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君の声

扉から出てきたのは、ダイヤだった。

青い顔に、汗をかいていた。

僕の顔を見ると、ダイヤは膝から崩れるように、床に座った。



「ダイヤさん、ニーニャとお話してくれませんか。」

「あぁ、話をしよう。」



ダイヤと部屋に入った。 

先生は、お茶を用意してくれた。

僕とダイヤは、向かい合わせに座り、沈黙を流した。

そんな時、ダイヤが口を開いた。



「ニーニャ、俺のこと知りたいって言っていたよな。 具体的に、何を知りたかったんだ?」

「ダイヤが、僕に隠していること…、あなたの本当の名前を教えてほしい。」

「…。」



ダイヤは、紅茶を一口飲んでから、口を開く。



「自己紹介しようか。」

「うん。」

「俺の名前はシルファー・ブラック。 北の国の第二王子だ。」

「僕の名前はニーニャ。 西の国北区の村出身です。」



ダイヤ…、シルファーの目は、悲しそうに僕を見つめた。

僕は、先生に言ってもらった通り、自分のことを話してみることにした。



「僕は、三人兄弟の一番上、二個下の弟と四つ下の妹がいた。

父も母もいつも家にいなかった。 幼い兄弟たちを、頑張って世話してたんだよ。

けれど、僕にできることには、限界があったんだ。

日に日に痩せて、冷たくなっていく弟を。 一度も目を開けなかった妹を、あの家に置いてきてしまった。

クロム様が、産まれた日。 弟と妹のことを思い出して、怖くなってしまったんだ。

だから、抱っこしてあげることができなかった。」


「そうだったんだな。 …。

俺には兄弟はいない。 父は北の国第一王、母は第一女王だ。

史上最年少で、南の国の魔法学校の入学試験に合格し、十年のところを、四年で卒業した。

その後色々あって、悪魔プルウィン・スイートネスと契約をし、一度封印されたんだ。

時は経ち、アルクスが俺の封印を解き、今ここにいる。」


「そうなんだ…。 なんて呼べばいいの?」

「ダイヤで頼む。 アルが付けてくれた、大切な名前だ。

あと、質問には答えるが、他のみんなには秘密にしておいてほしい。」

「わかった。」


「どうして、封印されちゃったの?」

「プルウィン…キャンディと契約をしてからの記憶が、曖昧なんだ。 俺も正直あの後どうなったのか、わからない。」

「それって、ベルリアルと関係あるの?」

「あぁ、ベルリアルから国を守るために契約をした。」

「そうだったんだ。

…。 最後に一つだけ、どうして僕をこの国に連れてきたの?」

「お前の美しい瞳と神秘的な黒髪、きれいな顔立ちに惚れてしまったからだ。

俺が勝手に連れてきてしまったんだ。 もう十七だし、やりたいことがあるなら、どこに行っても構わないよ。 応援する。」

「ダイヤは僕と一緒は嫌なの?」

「そんなことない!」



今まで聞いたダイヤの声の中で、一番大きな声だった。

ダイヤも自分の声に驚いているようだった。



「すまない。 本当は、ずっと一緒にいてほしい。 

でも、一番願っているのは、ニーニャの幸せだ。」

「僕も、ダイヤとずっと一緒がいい。 それに、ダイヤのことをもっと知りたい。」

「そうか。」



ダイヤは少し、嬉しそうに見えた。

その後も、先生に話したことを、ダイヤに伝えた。

一通り、二人で話すと、ダイヤがテオを呼んだ。



「ニーニャに話したんや。」

「そうだ。 テオのことも、話しておこうと思ってな。」

「わかった。 俺はゼルアークっていう神に頼まれて、ダイヤのとこに来たんや。

ゼルアークはダイヤが、神に昇格するのを待っているんや。

それを、急かすためにこの国に送られたわけや。」

「ゼルアークっていう神様は、どうしてそんなに急かしているの。」

「もう、時間がない。 ベルリアルを、止めることができるリミットまで。」

「止められるの?」

「進化を止めるだけや。 完全な封印は難しいらしい。

時間無いっていうてるのに、ダイヤはいっこもやる気がないねん。」

「じゃあ、すぐ昇格しますってわけにはいかないんだよ。」

「昇格にも基準があるの?」

「基本的には神の推薦があれば、無条件で昇格できるんだが、昇格するには、それなりの代償が必要なんだ。」

「代償?」

「そうだ。 昇格して、神という称号を得る代わりに、何か大切なものを失ってしまうかもしれない。」

「それは、すぐには了承できないね。」



テオは、はぁとため息を付く。



「怒られるん俺やねんけど。」

「まぁ、ぼちぼち考えておくよ。 さっきも言ったが、この四人の秘密だからな。」



僕もテオも頷いた。



「ちゃんと話せて、良かったですね。」



先生は、僕の頭をポンと撫でた。

少しだったけど、ダイヤとテオのことを知れてよかった。









日が落ちて、空は真っ暗になっていた。

そこに絵の具を飛ばしたような、星が散らばっている。

僕とテオは先生の家まで、先生を送った。



「また、いつでも呼んでください。」

「はい。 今日は、ありがとうございました。」



先生は、僕達に微笑むと、家の中に入っていった。

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