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不道徳教育のすゝめ  作者: 山内
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チーズ牛丼のすゝめ

 まずは前置きとして申させて頂きますが、皆様の使う「チー牛」という言葉は誹謗中傷の類で御坐いまして、この世界に「チー牛」と形容されて喜ぶ人間は居ないと断言させて頂きます。


 多様性が認められつつある現代でも、チー牛と呼ばれる人種を認めて下さる社会は少ないという現実があり、特に女社会という世界の半分以上を占める界隈では、チー牛諸君は全くもって受け入れられておりません。


 現実の世界でもネットの世界でも、皆様は「チー牛」という言葉を面白がって使っておりますが、まずはそれを誹謗中傷の類だと自覚すべきでありましょう。世間様は他人をチー牛と言って馬鹿にして笑っておられますが、チー牛も一人の人間で御座いますので、貴方様が見る事の出来ない心という物を持ち合わせております。世間様は馬鹿にしたくなるような容姿を見る前に、馬鹿にしてはいけない繊細な心を見通して頂きたい。チー牛を笑うのはチー牛以外の人間で御座いまして、チー牛自身は全く笑っていないといい加減気付いて頂きたい。チー牛を馬鹿にして笑ってもいいという風潮は、現代の思想に迎合出来ていないと言わざるを得ませんし、未だに蔓延る悪しきルッキズムを肯定する思慮浅い大多数の輩を見る度に、人間の根幹が如何に醜くて浅はかなのかと絶望してしまうのも無理からぬ話であります。チー牛という侮蔑表現を利用して他人を笑う輩に啓蒙させて頂きますが、不細工なのは人を馬鹿にしている貴方様なので御座います。鏡では見えない箇所を見て、是非とも己の醜さと向き合って頂きたい。



 何故、私がここまでチー牛に肩入れするのかと申しますと、私自信が件のチー牛と形容される人間だからで御座います。言い得て妙なのが誠に腹立たしい限りで御座いますが、この世界には「チー牛」とカテゴライズされるべき人間は確かに存在しており、自他共に認めざるを得ない程に私もその一人であります。そして何の因果か、私がすき家で一番よく好んで食べていた(過去形)のも、三種のチーズ牛丼であるという偶然。私は生まれながらにして生粋のチー牛で御座います。


 二次性徴の頃から掛け始めた眼鏡の奥は、穢れを知らないような子供じみた一重瞼の目があり、整えた事が一度もない眉は毛虫のように太く、日頃から口呼吸をしているせいで半開きになった口は、魚を彷彿とさせるように前へ突き出ている。黒子こそ存在しないが髪型から服装まで、全て私の特徴と一致している。いっその事、著作権やら何やらを申請したいくらいであります。私は法律に関しても無知で御座いますが、何処かしらで何かしらの相談が出来るのではないかと真剣に悩んでおります。自分の似顔絵を悪用されているのでありますから、この法治国家である日本で許される訳が御座いません。


 正直に申しますと、私も初めてチー牛のイラストを見た時は吹き出してしまいました。外見の特徴だけでなく内面までも上手く捉えている作品で、なかなか素晴らしいと関心も致しましたが、段々と件のイラストが世に出て大衆の目に留まり、愚かな私とて笑い事では済まない事態なのだと気付かされました。足繁く通っていたすき家には近付くだけで笑われ、好物だったチーズ牛丼を食べる事も憚られる始末。チー牛、チー牛、チー牛と周りから笑われ、この先もチー牛として後ろ指を差されながら生きていくしか無いのであります。私はチー牛という形に嵌められる事を甘んじて受け入れなければならない。何故なら、私には言い返せないからであります。私は外見も内面もチー牛であります。チー牛がチー牛ではないと訴えた所で、それは所詮チー牛でしかないと自覚しております。であるからしまして、私はチー牛という概念に抗うつもりは御座いません。


 とは言え私が何もしないという訳ではなく、突き出た口元で黙って指を咥えているつもりなど毛頭御座いません。この度、私はチー牛の人権確立と差別や偏見を覆す活動に尽力する事に致しました。


 チー牛と呼ばれる人種は決してマイノリティでは御座いません。学校で言えば1クラスに1人は存在するでありましょうし、電車に乗れば1車両に1人くらい居るものであります。言うならば私の同士達は各地で不当な扱いを受けており、心中を察すると胸が酷く痛みます。私はそういった迫害されているチー牛を庇護し、1人でも多くのチー牛を擁護する所存であります。まずはチー牛被害等支援事業団体を設立し、国から認可をもらって公金を受け取る所から着手しようかと思いますので、力を貸して下さる方は私に御一報下さい。


 チー牛が何をしたというのでありますか?

 チー牛が皆様に迷惑を掛けたでしょうか?

 チー牛と揶揄するのは正しい行いなのですか?

 チー牛だからといって馬鹿にしていいのでしょうか?


 どうか、読者諸賢の皆々様だけはチー牛を迫害しないで頂きたい。そして、チー牛というも概念を作り出した鬼才と、チー牛を笑って馬鹿にしている方達は反省して頂きたい。


 私はKing TiiGuキングチーギュとして、我々チー牛が迫害を受けている事実を白日の元に晒し、ファシスト共に正義の鉄槌を下すと断言いたします。




※チー牛とは何かという説明を省かせて頂きました。それ程までにチー牛という言葉や概念は世に浸透しており、誰もが罪悪感を抱く事なく常用しているのであります。チー牛という言葉は差別用語だと自覚を持って頂きたい。今の時代はデブにデブと言ってはいけませんし、ブスにブスと言うのも駄目なのであります。ゲイにゲイと言うのも、黒人に黒人と言うのも差別なのです。勿論、チー牛にチー牛と言うのもあってはならぬ事で御座います。by チー牛山内



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