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堅実勇者  作者: 髭付きだるま
第2章 行商人見習い
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第19話 アイテムボックス

この世界に住む人間は15歳の誕生日を迎えると神からアイテムボックスを授けられる。

そしてこの時点を持って子供を卒業し、成人として扱われることになる。


自分の体に常に追随し、様々な物を出し入れすることが出来るアイテムボックスはこの世界の人間にとって当たり前の物として取り扱われてきた。


しかし殆どの人達はアイテムボックスを有効活用しているとは言い難いのだった。



「さて2人共、アイテムボックスについて知っていることを挙げてみなさい」


ギイのこれまでと同じようなやり取りにも慣れてきたケンとハナは次々と知っていることを並べていく。



・15歳の誕生日に神から与えられる能力である

・常に自らに追随する亜空間とでもいうもので他人は干渉出来ない

・死んだら中の品物は死体の周りに出現する

・生き物は入れられない。

・いつでも出し入れ自由

・数は7つまで

・大きさには再現が無いとされる

・中に入っている限り、外からの影響は受けない(壊れないし日焼けもしない)

・時間の流れはあるので、中の物が腐ることもあるが匂いは漏れてこない



「なるほど大体は分かっているようだな。ちなみにこれから行商人としてやっていく訳だが、アイテムボックスに何を入れる予定かな?」


「そうですね、やっぱ壊れやすい物ですかね、お酒とか」


「私は貴金属ですね。アイテムボックスに入れておけば盗難の心配はありませんから」


ケンは物資の運搬時のリスクを、ハナは盗難時のリスクを考えた末に発言した。確かにそれも一つの答えだろう。しかし行商人としてキャリアを積んできたギイからすればまだ「甘い」と言わざるをえない。


「ではヘイ、お前のアイテムボックスに入っている物を出して見せてやれ」


「了解っす師匠」


そうしてヘイのアイテムボックスから出てきた物は以下の7つだった。


・大きなパン

・水瓶に入った水

・槍

・白金貨1枚

・高価な首飾り

・薬草の本

・逆茂木


「さてヘイがどうしてこの7つを選んだのか分かるかな?」


「硬貨と首飾りは理解できますね。私の考えた通り盗難防止ですよね」


「槍と逆茂木はイザという時に戦えるようにですよね」


「でも残りの3つは・・・」


「何だろう?パンと水と本?」



2人は頭を捻っているが答えには辿り着けない。まぁそうだろう。これは実際にその場面に遭遇しないと中々理解出来ない事だろうからだ。


「では説明しよう。私はヘイにアイテムボックスに入れる物を考えさせるあたってある状況を提示した。それは


「もしもお前が行商中に持っている荷物を全て失ったと仮定してアイテムボックスに入れる物を定めよ」


とな。


私は既に30年も行商人として暮らしてきているが、モンスターや山賊に襲われたり、災害に巻き込まれたりして何度か荷物を全て失ってしまった事がある。そうなった場合はまず生き残らなくてはならない。そして生き残った場合は再び商売を始めるための元手を得なければならない。


直接的な被害を生き残るためには武器が必要だ。私はこれを槍と逆茂木で対応してきた。

その後は町まで帰らなくてはならない。しかし荷物が何もないという事は食料も水も無いということだ。だから大きなパンと水瓶に入った水を持っている。


そして人里に入れたならば現金が必要だ。だからイザという時に金に変えられる貴金属と一番高い硬貨を持つようにしてきたという訳だ」



ギイの説明にケンとハナは息を呑んだ。サラリと言ったが行商人が荷物を全て失うということは、ギルドに預けているお金を抜いてほぼ全財産を無くすことに等しい。そこから巻き返してここまでの商会を作り上げた自らの師匠の凄さを2人は改めて実感していた。


「ところでヘイ何故薬草の本が入っているんだ?」


「それなんですがね、今ん所師匠の様に荷物全部無くすことなんて経験はありませんが、イザそうなった時に怪我や毒の知識が必要だと思ったんスよ。師匠や番頭でしたら薬草についても知識があるんでしょうが、俺は未だ勉強中でして、生き残っても町に着くまでに怪我や毒に殺られちゃ目も当てられませんからね。これも生き残るためですよ」


「なるほどな、その選択は確かに有効だ。・・・初めはエロ本を入れていたのになぁ」


「ちょ!勘弁して下さいよ師匠!」



実際に町や村に住んでいてそこから基本的に動かない人達は、アイテムボックスには壊れ物や高価な物や他人に見せたくない物を入れている場合が非常に多い。そして男なら大抵は何かしらのエログッズを入れていたりするのである。暗黙の了解で誰も言わないのだが。


「ちなみにこのアイテムボックスだが余り知られていない制約があってな、大きさについてはお前たちが言ったように制限がないのだが、重さについては「アイテムボックス発動時に自分だけの力で持ち上げる事が出来る物」しか出し入れ出来ないのだ。だから欲張って大きな水瓶に限界ギリギリまで入れたりすると、疲れてヘロヘロになった時にアイテムボックスの中から取り出せないという状況が発生したりすることもある」


ギイはやけに実感の篭った声で言う。どうやら同様の失敗を以前してしまったのだろう。


これに対応するために重要なことは体を鍛える事だ。特に腕力が重要であるため、出来るだけ腕立て伏せ等の訓練をしておくようにケン達は言われた。



「それと袋の中に荷物詰め込んで「1つ扱いで」アイテムボックスに入れようとしても何故か弾かれるから注意しろよ。これも何でかは分からないけど例えば「ボタン」と「布」だと一つずつだけど「服」にすると一つで済むんだ。」


「はるか昔にはアイテムボックスに入れられる袋が存在したという話もあるが今では伝説だ。神に使わされし勇者でも賢者でも無い我々は大人しく7つの枠を有効活用するための知恵を絞るしかないのだよ」


弟子達はせっかくの師の教えを無駄にしないように心に刻んだのだった。



「さてそろそろ昼食の時間だ。食べ終わったなら次は我がギイ商会が誇る逆茂木について説明していこうか」

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