表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と追放された〈戦後処理官〉、英雄たちの失敗を全部押し付けられていただけでした 〜戦争は勝ったのに滅びる国で、俺は“後始末”を任された〜  作者: 風牙シオン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/75

第74話 拡張試験

 対象都市――リューデン。


 かつて暴動が発生し、情報の分断が最も激しかった場所。


「……一番厳しいな」


 クラウスが呟く。


「だから選ばれました」


 アレンは答える。


 山間部とは違う。


 ここでは――


 人と情報が絡み合う。


 ベルク本部。


「拡張試験、開始準備」


 エレナが報告する。


「医療、治安、情報。

 すべてに三層監査を適用」


 カタリーナが資料を確認する。


「影響予測、都市規模対応版」


 項目はさらに増えている。


 交通網。

 人口密度。

 情報拡散速度。

 群集心理。


「……ここまで来ると、もう別物ね」


「はい」


 アレンは頷く。


「“都市そのもの”を対象にする」


 一方。


 エリオットは別の資料を見ている。


「コスト、さらに増大」


 数字は重い。


「持続可能性は?」


「現時点では低い」


 エレナが答える。


 つまり。


 成功しても、維持できる保証はない。


 リューデン。


 市内には、再び機構の職員が入っていた。


 だが、歓迎はされない。


「また来たのか」

「今度は何を壊す」


 冷たい視線。


 アレンは、その中を歩く。


 逃げない。


 避けない。


 中央広場。


 臨時説明会。


 集まった市民の前で、アレンは立つ。


「……今回は、前提を先に説明します」


 ざわめき。


 彼は続ける。


「この制度は、すべてを救いません」


 静まる。


「だが、見落としは減らします」


 短い言葉。


 それ以上は語らない。


 質問が飛ぶ。


「前は失敗しただろ!」

「また同じことになるんじゃないのか!」


 アレンは答える。


「可能性はあります」


 ざわめきが強くなる。


「ですが、前よりは減ります」


 沈黙。


 完全な安心は与えない。


 だが、嘘も言わない。


 カタリーナが小さく呟く。


「……逃げてない」


 その夜。


 試験が始まる。


 医療、治安、情報。


 すべて同時。


 都市全体が、対象になる。


 最初の数時間は、静かだった。


 だが――


「情報拡散、急増」


 エレナの声。


「再編関連の誤解、拡大」


 スクリーンに、歪んだ情報が流れる。


 だが今回は違う。


「説明データ、即時同期」


 同時に、前提と限界が提示される。


 議論が起きる。


 衝突も起きる。


 だが――


 燃え上がらない。


「……止まってる」


 クラウスが言う。


「完全じゃないが」


 アレンは頷く。


「十分です」


 その時、別の報告。


「医療案件、同時発生」


 都市内で三件。


 搬送開始。


 中継。

 分散。


 時間が進む。


 以前なら崩れていた場面。


 だが今回は――


「……全件安定」


 エレナの報告。


 静かな成功。


 誰も喜ばない。


 まだ途中だから。


 だが。


 確実に違う。


 エリオットが、初めて小さく言う。


「……機能している」


 それは認めた。


 だが続ける。


「だが、重い」


「はい」


 アレンは答える。


「だから次は、削ります」


 その一言で、全員の視線が動く。


 戦後処理官は知っている。


 設計は、足すだけでは完成しない。


 削って初めて、形になる。


 そして今。


 その段階に、入ろうとしていた。


(第74話 了)

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ