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16話 使命を学習したんです

 火を吹くジェット機の主翼!

 富士山の上空で、光り輝く雲にまぎれて飛ぶKJ001号!



「爆発性物質の存在を確認完了。安全対策のため全方位に衝立(バリケード)を展開。爆破まで残り21時間30分、速やかに内部に侵入、粒子加速器を破壊、撤去しますロボ」



 うわああああ、超カッコイイ!!

 ハリウッド映画のヒーローみたいじゃないですか!

 割烹着のヒーロー! 斬新! 語尾がなくても立派なキャラ立ち!!


 Dr.ヒラガもそう思いませ──



「な、なんということを……!! 私の地球爆破計画を邪魔しようとしているだと!? ちくしょう、許さん!!」



 あ、このひとは悪者だ。



 ***



 中継しているテレビ局も、彼女がテロリストのロボではなく地球を救おうとしている正義の味方だとわかってきたみたいですよ。

 コメンテーターやテロップで流れる一般人の声も、一丸となってKJ001号を応援してるのです!



『急遽スタジオに呼んだ専門家によると、少しの刺激で大爆発が起こる可能性があるため、慎重な撤去作業が要されるそうです! がんばれ! 謎の割烹着ウーマン!』



 うわぁ、呼び名ダサッ!

 しかたないですかね、遠目でわかる特徴といえば金髪か割烹着ですし……。


 これ、海外でも中継動画が拡散されてて話題になっているそうです。『KAPPOGI』なんて日本語が流行ったらどうしましょう。

 


「くそ~、がんばれ私の粒子加速器! 私の破壊兵器に負けるな! さよなら地球!!」



 人類が一丸となって正義の味方を応援している中、造った本人がひとりだけアンチに回ってます。

 怪しい研究所で悪だくみするマッドな博士じゃないんだから。いや、怪しいお屋敷で悪だくみするマッドな博士で合ってました。


 もう映像で見てもなにがどうなってるのかボクにはさっぱりわかりませんが、KJ001号はちゃんとやってるみたいです。

 シールドで外に漏れないように防御しながら、内部で何回もわけて爆発させ処理してるようですね。派手な光と音がずっとチカチカしています。


「ぐぬぬぬ、抵抗できない相手になんて卑怯な……! あっちの装置にも自動で逃げられるくらいのAIを搭載しておくべきだったか」

「少しの刺激で爆発するってテレビで言ってましたよ。動き回れたら危ないじゃないですか」

「では、富士山ごと地球から切り離して飛ばすのはどうだ? ワクワクしないか?」

「富士山を勝手に着脱式にしたら、静岡県民と山梨県民に怒られます!」

「ふふふ、どちらかの県に移動させて民同士を争わせてやろうか……!」

「なんで!?」



 そして──


 ドクターの悪だくみは見事失敗に終わったのでした。

 富士山内部に仕掛けられた悪の爆破装置は完全に撤去されました。

 地球と人類の……いえ、KJ001号の勝利です!!

 やったぜ、謎のKAPPOGIウーマン!


 テレビやネットでは拍手喝采、ほんとうにヒーローみたいな盛り上がりです。

 まあどちらもドクターの発明品なので、ある意味自作自演なんですけど!


 盛り上がりに水を差すのも野暮というもの。

 というか叱られたら嫌なので黙っておきましょう。

 


 外に干したお洗濯物がちょうど乾いた頃、KJ001号が満身創痍のターミネーターみたいな姿で帰ってきました。

 早速ドクターが突っかかりに走ります。


「お前、なんてことをしてくれたんだ!! 私の発明品の分際で、私の破壊行為を邪魔するとは何事だ!! 何故あんな愚行に及んだのか、言い分があるなら聞くだけ聞いてやろう!!」


 ボロボロになった彼女は、一瞬きょとんとして言いました。


「わたくしに備わった機能は『絶対防衛システム』です。富士山が大爆発すれば、この屋敷にまで危害が及びます。最高管理者であるDr.ヒラガの安全を守るため、その身に降りかかる脅威を排除(掃除)いたしました……ロボ」


 降りかかる……? 自作自演なのに……?

 まあいいや、お話を続けてどうぞ。


「ぐっ……。防御の対象はお前自身、つまり本体のみだったはずだ。私を守れとインプットした覚えはないが……。だいたい、毎回邪魔をされたら破壊行為に差し支えるではないか!」


 あっ、ドクターが責めるに責められない心理状態になってます。


 ここ!

 KJ001号、ここで必殺技の魅惑の術(テンプテーション)を!



「初期状態には存在しません。新たな使命として、学習したんです。あなたの搭載してくれた学習システムで」



 そう言って、彼女はにこっと笑いました。

 最後に、お願いを言い残して……。



「夕方以降の降水確率は40%。お願いします、わたくしのかわりに……洗濯物の取り込みを……」

「KJ001号!!」



 プシューと音を立てながら、彼女はそのまま地面に倒れてしまいました。

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