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婚約は破棄されましたが、私は静かに身を引いただけです  作者: リリア・ノワール


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第55話 選ばれている現実

その事実は、

誰かに告げられたわけではなかった。


だからこそ、

気づいたとき、

少しだけ驚いた。


朝、

私は外の用件で屋敷を出た。


準備は滞りなく進み、

誰も迷っていない。


連絡も、

判断も、

自然な順序で回っている。


「……いつからでしょう」


馬車の中で、

私は小さく考えた。


外の仕事は、

私が強く関与しなくても

続いている。


それでも、

要所では

私の判断が前提になっている。


誰かが、

「次はどうしますか」と

聞いてくる。


それは、

権限ではない。


信頼の向け方だ。


昼過ぎ、

屋敷に戻る。


庭に出ると、

いつもの風景がある。


変わらない木々。

変わらない小径。


けれど、

私の中の感覚は

少しだけ違っていた。


「お帰りなさい」


声がして、

振り返る。


エドワード様だった。


「ただいま戻りました」


挨拶は、

いつも通り。


けれど、

そこに迷いはない。


並んで歩きながら、

私はふと思った。


私は、

何も約束していない。


何も決めていない。


それでも、

ここに戻っている。


戻ることを、

選び続けている。


「……不思議ですね」


私が、

ぽつりと言った。


「何がでしょう」


彼が、

穏やかに返す。


「決めていないのに」


言葉を選ぶ。


「いろいろなことが、

 もう定まっている

 気がします」


彼は、

少しだけ考えてから言った。


「定まっているのは」


「未来ではなく、

 今なのだと思います」


その言葉に、

胸の奥が静かに落ち着く。


私は、

はっきりと理解した。


決めていないから

不安なのではない。


決めていなくても

続いているから、

安心なのだ。


夕方、

部屋に戻る。


机の上には、

今日の記録。


私は、

それを整理しながら思う。


誰かに選ばれようと

しなくても。


自分が選び続けていれば、

現実は応えてくる。


夜、

灯りを落とす前。


私は、

静かに結論づける。


私は、

未来を確保していない。


けれど、

今日を選んでいる。


それが、

いつの間にか

「選ばれている現実」に

なっていた。


決めないままでも、

人は生きられる。


選び続けていれば、

関係も、

仕事も、

自然に形を持つ。


それを、

私はもう

疑っていなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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