表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約は破棄されましたが、私は静かに身を引いただけです  作者: リリア・ノワール


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/62

第41話 不在のあいだに

数日、

私は王都を離れていた。


遠出というほどではない。

別の領地での確認と、

小さな打ち合わせ。


それだけだ。


けれど、

その間、例の取り組みからは

意識的に距離を取った。


指示も出さない。

連絡も最小限。


「……様子を見る、ですね」


独り言は、

自分への確認だった。


滞在先での用事を終え、

帰路につく。


馬車の揺れは、

思考を整理するのに

ちょうどいい。


私は、

考えていた。


もし、

私がいないことで

止まってしまうなら。


それは、

まだ早いということだ。


王都に戻ったのは、

夕方近く。


屋敷に着くと、

使用人が控えめに声をかけてきた。


「お戻りの前に、

 ご報告が一件ございます」


「はい」


私は、

立ち止まった。


「現地からの連絡で……」


言葉を選びながら、

続ける。


「次の会合の日程が、

 先方から提案されたそうです」


「……私の不在中に?」


「はい」


私は、

小さく頷いた。


それ以上の説明は、

必要なかった。


部屋に戻り、

簡単に荷を解く。


机の上には、

私宛の簡単なメモ。


決定事項ではない。

相談事項でもない。


“こういう動きがあります”

という報告だけ。


私は、

それを読んで、

少しだけ息を吐いた。


庭に出る。


夕暮れの光が、

木々を染めている。


いつもの小径。


「……回っていますね」


誰に向けた言葉でもない。


私がいなくても、

話し合いが続いている。


判断が、

誰かに引き取られている。


それは、

少し寂しくもあり、

とても健全だった。


翌日、

簡単な報告を受ける。


「こちらから

 促したわけではありません」


官吏は、

そう付け加えた。


「皆さんが、

 自分たちで

 決めたい、と」


私は、

その言葉を静かに受け取った。


「……それなら」


私は、

小さく頷く。


「今のままで

 問題ありません」


中心に戻らない。

引き取らない。


昼過ぎ、

庭でエドワード様と会った。


「お帰りなさい」


「ただいま戻りました」


いつも通りの挨拶。


「ご不在の間、

 動きがあったそうですね」


彼は、

状況を知っていた。


「はい」


私は、

簡単に答える。


「私がいなくても、

 進んでいました」


彼は、

少しだけ目を細めた。


「それは、

 良いことですね」


評価ではない。

事実としての言葉。


「……少しだけ」


私は、

正直に言った。


「手放した感覚も、

 ありました」


彼は、

否定しなかった。


「必要な感覚だと

 思います」


「続けるためには」


その言葉に、

私は小さく頷いた。


夜、

部屋に戻る。


私は、

今日一日を思い返していた。


私がいなくても、

回っている。


それは、

私が不要だという意味ではない。


“私でなければならない”

状態ではない、ということ。


「……それで、いい」


静かにそう思う。


灯りを落とす前、

私は考えた。


守るとは、

抱え込むことではない。


支えるとは、

手放すことでもある。


不在のあいだに、

物事が進んだ。


それは、

私が一歩、

前に進んだ証だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ