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第9話 よーし皆! 今日はメガネっ娘ヒロイン追加するぞ!!

 新たにブクマや評価してくださった方が。その上、感想を頂きました。ありがとうございます。実際に読んでくれた人が存在するというのは大変励みになります。

「うがぁ!」

 何やら星の白銀への加入を望んでいるらしい女性がアッシュの元カノであると紹介され、リーアは凶暴なモンスターと化した。

 虎の毛皮をかぶり、太く尖った牙を両手に突き上げての咆哮は、周囲の冒険者に噂の牙虎の恐ろしさとはかくやと想像させた。


「アッシュ、この子は?」

 だが、そんなリーアの敵視の姿勢を平然と流す神官セレス。

「俺に冒険者のイロハを教えてくれた人の妹だ。後を任されてるんだ」


「そうだよ……兄貴が幻のエルドラド探すって言って旅立っちゃたのはいいけどさ、アッシュに妹を頼むって言い残してったのはいいけどさ、アッシュってば保護者モードになっちゃってるじゃん! 頼むってのは、普通娶って幸せにしろって意味じゃん!」


「あなた相変わらず女の子誑かしてるの」

「なんですかね、それ。昔から知ってますアピールですか、っていうか元カノってどういうこと! 詳しく!」


「うーん、昔から知ってるもなにも幼馴染だから。アッシュの実家のシンジョウ家と私のセルモンティ家は、昔から付き合いがあってそれで子供の頃から会ってたの」

 セルモンティ家。あまり人族(ヒューム)の身分家格には関心を持たないリーアであったが、その名前は薄っすら聞き覚えがあった。頭の奥から記憶を探り出しているとフィルマが補足をしてくれる。


「セルモンティ伯爵家。アッシュはんの実家シンジョウ家のお隣が領地やね。王国最古参の歴史があって、領内からは金属資源ざくざくでイケイケの家やね。そんでウチら王都の学院で同期やったいうわけや。ちなみに修行の旅ゆうて放浪生活送ってたヴァルドはんともその頃に出会ったんや」

「いや、オレを巻き込むな」

 ヴァルドが席で小さくなって黒茶の残りをちびちびと啜る。


「なんだ、安心した。子供の頃仲良かったってだけの関係ね。そんな名家のお嬢様なら家を追い出された不良息子のアッシュとは今回ご縁がなかったようだよ」


「リーアちゃんかて、世界樹お守りするリンドルース族の出なんやろ。なら実質王族みたいなもんやろ」

「ふふん、聖地を離れちゃえばそういう小難しいこととはおさらばだよ」


「私も伯爵家なんて言っても末子で、それに学院時代に王族と問題起こしちゃったから、似たようなものなんだけどね。それで貴族界からはじかれて教会に入れられた訳だし」


 王族とのトラブル。「あれ、さっき聞いたような」とリーアがアッシュを見ると、何やら微妙な顔をしている。やはりフィルマが代わりに答えた。


「王族の一人がセレスを見初めて、強引にモノにしようとアコギな手を使いおってな。それをアッシュはんとヴァルドはんが力づくで潰したんよ。そんで二人はこの辺境地に逃げるハメになったんやけど」


「そ……そんなステキなイベントが……ず、ずるい!」

「リーアちゃんも、アッシュはんが世界樹(もう)でしたときに出会った聞いてるで。心通わせるなにかあって、共に出てきたんやろ?」

「前から外の世界に出たかったから、アッシュと兄貴のために結界開いた今しかないなって、衝動的に……」

「軽っ、とんだ不良娘やないの」


 学院時代のアッシュが身を挺してセレスを守った。そう聞いてリーアが二人を悔しげに睨むが、アッシュの方は憮然としている。

「別にあの王族のバカが気に入らなかっただけだ。お前のためじゃねえよ」


「あら、つれないわね。あの頃はあんなに情熱的に愛を囁いてくれていたのに」


 神官セレスは懐から古ぼけた封筒を取り出す。

「これ、むかーし、子供の頃に送ってくれた詩」

「詩……愛の詩……私そんなのもらってない……」

「お、おいそんなガキの頃の詩を持ってるのかよ」


 椅子から落ちそうなほどに慌てるアッシュを、セレスが楽しそうに見下ろし封筒から中身を取り出す。

「おい、やめろよ」

「ふふっ、この冒頭のシクラメンに例えてくれた所なんて照れちゃうわね」

 開いた紙を読み上げようとするセレス。


「やめろよう、やめろよう。そんなまだ何の技巧も凝らしていない、精々韻を踏むくらいしかできていない、ただ口当たりのいい言葉を並べただけの稚拙な詩。そう、技に溺れるのではなく、想いを言葉という形に表すことへの喜びに満ちた詩。まさに今俺が帰るべき原点。それを朗読しようなんてやめろよう!」


「そ、そうね止めとくわ」

 いそいそと紙をしまうセレス。あれっという表情のアッシュ。「や、やめろよう……」


 一方、セレスがアッシュから詩を贈られていたと知ってショックに固まっていたリーアがようやく言葉を絞り出す。

「私だって、私だって、アッシュの詠う英雄叙事詩イロハス最後まで聞いたもの…………頑張った……頑張ったもの……全部耐えられたのは私だけだもの……」


「ああ……あれを……うん、すごい頑張ったのね」

 セレスだけでなく、フィルマもヴァルドもその苦行を果たした涙目の少女に憐憫の目を向けた。


「えっと、セレス。そもそもお前ウチの新メンバーの応募に来たのか? でもお前はミリアム教に入ったならわざわざ冒険者になる必要はないだろ?」


 ミリアム教の神官教育を受けた者が冒険者になる例は少ない。それはミリアム教が排他的であるとか俗世と距離を置いているというわけではない。むしろ教義において救世と祓魔を使命として掲げているため、人々を苦しめるモンスターや災害への対策には積極的に乗り出している。

 冒険者と活動内容は重なっているのだ。それこそアンデッドが大量発生した時などは、ギルドから直接ミリアム教へ依頼がいくこともある。


 だがそれだけの実行力があるだけに、実働部隊を抱える組織であるがゆえに、わざわざそこを離れて個人として冒険者登録するものはいないのだ。


 組織と折り合いが悪くなり、ミリアム教会から離れて冒険者になった者はいる。だがこのセレスは正式な神官服に身を包んでいる。

 教会に籍を置いたままなのは明らかなのだが、

「うーん、ちょっと教会の暮らしが息苦しくって。気分転換に」

 軽い調子でそう言うのであった。


「はあ?」

「教会がそんなの認めねえだろ」

「あら、ちゃんと教会からの許しは出てるわよ」

 セレスが目線をギルドの受付カウンターへ送る。皆はギルドマスターが正式にセレアの冒険者登録を指示していたことを思い出した。


「いや、待て。そもそもお前の教会入りは俺から離すって意味もあったはずだろ」

 そうでもせんと王族のかっこもつかんからね、とフィルマが言う。


「あー、その辺ね。大丈夫よ、お父様にも許可はとってるから」


 一連の流れにリーアが声を上げる。

「私は反対だよ! ミリアム教の神官は結婚OKだからね、そんな危険な女の人をアッシュに近寄らさせないよ!」

「大丈夫よ、リーアちゃん。ほんの数ヶ月のことだから」


「んっ、期間限定なのか?」

「ええ、教会の方でちょっとしたお役目があって、その準備ができるまで加入させて欲しいの。悪い話じゃないと思うわよ。フィルマから聞いたけど、今の星の白銀ってヒーラーがいないんでしょ。私は治癒魔法はもちろん高位の神聖魔法、それにある程度は元素魔法も使えるんだから。次のヒーラーが見つかるまでのつなぎと思えばちょっとしたものでしょ」


「そりゃすげえな」とヴァルドが感心し、アッシュも「それなら」と前向きになる。

 その流れにリーアが慌ててアッシュのカバンを漁り、一枚の紙を取り出す。それは先にアッシュがギルドの受付嬢に提出した新メンバーに望む条件の一覧であった。


 紙を突きつけられ、一瞥したセレスが困惑する。

「異世界人? タナカ? 何これ?」

「ふふん。これはね、今回ウチのパーティーで募集している条件なんだよ。PTが稼げないとダメなの。星の白銀に入りたいならまずは星船でも見つけてきてよね」


「んっ、待てよ」

 アッシュは紙をリーアから回収し、眺めていたかと思うと、立ち上がって言った。

「いや。そうだな。セレスなら高PTの条件を満たしてる。歓迎するぜ」

「アッシュ、なんで! こんな変な条件満たせる人いないよ!」

 

「そのメガネ、昔俺が贈ったやつだよな。まだつけてたのか」

「ええ、これもべっ甲細工だから次第に顔の形にフィットしてくるじゃない。今更合わない他のには変えられないわよ」

 そう言ってどう、とばかりにメガネを指で押し上げる仕草。


 その横でリーアが悲鳴をあげる。「高そうなのプレゼントされてるー!」そのままフィルマに自分がもらうはずのイヤリングとメガネのどちらが高額かを問い詰め、答えを聞いてまたも悲鳴をあげる。


 アッシュが一歩踏み出し、セレスに顔を近づける。

「ああ、昔の俺はお前の本当の魅力に気づいていなかった」

「えっ、ちょっと、何よ?」

「今の俺なら分かる。お前の本当の魅力に。そう、お前は劣位眼の持ち主なんだ!」


「はあ?」「ふぇ?」「なんやの?」

「劣位……眼?」

 アッシュの口から飛び出した謎の言葉に皆が困惑。


「ああ、酒場で耳にした高PTの秘訣、劣位眼。最初に聞いた時は意味が分からなかったが、今理解したぜ。


 そう、本当にできる冒険者ってのは、一見するとマイナスに見えて、だが実際にはすごい威力を秘めた能力ってのをもっているんだ。お前の持つ劣位眼のようにな。


 眼が悪いというマイナス。だがメガネという贈り物(ギフト)を装備することで、視力の向上と知性と魅力がアップする。これが劣位眼の正体なんだ!」


「ちょ、あなた少し見ない間にさっぱり言ってること分かんなくなったわよ……」

「よく来てくれたぜセレス! 一緒にPTを上げて石碑に名を刻もうぜ!」

「えっ……あっ……うん。まあいいわ。よろしく頼むわね」


「おお、これで商談成立やね。セレスのここまでの支度金はアッシュはんからもらう500万マトルに含まれてるさかい、無駄にならんでよかったわあ」

 フィルマはそう言ってポンポンと両手を叩く。


 リーアは突然のアッシュの浮かれようと、その横でなんとも言い難い表情のセレスを見て言うのであった。

「あの顔は分かるよ。あれはね、何いってんだコイツっていう呆れと怒り。でも表面上嬉しい言葉だからついニヤけちゃう。そういうのがごたまぜになった、そういう顔だよ! ちょろいよ! ちょろすぎなんだよあの人!」


「ああ、オレも三日に一回くらい目にしてるわ」


 かくして『星の白銀』(シルバー・スター)に高PT属性を備えた新メンバーが加入した。


※セレスのメガネ:鷹亀の甲羅を加工して出来たメガネ。魅力値+100、知性+80の効果。

※処女作「バイト先は異世界転生斡旋業」では主人公チームの女性陣3名全員がメガネをかけるかアクセサリとして所有しています。角型黒縁タイプと縁無し楕円タイプとセカの3Dグラスとバラエティ豊かに揃えました。よろしくお願いします。

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