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お引越し作戦です!

「倉庫を一元的に管理ねぇ……」

「はい。加えて、魔王城内の倉庫が手狭になったことによる移転を考えています」


 この日、俺は輸送総隊ウルコ司令官と会っていた。

 用事はふたつ。


 ひとつは輸送隊倉庫の管理を兵站局に正式に移行すること、もうひとつは輸送隊倉庫を移転することである。

 というより輸送隊倉庫移転に伴って、じゃあついでに兵站局の管理下に置いちゃいましょうということだ。


 輸送隊を兵站局の管理下に置こうかな、とも思ったが輸送隊は既にかなり大規模な組織となっているので将来はさておき今は諦めている。

 ウルコ司令官の立場もあるしね。


「まぁ確かに、輸送隊の奴らの多くは字が読めない。今だって倉庫の管理は兵站局の人がかわりにやってくれてるからな。名目が代わるだけだろう?」

「はい。ですが少しずつ管理体制も変えていくつもりなので、全てが同じというわけには参りません。輸送隊員には多少の負担をかけることがあるかもしれませんが……」

「……あまり過度な負担をかけられたら困るが」

「その点はご心配なく。今回の提案は、あくまでも兵站局と輸送隊の連携を強化することが目的であって、輸送隊に負担を押し付けるためにやるのではありませんから」

「なら安心だな。今の言葉、忘れないように」

「なんなら文書に残しましょうか?」

「ハッハッハッハ。その必要はないさ。なんでもかんでも文書に残したら大変だろう?」

「そうですね」


 兵站関連について、文書主義は(識字率の問題に目を瞑れば)かなり浸透してきた。

 通信技術は人類軍のそれとかなり勝手が違うものの高速化されているし、輸送用魔像も試験を終えて無事正式に配備が決まった。


 地球の近代軍のような通信と鉄道を駆使した大規模かつ綿密な物資輸送にはまだまだ及ばないしまだ発展途上だけれど、以前の中世的でざっくばらんな兵站は徐々に減ってきている。


「で、新しい輸送隊倉庫はどこになりそうだね?」

「いくつか候補はありますが、どれも魔王城内ではなく魔都郊外になります。かなり大規模な倉庫群となる予定ですから」


 魔王城は、交通の便が良いとは言えない。

 むしろ今までよくここから輸送してたなと感心する。しかし輸送隊員にとってはそうでないようで、


「魔王城内ではないのか。少し出勤が憂鬱になるな。これが相応の負担というわけか」


 ということらしい。

 なるほど、通勤時間が伸びるかもしれないということだ。魔都郊外だから、兵舎や魔都に住む兵達にとっては遠くなるもんね。


「ご迷惑おかけします」

「何、気にする必要はない。これは必要な事だと言うのは私にもわかるし、それに例の輸送用魔像が戦闘用魔像より優先して生産され配備されることが決まって仕事が減ったところなのだ」

「ありがとうございます」


 あとで開発者のレオナに菓子折り送っておこう。コンビニのレジの壁に飾ってある奴とか。


「そうだアキラくん。その次期輸送隊倉庫はどこが候補に挙がっているんだ? 本業の私の意見も聞くべきだと思うぞ?」

「あぁ、これは失念していました。地図はありますか?」


 ウルコ司令官が出した魔都周辺地図に移転予定地の候補場所三ヶ所に○を付けた。


 一ヶ所目は、魔都北の港の近く。

 二ヶ所目は、魔都東の街道沿い。

 三ヶ所目は、魔都南の魔都防衛隊駐屯地近くである。


 広いスペースを確保でき、かつ輸送の効率等の諸条件を考慮してここまで絞った。最初は八ヶ所くらい候補があったのだが。


 ウルコ司令官は地図をしばらく眺めたあと、俺の書いたひとつの○を上から×で排除した。


「魔都防衛隊駐屯地近くはやめた方がいいな」

「その心は?」

「……駐屯地と輸送隊基地を一緒にするのは、敵にとっては格好の餌食だ。纏めて攻撃されれば一緒におじゃんになるからな」

「なるほど。リスク分散ですか」


 そう考えると魔都防衛隊の駐屯地がひとつしかないのも、魔都の防衛体制を考えると問題があるな。

 提言してみようかな。通るとは思えないが……。


「となると北の港か街道沿いですね」

「あぁ、どちらも甲乙つけがたい……。この二ヶ所の間ではダメか?」

「街道がないので、街道を整備するところから始めないとなりません。工期が伸びますよ」

「どうせ物資輸送量はこれからも増大するのだろう? なら構わんだろう」


 いいのかな。予算の関係で……まぁいいか。提案したのは俺じゃないから。


「じゃあウルコ司令官の提案があったと、そう書類に記載しますので」

「…………案外たくましいな」

「責任問題ですから」


 そう言ったら、ウルコ司令官は目を丸くして暫く動かなかった。

 いやいや、誰が決断を下したのか、責任の所在を明らかにするのは大事な事ですよ?

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