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倉庫の管理もお仕事です

堅苦しいタイトルを変更してみました。(またコロコロ変わるかもしれませんがご容赦ください)

 魔王城内には三つの兵站倉庫がある。


 一つ目は、わかりやすく輸送隊が占有している倉庫。通称「輸送隊倉庫」。

 二つ目は、何かと独自で動くことの多い魔王親衛隊の倉庫。通称「親衛隊倉庫」。

 三つ目は、親衛隊とは違った意味で独自に動くことの多い情報局の倉庫。通称「情報局倉庫」。


「面倒ですねこれ」

「憲兵隊も自分の倉庫を作りたいと請願しているようですね。流石に場所が確保できていないようですが」

「これ以上作らないよう陛下に提言しましょう。管理が面倒過ぎる」


 今日はソフィアさんと共に魔王城内の倉庫の物資管理体制を確認する。


 一番大きい倉庫である輸送隊倉庫から確認。

 ついでに輸送隊の幹部とも顔合わせしよう。先日の魔像削減会議じゃ輸送隊は参加しなかったし。


 輸送隊倉庫が一番大きいのは、ここにある物資が魔都近郊の魔王軍へ配られる物資の保管庫だからである。

 ただし、魔都防衛隊は独自に倉庫を持っているので除外される……って、やっぱり面倒なことに。


「魔王軍輸送総隊総司令官のウルコだ。よろしく頼むよ、噂の人間くん」

「お初にお目にかかります、ウルコ司令官。私は魔王軍兵站局長の秋津アキラです。本日はよろしくお願いします」


 ウルコ司令官は、司令官と言うだけあって他のオークやゴブリンと違う顔立ちと雰囲気をしていた。


 彼の執務机の上には書物と幾許かの書類があることから、彼は字が読めると思われる。まぁそうでなければ総司令官にはなれないだろうけど。


 ……しかし肌が緑色という点と牙が異様に長いという点を除けば、ただの厳つい人間にしか見えない。それと、人間である俺に対する接し方が他の亜人とは違う。


「…………」


 それになぜか、目をパチクリさせて不思議そうにこちらを見ている。


「私の顔に何か?」

「……あぁいや。その、なんだ。驚いていたのだよ」

「何をです?」

「オークである私に対して普通に接している奴を魔王陛下以外で久々に見たからだ」


 え、他の亜人ってオークだからって差別的な目で見て……そうだなぁ。

 あの会議の事を思うと普通にそう思ってそうだわ。この「ガミロンの緑虫野郎!」って感じで。


「つまらない話をした。確か、倉庫の確認だったな。自由に見ていくといいだろう。副官を一人つけよう」


 なるほど、魔王軍だからと言って全員が悪い奴ではないようだ。




 輸送隊倉庫の中は……かなりゴチャゴチャしていた。

 どうも、管理が行き届いていないようである。


「北の港から荷揚げされてここまで運んできたものを、そのまま積んでいると言うのが現状のようですね」


 ソフィアさんが、作業中のゴブリンたちの姿を見ながらそう答えてくれた。


 彼らは木箱の中身を把握しないまま開いている場所に木箱を置き、そして実際に前線に運び出す時は一々木箱の中身を確認して必要なものなのかを見てから運んでいるのだ。


 故に、食糧と魔石とその他消耗品がゴチャゴチャに纏め置かれ、そして新しいものを手前に置いて手前にある物から運び出されるという状況に陥っている。


 極めつけに魔石は識別が難しい。


 たぶんそう言う風に至ったのは識字率の問題もあるだろう。

 箱に何が入っているのかを紙やら箱やらに書いても、作業をするゴブリン達にはそれが読めない。故に、こんな適当な置き方しかできない。


「これ、もしかしたら奥には保管期限が切れた骨董品が埋まってるんじゃ」

「まさか……」


 ソフィアさんはそんなはずがないとでも言いたげに倉庫を見て、そして鼻で少し倉庫の臭いを確認して……一瞬で考えを改めたらしく、


「そうかもしれませんね」


 と、若干顔を引き攣らせて答えた。


 無造作に、かつ堆く積まれた木箱の山を見れば誰だってそう思う。

 酒だったら熟成しているかもしれないが小麦だったらカビが生えているかもしれない。


「やはり管理体制の問題か……。こうやって問題起きても前線の活動に影響を及ぼしていないのは魔王軍の物資が潤沢にあるからなのか、それとも強すぎるのか、はたまた弱すぎるのか……」


 なんか全部な気がしてきた。


 副官に聞いてみた所、倉庫の管理責任者は決まっていないようである。

 一応、名目上の管理責任者は輸送総隊ウルコ総司令官がなっているのだが、まさか総司令官自ら倉庫の管理をするほど暇じゃないだろう。


「輸送隊倉庫で早急に解決すべきは管理体制の改善ですね。死蔵は極力排除しないと」

「しかしゴブリンやオークたちにどうやってそれを……」

「うーん、やっぱりそれは兵たちに教育を施して全体の質を上げることを長期目標にするとして……問題は応急処置か」


 文字が読めない人に対する対策……確か地球でもなんかあったな。ゲームのUIから大型旅客機や戦闘機のコックピットまで、文字以外の効果で情報を伝える手段。


 つまり視覚だ。文字が読めないのなら目で判断すればいい。


「ソフィアさん、顔料とか絵具とかって安価に手に入ります?」

「青色とかでなければ容易に手に入りますよ?」

「こっちの世界でも青色は貴重なんですね。じゃあ赤・黄・緑・黒・白で色分けしますかね」


 木箱の中身によって色を分けて塗る、あるいはバッテンでもマルでもいいから模様を描く。

 単純な方法だが効果的だろう。そしてそれぞれの色が何を表しているのかは、倉庫の壁だか扉だかにイラストで表示すればいい。

 あとは保管期限とかそういうのがわかるようにしたいが、文字や数字がわからないだろうから対策は「新しいものは奥におけ」と口を酸っぱくして言うしかない。


 今奥にある骨董品は……まぁその、なんだ。

 物好きな奴にやらせよう。


「長期的な対策としては兵の教育。そしてやっぱり倉庫の管理を専門とする部局の設置ですね。そのあたりの概案をウルコ総司令官と詰めて……」

「その人員はどうするんですか」

「…………今は取り敢えず素案を作成して、そこから必要人員を割り出しましょう。そしてまぁ、その頃には他の部局と折り合いがついていればいいかなぁ……」

「行き当たりばったりですね」

「高度な柔軟性で臨機応変に対処しているんです」


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