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第9話 終焉の魔女は好きな人を訊く



【シアside】


 ギルドでの初仕事を終えたシアはアスタよりも早く帰路についていた。


「ふぅ……流石に少し疲れましたね」


 シアは家に着くと小さく伸びをした。


 そこは二階建ての少し広い家――アスタの家だった。

 シアは遠慮なく扉を開け、家の中に入っていく。


 すると、リビングで思い出したように呟いた。


「――そうだ、もう魔法は解いていいんでしたね」


 シアは自身の胸に手を当てると――


「〈嫉妬のヴェール〉」


 次の瞬間、シアの周りに先程までは見えなかったヴェールが現れ、それは静かに剥がれていく。


 そして、現れたのは黒髪の少女――リアだった。


「ふふっ、本当に魔女の力は便利で助かります……! まさか自由に姿を変られるなんて……!」


 リアの考え。

 それは――姿を変えてギルドの職員になり、仕事を早く終わらせるという力技だった。


 リアは元々、義理とはいえ貴族の家で聖女となるべく育てられた存在。

 ギルドの仕事なんて朝飯前なのだ。


「さて……私の分身はちゃんと働いてくれていますかね?」


 リアはキッチンに視線を移す。

 すると、リアと全く同じ見た目をした少女が料理をしていた。


「ふふっ、まさか魔女の力で分身を呼び出すことができるなんて……! これで私はアスタさんと一緒に過ごすことに専念できます!」


 世界に混乱と終焉をもたらすはずの魔女の力。


 それは、家事と変装という極めて平和的なことに使われていた。


「後はアスタさんを待つだけ……ですっ! アスタさん、喜ぶだろうなぁ……早く帰ってこないかなぁ〜」


 リアは鼻歌を歌いながら、アスタの帰りを待つのであった。




 ――◇――◇――◇――



「ふぅ……久しぶりに、ほぼ定時に帰れたぞ……!」


 俺は玄関の前でほくそ笑む。


 今まではずっと深夜に帰っていたからリアは驚くだろうなぁ。


「ただいまー」


 扉を開けると、ドタドタと忙しない物音と共にリアが駆け寄ってきた。


「お帰りなさい……! アスタさん、今日は早いんですね!」


 リアは満面の笑みで俺を出迎える。


「実は今日は仕事が凄く早く終わってさ……! 久しぶりに定時に帰れちゃったよ」


「それは良かったです……! ご飯も出来てますから、早く食べましょ? それともお風呂が先がいいですか?」


「ご飯が出来てるなら、冷めないうちに先にそっちをいただこうかな」


「わかりましたっ! 準備してきます!」


「助かるよ」


 少し待つと、リアがグラタンを運んできた。

 めっちゃ美味そうなんだけど……!


「じゃあ、食べましょうか」


「あ、ああ……!」


 俺はグラタンを一口食べる。


「――美味い……! リア、もしかして料理の腕を上げたか?」


「ふふっ、わかります? 実は少し練習したんです……っ!」


 リアは誇らしげに胸を張った。


 本当に健気で良い子だなぁ。

 正直、最初に出会ったときは殺されかけたし、とんでもない少女だと思っていた。


 でも、実際の話、リアは過去のトラウマが原因で他人を警戒しているだけで根は優しい子だった。


「……あの時、リアを拾って良かったよ」


「ど、どうしたんですか? 急に……」


「ああ、ごめん。ふと思ってさ」


 俺は小さく肩をすくめて、グラタンを食べ進めた。


 その後、風呂に入り、寝不足気味だったので俺は早めにベッドに入った。




「……アスタさん……一緒に寝てもいいですか?」


 すると、案の定、リアは俺の寝室に忍び込んできた。


「勿論いいよ。ほら、こっちに来て」


「ありがとうございます……!」


 リアはベッドの中に入ると、俺の方へ体を擦り寄せてきた。


「久しぶりにアスタさんと一緒に寝られて嬉しいです……頑張った甲斐がありました」


「頑張った甲斐?」


「ふふっ、こっちの話です!」


 リアは俺の腕に軽く抱きついてきた。


 その後、少しの間、沈黙が走る。

 しかし、不思議とその沈黙は不快ではなく、落ち着きすらも感じた。


「アスタさんは……好きな人とかって居るんですか?」


 突然、リアが沈黙をぶち破り、爆弾を投下してきた。


「きゅ、急にどうしたんだ……? まるで修学旅行の夜みたいな話題を……」


「修学旅行っていうのはよくわかりませんけど……ふと、気になったんです。それで、好きな人は居るんですか? 居ないんですか?」


「いや、それは……」


 この世界に来てから、忙しくて恋愛なんて考える暇は無かったからなぁ……。


 でも……


「居ない……けど、強いて言うなら一人いるかも」


「っ……ふ、ふぅん? それは一体、どちら様ですか?」


 リアは前のめりになりながら、食い気味に訊いてくる。


「……秘密かな。俺なんかじゃ釣り合わないくらい高貴な人で……もう既に相手がいる人だよ」


「つまり叶わぬ恋……というものですか?」


「そうなるね……まあ、俺もこんな平民に生まれた時点で完全に諦めてたから、殆ど気にしてないんだけどね」


 これは絶対に叶わぬ恋だ。

 まるで芸能人やアイドルに恋するのとほぼ同じだろう。


 いや、それ以上かもしれない。


 何せ、俺の好きな人は手の届かない存在である上に『主人公』と結ばれる運命にあるのだから。


 ――俺は、このゲームのメインヒロイン……聖女アリシアのことが転生する前からずっと好きだった。






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