第五章 決断 (1)
ジュンと瞳の仲睦まじい姿を見た奈緒は、ショックを隠せなかった。ジュンは自分の夫になってくれると信じて頂けにショックだった。
第五章 決断
(1)
家に着くと言葉もないままに玄関に上がり、母親の声を無視して二階にある自分の部屋に上がった。
体を自分の腕で巻き込む様に抑えながら、何も頭の中が考えられなかった。私以外に女性がいるなんてない。この前、家に来てお母さんに挨拶してくれた。今度ジュンの家にも挨拶行くことになっている。ジュンは、私の旦那様になってくれるはず・・一瞬、頭の中が止まった。
結婚の約束なんてしていない。赤ちゃん出来た時だって、結婚出来ないと言って堕胎させた。でもずっとそばに居てくれるって言っていた。
自分自身が、今どういう立場にいるか、不安が心の中を暴風の様に駆け巡った。何も分からないままに、いつの間に上がって来たのか、母親がドアをノックして
「奈緒子、御飯よ」
その言葉に時計を見るともう六時を過ぎていた。家に帰ってから一時間以上が経っていた。
劇場を出た後、飲食物を販売するカウンタのそばまで来ると瞳はジュンの顔を見て、
「ジュン、ちょっとトイレに行って来る」
「うん、ここで待っている」
瞳の後姿を見ているとポケットに入れてあったスマホがいきなり震えた。
なんだろうと思ってスマホを見ると奈緒と映っていた。瞳がトイレに行っている間と思ってメールの内容を見た。
<ジュン、どこにいるの>
一瞬、言葉の意味を深く感じたジュンは、奈緒。と思うと、もしかしたらと言う言葉が浮かんだ。でも、まさかその言葉が浮かんだ時、瞳が笑顔で自分の側に寄って来た。
「夕飯どこにしようか」
既に、夕食も一緒と瞳のお母さんには瞳が了解を取っている。取らないで帰る訳には行かなかった。嬉しそうな顔をして瞳が、
「どこに行く。ジュンの好きなところがいいな」
もう、自分で行きたいとこないのかよ。と思うと
「たまには、瞳の行きたいところでいいよ」
少し黙った後、
「ううん、やっぱりジュンの好きなところがいい」
こりゃ、奈緒以上だ。奈緒は、勝手に決めるけど、そういう意味では反対だな・・。
「何考えているの」
「いや、何も」
「えっそんな事ない。今、何か考えていた」
「これから行くレストランの事」
「本当、まあいいわ。信じてあげる」
嬉しそうな顔をしながらジュンの左手を掴むと
「行こう」
と言った。瞳は、家に挨拶に来てくれた事で、一段とジュンとの心の距離が近くなったと思っている。それだけに彼が側にいると安心感を覚えた。
映画館が入っているビルを出ると
「こっち」
と言って、左手にある信号を渡った。
ここの通り、いやだな。ジュンと歩く通りの左手に階段が有った。その向こうにピンクや黄色のネオンが輝いている。急に足を早める瞳に
「えっ、どうしたの」
「なんでもない。早く行こう」
行く場所知らないのに。そう思いながら左手をチラリと見ると、あっそうか。そう言う事。瞳の態度が理解出来たジュンは。
「分かった。早く行こう」
と言って、足を早めた。
その通りを出ると右に曲がり一〇メートルも行かないところに地下に通じる階段が有った。
「ここ」
そう言って、隣に立つ女性の顔を見ると、そのまま階段を降りた。赤いドアを開けて中に入るとイタリアンな雰囲気が思い切り出ていた。
「素敵なお店ね」
「うん、まあスパゲティ屋さんの中では良い方と思う」
東急本店通りの地下一階にあるお店を選んだ。映画館が入っているビルの地下にもお店が有ったが、奈緒と一緒に行った所は、抵抗が心の中に有った。
「それに、結構美味しい」
「味はいいよ。ここは」
白ワインを右手に持ちながら、瞳の可愛い顔を見ていると、何となく、むくむくとするものが有った。ここに来る間に通った通りがそうさせたのかもしれない。
「ジュン、この白ワインも美味しいね」
「うん」
瞳の口元から出る言葉とムスカデシェルリィの美味しい白ワインを飲んでいると、何気なく目線が、瞳の目元から口元にそして喉元に行った。透明感のある綺麗な肌をしている。
今日は胸元が開いている洋服を着ている。自然とそのまま目線が降りて行った。ゆっくりと視線を降ろすと透明感のある肌が、胸の中央で少しだけスリットしている。その後は、ふくよかに洋服に包まれて緩やかに盛り上がる。少しだけ見ていた。
「ふふっ。ジュン、どこ見ているの」
相手の視線の先が分かっているが故の言葉に
「えっ、いや」
言葉がつながらない目の前に座る男に、ちょっとだけ同情すると話を変える様に
「明後日から一週間ずっと一緒ね。上手くしないとね」
「大丈夫だよ。あの二人。仕事の時以外は、自分達のことでいっぱいだから」
「うーん、でも気を付けないと」
「まあ、あの二人は、気にしないんじゃないかな」
「どうして」
「特に理由ないけど、二人の関係がばれても、口にするような人たちじゃあないし」
「分からないわよ。どこかで飲んでいる時、ポロっと口が滑るかも」
「それはあるな」
「でも、気を付けると言っても、普通にしていれば大丈夫だろ」
「それ、その普通という態度が難しいのよ。自然と出てしまうみたいだし」
「じゃあ、二人がどこかに行ったら、僕たちも別々に行動すれば分からない」
少し、意地悪な言い方すると
「ジュンは、本当にそれ望んでいるの」
怒った顔で言う瞳に言いすぎたなと思うと
「有るわけない」
「じゃあ、何でそんな事言うの」
「ごめん」
下を向いて白ワインを飲みながら視線を外す彼に
「ふふっ、許してあげる」
と言われると、まずい展開だと思いながら、いつの間にか、白ワインが一本開いていた。
「あっ、もうない」
その言葉に瞳がちらっと腕時計を見ると
「七時半か。微妙な時間ね」
「でももう一本なら一時間位で飲めるよ」
「私はもういい。お腹いっぱいだし」
「じゃあ、少し散歩する。この時間ならまだ家に帰ることもないし」
「そうね。そうしましょう」
店員にチェックの態度を取ると、請求書を持って来た。お店の人にカードを渡した後、
「どうしようか」
ジュンはその言葉に、どういう意味だろうと思って顔を見ていると、タイミング悪く店員が、
「ありがとうございます」
と言って、請求書とクレジットの用紙を渡した。仕方なくそれにサインをして精算済ますと目の前に座る女性の顔を見て
「出ようか」
心のつまりを少しだけ含んだジュンの言葉に
「うん」
と言って頷くと瞳も立ち上がった。
階段を上り外に出ると、二人の足は自然と元来た通りに向いた。瞳が強く手を握ってくる。横に並ぶ瞳を見ると下を向いたままだ。少しだけ歩くと
「行かないとだめ」
その言葉に足を止めて無言でいる彼の顔を見上げると
「明日、日曜だよ。明日また会おう。そしたらいいから。今日は帰った方が」
暗に私も同じ気持ち。でも今日は我慢しよ。そんな気持ちが言葉に有った。ジュンは今日、瞳の家に挨拶に行っている。確かに今日遅くなるのはまずいと思うと
「分かった」
そう言って隣にいる彼女を見た。ごめんなさい。という顔が浮かんでいる。言葉が続かないまま、頭の中が乾いた様に
「送るよ」
とつれなく言うと
「えっ、散歩しよう」
まだ、別れたくないという気持ちが現れている言葉につい微笑むと
「そうだね」
と言って、自分の頭の中が、一つの事しか考えていなかった事を思うと少し恥ずかしくなって、にこっと笑って道を返して公園通りに向かった。
「まだ、人が一杯だね」
「まだ八時前だもの」
ジュンの左手をしっかりと握りながら、体が触れるくらいに側を歩いている。ジュンに体を許すのは、まだ恥ずかしさも有ったが、一度許した以上、知らない世界への興味も大きかった。母にも紹介している。
彼にゆだねることは、自然の流れと思っていたが、母の手前、今日は素直に帰る方が良いと瞳は思った。
ふしだらな彼と思われたくなかった。今日、普通に帰れば、次のステップに普通に行ける。そう思っていた。
坂道を歩き、そのまま公園通りをNHKの方向に歩いて行くと、人通りがまばらになって来た。更に歩くと周りには誰もいなくなった。
ジュンは立ち止まると瞳の方を向いた。自分の胸の高鳴りが彼女に聞こえる様な気がした。
彼の望むことが分かった。人がいないとはいえ、少し恥ずかしさもあったが、何も言わずに目を閉じると、ジュンは優しく唇を当てて来た。
はじめゆっくりと唇を吸うようにしていたが、右手を瞳の左胸の下にゆっくりと持って行った。一瞬だけ、ぴくっとしたが、特に抵抗はなかった。
ゆっくりと下から触ると柔らかい中にブラのガードの様なものが有る。少しだけ手のひらを上にあげると固いガードの上に反りあがるように柔らかい部分が有った。優しく触りながら、更に手のひらを上にあげて包む様にすると見た目より大きな胸が手のひらの中に有った。
大きく手のひらを開いて、優しく包む様に胸を揉むと瞳の唇が強く吸い付いてくる。ゆっくりと撫でるようにトップを意識しながら揉んでいると段々、しっかりとトップが固くなって来た。
手のひらに当たる固くなった胸のトップを少しだけ摘まむ様にすると瞳の左手が、自分の右手を抑えた。強く握っている。
仕方なく右手をそのまま背中からお尻に持って行き優しく触ると、柔らかい感触が、有った。唇を話して
「瞳がほしい」
うんうんと頷きながらジュンの顔を見て
「明日ならいい。今日は、我慢して」
自分自身、このまま彼に抱かれたい気持ちだった。でも今日は出来ない。そう思うと強くもう一度ジュンの唇に自分の唇を合わせた。
改札を出て家まで送ると
「明日ね」
「何時」
「九時にハチ公前交番。一緒に朝食食べよ」
「分かった」
玄関に入る姿を見届けると自分の腕時計を見た。まだ、九時少し過ぎたところだ。まあいい時間だなと思うと、瞳が言ったことが正しいと感じた。
奈緒は、夕飯を食べると急いで二階に上がった。母親が娘の姿に心配して声を掛けたが、
「なんでもない」
と言うだけだった。まだ、二四歳。色々あるのだろうと思うとあまり干渉しない方が良いと思った母親は、それ以上言わなかった。
「返事が来ない。何故」
独り言を言いながらスマホの送信メール見ている。その時だった。いきなりスマホが震え、スクリーンに淳と言う文字が映し出された。あっと思って、急いでタップすると
<奈緒、ごめん。昼間のメール受け取れなかった。どうしたの>
と書いてある。急いで返信した。今、スマホを持っていることが分かったからだ。
<どこにいたの。今日のお昼>
<どうしたの。渋谷で明後日から行く仲間と会っていた。仕事の話していた>
そのメールに奈緒は、あの人がシンガポールに一緒に行く人と思うと
<今日、渋谷に行った>
これを送れば意味が分かるだろうと思った。
ジュンは、奈緒のメールの意味を悟った。瞳と一緒に居るところ見られたんだ。どうすれば。心の中で逃げる言葉しか思い浮かばなかった。
少しだけ間が空いた。やっぱり 奈緒は、今言った言葉が当たっていたと思うとたまらず、メールを電話に変えた。ずっと呼出し音がなっている。そのうち、
<ただいま電話に・・・>メッセージが流れたとたんに切った。
やっぱり、ただの同僚じゃないそう思うと涙が出て来た。グッと我慢しても流れ出てくる。
ジュンは、奈緒の電話を意図的に取らないでいた。なぜ奈緒が渋谷に。とにかく電話しないとと思い、スマホにタップした。
奈緒は、手で顔を覆いながら、そのままにしているとベッドの上に置いたスマホが震えた。スマホのディスプレイを見ると淳と表示されている。ジュンからの電話すぐにオンにすると
「奈緒、どうしたの」
「メールが途中で切れた」
「あっ、ごめん。トイレ我慢できなくて」
「えっ、トイレ」
「ごめん」
「ばかあ、心配したんだから」
頭の中が何も考えられないまま、ジュンの声を聞いて心が落ち着くと
「ジュン、誰、あの人」
「あの人って」
奈緒は、明らかに瞳の事を言っている。
「昼間、デパートで一緒だった人」
答えに一瞬戸惑ったが、
「ああ、会社の同僚。他の仲間との打ち合わせに少し時間があるからと付き合わされた」
「えっ、そうなの」
「まさか、何か勘違いしている」
ジュンの言葉に疑いを持ちながらも
「でもその後のメールでなかった」
「だって、レンタルMtgルームって、電波届かないし」
心の中に、うそという言葉が浮かびながら言うと
「えっ、そうなの」
「もう、奈緒、大丈夫」
スマホの向こう聞こえるジュンの言葉に、段々自分が勘違いしているのだと思うと
「でも、心配したんだから。ねえ、明日会えない。少しでもいい。だめとは言われたけど」
奈緒の気持ちが、体に入って来た。
「ごめん、明日も今日のメンバとMtgする。明後日の出張準備ぎりぎりなんだ」
瞳との約束が頭に浮かび、仕方なく言うと
「そう」
寂しそうな声に
「分かった。金曜日空港に着いたら、すぐに奈緒に電話する」
「うん、うん、いいわ。それで許してあげる」
奈緒の言葉に心の呵責を感じながら
「今からお風呂入るから」
「分かった。私もお風呂入る。ふふつ、一緒」
奈緒の言葉にわーっと思うと
「じゃあ、金曜日」
「うん」
そう言って、スマホをオフにした。
良かった。ジュンだもの。心配しただけ損したかな・・。彼の言葉を聞いて急に今までの事が頭から消えると急いで一階に降りて
「お母さん、すぐにお風呂入れる」
「大丈夫ですよ」
奥から聞こえた声に、ふふっ、ジュンと一緒と思う、心が急に軽くなった。
バスルームの脱衣所に行く前に、渋谷に行ったままになっていたワンピースの後のジッパーをゆっくりと降ろした。ドレッサーの前でワンピースの右腕を取って左腕も脱いだ。
そのまま、ワンピースを下に置くと、少しだけ微笑んでワンピースをウォーキングクローゼットの手間にあるハンガーにかけて一階に降りた。
もう両親は自室にいる様だった。バスルームの前の脱衣所でキャミソールを外すと、可愛い薄黄色のブラとパンティが現れた。
ふふっ、ジュンも一緒かな。そう思いながら後ろに手をやり、ブラのホックをはずすと右腕の紐を外し、左腕の紐も外した。体には大きめの胸が現れる。
自分のトップの色が、妊娠する前と明らかに変わっているのが分かる。お母さんに見られたら、ばれるかな。でもジュンが・・答えがはっきりと言えないままにブラを洗いかごに入れてパンティに手を掛けた。
最初、シャワーを手にかけて、暖かくなるのを待つと、ゆっくりと自分の体にかけた。一瞬だけ吉岡の事が頭に浮かんだ。何故と思ったが、すぐに消えさせるとフェイスクリームを手に取った。
顔を洗い、髪の毛を洗うとボディブラシにボディシャンプーを付けた。首の周りを洗った後、腕を洗う。泡だらけになった腕を見ると今度は、お腹にブラシを向けた。
自分が見ても透き通るような肌だった。お腹にブラシを当てると一瞬だけ思うことが有ったが、そのまま洗った。やがて綺麗な形をした胸を下から洗うと一度手を止めてジュンも入っているのかなそう思うと、ふふっと笑って、そのまま洗い続けた。
湯船に入ると形の良い胸が軽く浮いている。ジュンと体を合わせた時、最初に感じるところだ。ちょっとだけ、トップを触ったが、何も感じない。当たり前かと思うと首まで目一杯湯船につかった。
ジュンからの電話に自分が誤解しているだけだったと思った、奈緒は、機嫌を戻しますが。
簡単には進まない、奈緒とジュンの気持ち。でもジュンちょっと問題ですね。
さて、次回はちょっと内容が濃いでですね。お楽しみに。