第23話 一緒にいない時間
それから、
数日ほど、エドワード様とは顔を合わせなかった。
約束があったわけではない。
避けたわけでもない。
ただ、
それぞれに用事があり、
時間が、自然にずれただけだ。
私は、
そのことを特別には感じなかった。
少なくとも、
最初のうちは。
朝は、いつも通りに始まる。
庭を歩き、
書庫で本を選び、
静かに昼を過ごす。
誰かが隣にいないことは、
以前からの習慣だった。
だから、
寂しさはない。
それでも、
ふとした瞬間に、
「今日は会っていない」と気づく。
それは、
欠落ではなく、
認識に近かった。
昼下がり、
マリアが報告に来た。
「エドワード様は、
本日も戻られないそうです」
「そうですか」
それだけのやり取り。
私は、
そのまま本に視線を戻した。
心は、
乱れていない。
夕方、
庭に出る。
白百合の季節は終わり、
緑が増えている。
私は、
整えられた小径を歩きながら、
考えていた。
私は今、
一人で立っている。
けれど、
一人に戻ったわけではない。
この違いは、
以前の私には、
きっと分からなかった。
夜、
部屋で灯りを落とす前。
私は、
今日一日を振り返る。
不安はなかった。
焦りもない。
それでも、
「会わなかった」という事実は、
静かに残っている。
「……大丈夫ですね」
独り言は、
自分への確認だった。
数日後、
庭でエドワード様と再会した。
「お久しぶりです」
「ええ」
それだけ。
久しぶりというほどの時間ではない。
けれど、
言葉にすると、
少しだけ距離を意識する。
「お変わりありませんでしたか」
「はい」
即答だった。
彼は、
それ以上聞かなかった。
私も、
何も付け加えなかった。
並んで歩く。
以前と同じ距離。
同じ歩調。
違和感はない。
「……少し、
お会いしない日が続きましたね」
私が言うと、
彼は頷いた。
「ええ」
「それでも、
何も変わらないようで」
「変わらないことが、
確認できました」
その言葉に、
私は小さく息を吐いた。
一緒にいない時間があっても、
関係は揺れない。
会わないことで、
不安にならない。
それは、
依存ではない、という証だった。
私は、
その事実に、
静かな安心を覚えた。
夜、
部屋に戻る。
私は、
今日の再会を思い返していた。
離れても、
戻れる。
戻っても、
何かを埋めようとしない。
「……悪くないですね」
小さくそう呟いて、
灯りを落とす。
一緒にいない時間も、
この関係の一部なのだと、
ようやく理解できた夜だった。
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