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兵站局の日常

 新入りが増えたと言うこともあり、事務処理は多少軽減された。

 優秀な事務経験者を採用した甲斐があったと言うものである。


「局長、情報局から資金を融通してほしいと連絡がありましたよー」

「またですか。情報に金をかけるのは別にいいんですけれど、ちょっと多すぎますね」

「そうねぇ。戦費調達に関しては臨時軍事予算が組まれているからある程度は工面できるけどぉ、さすがに湯水の如くというわけにもいきませんものねぇ……」


 長身エルフのエリさんは、お姉さんっぽい口調がそのまま性格に現れている人だが、事務処理能力は高い。


 若干ソフィアさんと能力がだぶっているなとも思ったが、しかし仕事をしているうちに違いもわかってきた。

 エリさんは計算が得意で些細なミスも見逃さないような人で、予算や経理を主に担当させればほぼ間違いはない。


「ソフィアさん」

「なんでしょうか、アキラ様」

「情報局の会計に関してなんですけど……」


 一方ソフィアさんは、計算に関してはエリさんに一歩譲る者の、それ以外に関することは能力が高い。


 殊、軍内部の情報はその手の専門家には負けるけれどかなり詳しい。


 総合性能のソフィアさん、計算特化のエリさんと言ったところだ。

 ソフィアさんが受け持っている仕事の内、経理はエリさんに割り振って彼女に楽させてあげよう。ちょっと働き過ぎだし。


「情報局と言えども戦線向こうへの工作員を送り込むことは難易度が高く、あまり活発に行われていませんね。幻影魔術も効果時間が短いですからすぐに魔族だとばれてしまいます。やってないわけではありませんが、かなり小規模です」

「え、だとすると何に予算使ってるんですか?」

「捕虜に対する尋問や、開発局と連携して敵の武器の調査とかですかね」

「尋問って……拷問?」

「解釈の違いです」

「アッハイ」


 そう言えば情報局への視察というのはやってなかったな。

 同じ後方支援仲間でもあるし、後日見にいこうかな。ヤバい事しかしてなさそうだし。


 と、考えたところでノックもなしにドアが勢いよく開け放たれ、そこから勢いのある少女の大きな声が部屋に響いた。


「局長さーん、たっだいまー!!」

「ユリエさん、お帰りなさい。首尾はどうですか?」

「ばっちりっす!」


 グッとサムズアップする彼女の姿はどう見ても22歳には見えない。


 相変わらず元気だなー。元気すぎてソフィアさんが若干機嫌が悪くなってる。

 背の小さなハーフリングのユリエさんは、子供のような見た目をした22歳のオレっ子という属性組み合わせ注意な人な女性である。


 性格は子供の様に快活で行動的だが、他の3人と比べると事務処理はあまり得意ではない。

 なので彼女は外に出て方々と交渉したり顔を繋いだりする営業マン、いや営業合法ロリなのである。


「第三倉庫にある余剰物資の放出に関してはガイアレス商会が一番条件良かったぜ。あと不要になった黒血魔石や鈍石の処理はディルディアの魔石ギルドが引き受けてくれるってさ」

「鈍石に使い道なんてあるんですか」


 開発局のマッドであるレオナ曰く、鈍石は魔力を使い切った魔石で事実上は唯の石。現代日本的に言うと産業廃棄物みたいな立ち位置らしいのだが。


「なんかよくわかんないけど、魔力がなくても用途があるとかないとか」

「そんなあやふやな」


 そこはまたレオナに聞いてみるか。もしかしたら放出の形で安く売ることが出来るかもしれない。市価や魔都の商慣習なんかも考慮に入れて検討してみよう。


「とりあえずこれが報告書だぜ」

「ありがとうござい……って、字汚ぇ!」


 筆記体というレベルを超えてヒエログリフと化している。考古学者の採用も視野に入れるべきだろうか。


「読めるからいいだろ!?」

「読めるけどもうちょっと何とかしてください。これは受け取りますけれど」


 俺がそう言うと、ユリエさんはぶーぶー不貞腐れながら自分の席について机の上に積まれた書類を消化し始めた。なんだかんだと言って彼女も勤勉である。


 そして最後に、例の淫魔のリイナさんについてだが……。


「リイナさん。書類の整理はどんな感じで――」

「ひぃっ!」

「……えーっと、そんなに私怖いですか?」

「そ、そそ、そんなことはななないですよ!」


 絶対嘘だよねそれ?

 リイナさんはずっとこの調子だ。ソフィアさん、エリさん、ユリエさん、そして陛下と喋るときはもう少し落ち着いているのだけれど、なぜか俺だけに怯える。


 嫌われているのだろうか?

 もしそうなら、淫魔にも嫌われているってことになるわけで割と本気でへこむのだが。


「それでリイナさん、倉庫管理書類についての件なんですけど――」

「す、すみません。書類はここに。あ、えっと、私は資料室に行ってきます! 戦場において魔獣に出くわしたときの対処法を調べなきゃいけませんから!」


 と、おどおどしながら慌ただしく兵站局から去るリイナさん。閉まるドアに尻尾を挟まれるのはご愛嬌。


「ソフィアさん、どうなってるんですか?」

「私に聞かれても困ります」


 ソフィアさんにもわからないことはあるらしい。


ジャンル別日間1位だと……?

ありがとうございます(土下座

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