第18話 選ばれない安心
新興地域からの報せは、落ち着きを取り戻していた。
「暫定代表、正式就任」
「範囲を段階的に拡張」
文面に迷いは少ない。
私はそれを読み、
静かに机へ置く。
午後、リナからも便りが届く。
港町の会議についてだ。
最後の一文に、私は目を止めた。
『今回は、こちらで完結いたします』
呼ばれていない。
私は椅子に背を預ける。
かつてなら、
当然のように同席していた議題。
今は、不要だと判断された。
それは拒絶ではない。
信頼だ。
夕方、庭に出る。
足音が一つ。
そして、もう一つ。
「呼ばれませんでした」
私は言う。
彼は少しだけ微笑む。
「良いことでは」
「ええ」
私は頷く。
けれど、
胸の奥にわずかな静けさが生まれる。
必要とされない。
その言葉は、
軽くもあり、
少しだけ広い。
夜、書斎に戻る。
便りを改めて読み返す。
文面は落ち着いている。
決定は明確だ。
私の不在は、
問題になっていない。
私は紙に一行だけ書く。
「港町、完全自立」
短い記録。
窓を開けると、
夜風が入る。
私は思う。
必要とされないことは、
終わりではない。
役割が移っただけ。
私は答えを渡さなかった。
だから、
彼らは自分で選べる。
翌朝、庭に出る。
光がやわらかい。
足音が重なる。
「寂しいですか」
彼が問う。
私は少し考える。
「いいえ」
そして、少しだけ続ける。
「安心しました」
必要でなくなることは、
失うことではない。
役割が軽くなることは、
重心が移った証。
私は並んでいる。
中心でも、
象徴でもない。
選ばれなくても、
隣にいる。
それで十分だ。
整わないまま、
動き続ける。
それが、
今の私の選び方だった。
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