第37話 要請という重さ
他国で庭方式が一部停止されたという報せから、
数週間が過ぎた。
批判は広がらなかった。
だが、消えもしなかった。
その頃、王都経由で正式な文書が届いた。
封は厚く、
複数国の紋章が並んでいる。
私は書斎で静かに封を切る。
『国際調整顧問への就任要請』
名誉職ではない。
実務的な立場。
庭方式の適切な導入指針を、
各国へ提示してほしいという。
私は文書を閉じる。
重い。
午後、庭に出る。
足音が一つ。
そして、もう一つ。
「来ましたか」
彼が言う。
「ええ」
私は頷く。
「今度は、象徴ではありません」
実務だ。
責任が伴う。
「引き受けますか」
私は少し考える。
断れば、
混乱は各国で続く。
引き受ければ、
私は制度の中に入る。
外側ではなくなる。
夕方、王都から追記が届く。
『あなたの立場を制度化したい』
制度化。
私は小さく息を吐く。
夜、庭に立つ。
月が高い。
足音が重なる。
「世界があなたを中に入れようとしています」
彼が言う。
「ええ」
私は答える。
「外側のままでは、足りないと」
沈黙が落ちる。
「あなたが何を選んでも」
彼は静かに言う。
「私は隣を選びます」
その言葉は変わらない。
私は目を閉じる。
私は制度を整えない。
だが、
揺れが広がりすぎるのも望まない。
翌朝、書斎で返書を書く。
『顧問には就任いたしません』
一行目。
そして続ける。
『ただし、各国代表が自国で議論する場を設ける場合、
私は同席いたします』
制度には入らない。
だが、
場には立つ。
午後、王都から即答が届く。
『その形式で了承』
私は封を閉じる。
制度化は拒む。
立ち位置は守る。
夕暮れ、庭に立つ。
足音が重なる。
私は気づく。
世界は大きくなった。
けれど、
私の選択は変わらない。
中に入らない。
外側で、
揺れを見守る。
整わないまま、
動き続ける。
それが、
今の私の立ち方だった。
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