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婚約は破棄されましたが、私は静かに身を引いただけです  作者: リリア・ノワール
第3部 余白が形を持つ前に

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第25話 正しさの衝突

風が、止まっていた。


あの言葉のあとから、


庭の空気は、

少しも動いていない。


――次は、二十秒もない。


私は立ったまま、

中心を見る。


空席。


そこは、もう軽くない。


余裕がない場所。


選び続けることが、

できるのか分からない場所。


「……考えていますね」


イリアの声がする。


振り返る。


彼女は、ほとんど内側にいる。


境界ではない。


もう一歩で中心に触れる位置。


「ええ」


私は答える。


「答えは出ましたか」


「いいえ」


即答する。


迷いは消えていない。


むしろ、


はっきりしている。


「……私は」


イリアが言う。


少しだけ間を置く。


「選ぶべきだと思います」


強い言葉。


だが、


完全ではない。


「一つに、ですか」


私は問う。


彼女は頷く。


「はい」


「余裕がないときは」


その言葉は、


昨日よりもはっきりしている。


私は彼女を見る。


「それで、残るものはどうしますか」


彼女は少しだけ言葉を止める。


だが、


逃げない。


「そのあとで、考えます」


正しい。


合理的だ。


だが、


順番が違う。


私は何も言わない。


昼、


レオンが現れる。


予想していた。


彼は迷いなく歩く。


中心に近い位置。


いつも通り。


「決めましたか」


彼は言う。


挨拶はない。


必要ない。


私は答えない。


彼は続ける。


「次の危機では」


「迷う時間はありません」


その通りだ。


私は頷く。


「はい」


彼は私を見る。


「では、どうしますか」


問いではない。


確認。


私は一歩、


内側へ出る。


中心のすぐ手前。


そして、


言う。


「選びます」


短い言葉。


だが、


重い。


イリアが息を呑む。


レオンはわずかに頷く。


「それが正解です」


即答。


迷いがない。


だが、


私は続ける。


「ただし」


一拍。


「それだけではありません」


空気が変わる。


レオンの目が、わずかに細くなる。


「どういう意味ですか」


私は空席を見る。


そして、


言う。


「選んだあとも、選び続けます」


沈黙。


風が戻る。


葉が揺れる。


音が生まれる。


レオンは言う。


「それは不可能です」


即座に。


「時間がありません」


「はい」


私は答える。


否定しない。


「それでも」


言葉を続ける。


「できる範囲で、続けます」


彼は首を振る。


「中途半端です」


正しい。


だが、


それでも。


「それでもです」


私は言う。


譲らない。


初めて、


はっきりと。


沈黙が落ちる。


長い。


だが、


崩れない。


イリアが言う。


「私は」


彼女は一歩前に出る。


中心に近づく。


「選びます」


迷いがない。


だが、


そのあとに続ける。


「そして、残します」


彼女の声は揺れていない。


決めた。


その立ち方を。


レオンが彼女を見る。


評価でも否定でもない。


ただ、


見ている。


「非効率です」


彼は言う。


「はい」


イリアが答える。


「ですが」


少しだけ間を置く。


「それでも必要です」


強い。


昨日よりも。


私はそれを見る。


そして、


理解する。


彼女は、


私とは違う形で、


同じ場所に来ている。


夕方、小さな会合。


緊急ではない。


だが、


試される場。


円形。

空席。


議論が始まる。


速い。


そして、


途中で止まる。


一人が言う。


「この案で」


イリアが言う。


「進めます」


決める。


即断。


だが、


続ける。


「ただし、残りを確認します」


流れが二段になる。


止まらない。


だが、


消えない。


私はそれを見る。


何も言わない。


だが、


分かる。


これは、


新しい形だ。


夜、庭に戻る。


足音が一つ。

そして、もう一つ。


「決めましたね」


彼が言う。


「ええ」


私は答える。


「一つではなく」


言葉を続ける。


「二つで」


彼は何も言わない。


ただ、


隣にいる。


それでいい。


私は空席を見る。


そこには何もない。


だが、


そこに向かう形は、


一つではなくなった。


選ぶ。


そして、


続ける。


それが、


今の答えだ。


だが、


それが通用しない場が、


必ず来る。


そのとき、


私はどうするのか。


夜風が止まる。


静寂が落ちる。


その中で、


次の問いが残る。


もし、


一つしか選べないとしたら。


そのとき、


私は何を捨てるのか。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


「正しさ」がぶつかり合い、少しずつ形が変わってきました。

ここから先は、さらに厳しい選択に入ります。


続きが気になる方は、ぜひブックマークと評価をいただけると励みになります。

次話もお楽しみに。

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