最終話 別れと出会い
クッカはシロや残った魔王軍の兵士たちと別れの挨拶をしてから王都を出た。王都の門から外に出ると、崖の下の大地まで長い長い階段が続いている。階段を一気に駆け下りるとムスタが一行の帰りを今か今かと待っていた。
階段からアーロが下りてきたのを見て、ムスタは駆け寄りアーロの戻ってきた事を飛び跳ねて喜んだ。
ムスタはふと何かを探すようにクッカやパルタやキンチャの匂いをクンクンと嗅いだ。
アーロは「ヘルミはまた会いに来るって言ってたぞ」とムスタに説明した。ムスタはそれを肯定的に捉えたようで、短い尻尾をぶんぶんと振って喜びを表現した。
帰りもムスタに乗って帰るのだと思っていたアーロだったが、タイヴァスのとある提案でそれはなくなった。
タイヴァスが魔王軍が使っている転移魔法陣の場所を教えてくれたのだ。
王都を出てすぐの崖を掘った洞窟の中に幾つも光る魔法陣が設置されている。
一行はその中で一番タロに近い魔法陣がどれかを聞き使った。
暗い洞窟から一気に明るい草原へと場所が変わる。
どうやらケト平原まで一気に戻ることができたらしい。
キンチャとはここで別れることとなった。
キンチャは国に帰って、両親や妹に今回の旅の報告をするのだという。
「キンチャ…… キンチャがいなかったら、クッカを助ける事はできなかったと思う。ありがとう」
アーロはキンチャに礼を言って握手する。キンチャは照れくさそうに笑顔で頭を掻いた。
キンチャはパルタとも握手し、最後にクッカとも握手した所で、ガバっとクッカを抱きしめ、クッカの耳元で何かを言った。
アーロはすぐにキンチャとクッカを引離す。キンチャがクッカに何を伝えたのかまではアーロには分からなかった。
「またね、クッカ」
キンチャはニカッと笑ってから走っていった。
アーロは油断も隙もないキンチャを睨みつけたが、クッカは面白かったらしく腹を抱えて笑っていた。
* * *
タロの街に着くと一行は街役場で無事の帰還を報告した。街役場の職員や居合わせた勇者や聖女は拍手喝采でクッカの無事を喜んだ。
探索課の奥からヨクタヤ課長も出てきて、パルタと固い握手を交わす。
話が聞きたいとクッカとアーロとパルタは課長室へと通された。
六年にわたる旅路や魔王軍との出来事をパルタが課長に報告した。
クッカはついでにムスタやタイヴァスを国に連れて帰りたい事を課長に頼んでみた。
課長はすぐに魔導具で国に連絡を取ってくれ、思っていたよりもずっと簡単に許可が降りた。
* * *
タロから本国へ帰るのはカウッパ商会の飛空艇を使うことになった。
海の渦潮も収まっていたので、船で帰ることもできたのだが、アーロが「飛空艇を使う!絶対に使う!」と強く主張したためだ。
飛空艇にはムスタとタイヴァスも乗り込んだ。
飛空艇の乗組員に確認したら、貨物室ではあるが二匹を快く乗せてくれた。なので、クッカとアーロとパルタも貨物室で過ごした。ムスタは生まれて初めての乗り物が怖かったのか、始終アーロにくっついて離れなかった。
本国のサタマ港に着くと知らせを聞いて待っていてくれたのか、エリサ、ヘンリク、ラシット、イェレ、カウッパ会長と勢揃いだ。
クッカは涙を流して喜んでいるエリサと抱き合った。パルタも涙を流してクッカとエリサを二人まとめて抱きしめた。
ヘンリクとラシットもクッカとパルタに駆け寄り、無事の帰還を喜んだ。
アーロはささっとカウッパ会長とイェレに近づき、クッカと結婚することになった事を報告した。カウッパ会長はホクホク顔で祝福してくれ、イェレは少しだけ肩を落としたが最後にはアーロの肩を叩いてお祝いを言ってくれた。
* * *
「あの……ひげパパ……あとエリサさん。実はお願いと言うか、報告がありまして……」
クッカの実家まで帰るとアーロはパルタとエリサに恐る恐る声をかけた——がパルタはすぐに自分の耳を塞いだ。
「嫌だ! 聞きたくない!」
アーロが何を言おうとしているのか、パルタは分かっているようだ。子供の様に駄々をこねて耳を塞いでいる。
すぐにエリサがパルタを一喝してくれたので、アーロとクッカはぐすんぐすんと泣いているパルタと笑顔のエリサと向き直った。
「パパ、私、アーロとけ——」
「皆まで言うな! わがっだがらぁ」
パルタは号泣してしまった。パルタは大泣きで何も言えない状態になってしまったので、代わりにエリサが「二人の結婚を許可する!」と笑顔で代弁した。
* * *
「いてててて」
クッカは家の前の椅子に腰掛けながら、大きくなった自分の腹を撫でた。
腹の中の子はよく動くという程の事はないのだが、たまにぐいっとクッカの腹を内側から押してくる。まるで早く出たいとでも言っているかのようだ。
ワンワン!!
クッカが痛がって腹を擦る様子を見て、いつの間にか我が家に住み着いた子犬のヘルミはクルクルと周って大慌てだ。
クッカの近くの地面で丸くなって日向ぼっこをしていたタイヴァスとムスタも何事かと起き上がる。
ムスタなんか大急ぎで森まで走り、アーロを引っ張って戻ってきた。
「どうした!? 産気づいたか!?」とアーロまで大慌てだ。
「違う違う。赤ちゃんがぐいーんって、お腹を押すから痛いのよ」とクッカ。
アーロはクッカの腹に耳を当てながら、「ママを困らせるな」と腹の中の子に言い聞かせる。
すると腹の子は反発するようにアーロの頬に蹴りをいれた。
「「痛」」
アーロは自分の頬を押さえて、クッカは自分の腹を押さえた。そして二人で顔を見合わせて笑い合った。
「早くまた会えるといいね」
クッカは腹の子に優しくそう話しかけて、自分の腹を撫でた。
おわり
こんにちは! ポムの狼です!
いつも読んでいただきありがとうございます!
本作はですね、昨年カクヨムのGAウェブ小説コンテストに出していたのですが、いまいち順位が上がらなかったので応募を取りやめたお話でございます。
カクヨムでは、昨年のうちに完結して、なろうにはそれをコピペしていただけなのですが、毎日投稿にならなくてすみませんでした(^^ゞ
最近AI小説の話もニュースになっておりますが、このお話はAIを一切使ってません!
書いてた当時は、使い方が分からなかったんだよw
今は、使えるようになったので、最新作とかはアイディアの壁打ちとか誤字チェックに使っています。
また、なろうにもカクヨムで完結済みのものを投稿していこうとは思っておりますが、最新作も読んでみたいよと思われた方がいらっしゃいましたら、下記のURLから、遊びに来てくださいませ(/・ω・)/
▽ポムの狼ーカクヨム
https://kakuyomu.jp/users/kusapom
では、最後になりますが、「幼女聖女」を最後までお読みいただき、ありがとうございました!




