになったという。
「人類軍の科学力とやらはどれくらいなんだ?」
科学が発達したということなら銃とか大砲とかはあるのだろう。
程度によれば、現代日本生まれの俺が前世知識チートで技術応用して魔王軍無双をすれば事務仕事からオサラバできるかも……とか考えてた俺がバカでした。
「人類軍は鋼鉄の船を作りました。しかも帆を一切使わずに大洋を渡り、我々が使用する木造帆走船を粉微塵にしました。空には人類軍の鉄の竜騎士が舞い、爆炎の魔術を詰めたような物体を空から落としてきます。地平線の向こうから鋼鉄の暴風が吹き荒れ、夜に乗じて白兵戦を挑もうにも、その鋼鉄の豪雨の前に全滅して……」
「あぁ、うん、だいたいわかりましたからもういいです」
人類軍は既に産業革命を経て第一次世界大戦並の科学力を持っているらしい。
「よくもまぁ、その人類軍相手に戦線維持できるね……」
「突破された箇所を、魔王陛下直属の魔王親衛連隊による大火力魔術で食い止め、ゴーレムの大量投入による人海戦術で以って押し返しているようです」
「……」
頭抱えた。付け焼刃の対策しかできていないようだ。
しかしそれでも戦線を維持できるヘル・アーチェ陛下、マジ魔王である。地球にも魔王と呼ばれた某爆撃機乗りがいたがそれをも超える魔王さである。
でもこの状況、さすがの魔王もやばいと思ったのか、30年かけて一発逆転の召喚魔術を執り行ったそうだ。
そうして出現した救世主と言うのが……まぁ、俺だったわけで。
「……使えませんね」
「本当にごめんなさい」
こんな無力な日本男児でごめんなさい。
今日はここまでです。
読んで下さりありがとうございました。




