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バトンタッチ

次の日、ダイヤは仕事で朝から出かけ、僕達はクロム様たちにお土産を渡した。



「これ、僕に!?」

「そう、気に入ってくれると嬉しいです。」

「とっても綺麗!」



クロム様は僕が買ってきた、緑の飾りを早速左肩のところに付けてくれた。

喜んでくれて嬉しい。

他の人にもお土産を渡し、クロム様とテオと三人で中庭で昼食を取っていた。

ララ達が来てから、こんなことができなかったから、とても楽しかった。

そういえば、今朝から彼女たちを見ていない。



「僕達がいない間、クロム様は大丈夫でしたか。」

「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。

リリィさんがずっと付いていてくれたし、父さんも前より一緒にいてくれる時間が増えた。」

「良かったな…。」



テオがクロム様の耳元で小声で話す。



「実は、ニーニャは旅行中ずっとクロム様の話しとったで。」

「テオ、聞こえてるよ。」

「そうだったの? ニーニャは優しいね。 僕の事心配してたなら、ちゃんと旅行楽しめなかったかな。 ごめんね。」

「いえ! そんな事ありません、大丈夫です。」



少しの間会っていなかっただけなのに、クロム様がとっても成長したように感じる。

僕の旅行中に何かあったのだろうか。

その日は一日中三人で過ごした。

久しぶりに会った友人と、暖かい時間を過ごせた。











その後も、ララ達から嫌がらせを受けることは無かった。

それは嬉しいことだったが、アルクス様の体調が段々悪くなっていった。

ダイヤに聞くと、治せない病気らしい。

クロム様には、まだ伝えていなかったけれど、なんとなく気づいているようだった。


クロム様は、アルクス様の部屋にいる時間が増えた。

僕達も何度か部屋に行ったが、二人の時間を邪魔してはいけないと、長居はしなかった。


クロム様の表情は、日に日に暗くなっていたが、ある日を境に勉強や剣術の稽古に熱心に取り組むようになった。

あんなに嫌がっていたのに、と不思議に思ったが、クロム様が頑張るならと思い、僕も一緒に稽古をつけてもらった。

ダイヤの稽古は厳しく、毎日ヘトヘトになるまで剣を振った。





それから数カ月後、アルクス様が亡くなった。

突然のことだった。

一階の暖炉の部屋に、城にいる全員が集められた。

庭師やコック、もちろんララ達も。

彼女たちを久しぶりに見た。

なんだか、前とは別人のようだったが、僕には関係ない。

あとから、オルターさんが入ってきた。



「これから、アルクス様の遺言書を読み上げます。」



オルターさんは、大きめの封筒からたくさんの紙を取り出し、読み上げていく。



「遺言書。 遺言者アルクス・ブレイドルは、本遺言書を作成するにあたり、以下の通り遺言する。

一 私、アルクス・ブレイドルが有する一切の財産を、息子クロム・ブレイドルと、娘アリス・ブレイドルに均等に相続させる。」

「ちょっと、それって…。」

「静かにしろ。」



ダイヤが、ララの方を睨んだ。



「二 私の後を継ぐトヤヘリノ東の国の王はクロム・ブレイドルとアリス・ブレイドルの二人とする。

二人で相談し、この国のことを決めること。 また、アリスが成人するまでは、政治・金融関係、その他国に関わることは、ダイヤ・スターゴートと三人で決めること。


三 私とダイヤ・スターゴートが交わしたものと、同じ契約をクロム・ブレイドルと交わすこと。

内容が少し変わっても可とする。


四 城に使えている者の今後も、次の王の二人とダイヤ・スターゴートに任せるとする。


オルター、ダイヤ、ニーニャ、テオ。 二人のことを頼みます。 ありがとう。

…以上です。」



ララの顔がサァっと青くなっていくのが見えた。



「私達の事は…、何も書いていないの。 財産も、無いの。

あの人の子の中で一番年上なのは、ノクスよ。」

「聞いていなかったのか、これがアルの言葉。 俺等はこれに従うまで。」

「こんなの…、納得できないわよ!」



ララは、隠し持っていた小型のナイフを勢いよく取り出し、クロム様に向けて刺そうとした。

クロム様の顔に届くギリギリのところで、ダイヤが彼女の腕を掴んでとめた。



「クロム、こいつらどうするんだ。 お前が決めろ。」

「…。 ララ、ノクス、フェル、ルゥをこの国。いや、トヤヘリノから追放する。 今すぐに。」

「了解。」

「ま、まって…。」



ララ達の足元に、ダイヤの魔法の扉が現れ、その先の見えないところに四人は落ちていった。

四人が消えたあと、部屋の中はシンと静まったが、クロム様が再び口を開いた。



「夕食の準備を頼む。」

「わ、わかりました。」



クロム様の指示に、みんなぞろぞろと部屋を出ていく。



「ダイヤ、契約を。」

「…。」



ダイヤは、一瞬考える素振りを見せたが、すぐにクロム様の手を取った。



「この契約の内容ってなんなの?」

「大きくなったら教えてやるよ。」

「簡単にでいいから。」

「…。 俺達は友達だ。 主従関係ではない、対等な関係。

俺は、何があってもお前を守る義務がある。

この城の権利も俺が持つ…。 主な契約は、こんなものだ。」

「わかった。 一つ追加してもいい?」

「何だ。」

「僕が選んだ服を着てほしい。」

「…。 いいだろう。」



ダイヤは、少し困った顔をしたが、アルクス様を亡くしたクロム様を可哀想に思ったのだろう。

すんなりと受け入れた。

二人は手をつなぎ、ダイヤは一冊の本を開いた。



「ダイヤ・スターゴートとクロム・ブレイドルは、この内容の契約を交わす。」



ダイヤの持つ本が、光り出す。



「クロム・ブレイドルとアリス・ブレイドルがトヤヘリノ東の国の王ということを、北の国の王シルファー・ブラックに代わって、ダイヤ・スターゴートが認める。」



本から光が消え、砂のようにパラパラと地面に落ち、消えてしまった。



「契約完了だ。 …。 これから、頑張ろうな。」

「うん、よろしくね。 ダイヤ。」

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