秘龍の国
車に揺られ、テオはぐっすり眠ってしまった。
今日は一日がとても長く感じる。
日がすっかり落ちて、星が見えだした頃に僕たちは港に着いた。
車から船に乗り換えて、秘龍の国へ向かう。
船は招待客用のものらしく、小さいがとても豪華な作りだ。
ダイヤは船に乗る時に元のサイズに戻った。
「秘龍の国行って何するんや?」
「友達がいるから、とりあえずそいつに会いに行こうかなと思っている。
その後は、後で考える。」
ダイヤの友達…どんな人なんだろうか。
僕は、まだ見た事ない世界を想像しながら、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
太陽の光で目が覚めると、大きな島が見えた。
「あれが、秘龍の国…。」
「起きたか?」
ダイヤの声に振り向くと、テオが窓から身を乗り出しており、それをダイヤがガッチリ支えていた。
「何してるの?」
「船酔い、ニーニャは大丈夫か?」
「大丈夫。」
初めて乗った船だったが、ほとんど寝て終わってしまった。
秘龍の国に到着すると、迎えの車が待っていた。
「お待ちしておりました。」
「久しぶりだな、コクエン。」
「ダイヤの友達?」
「んー、そうだけど…。正確には友達の執事さんだな。」
「ご案内しますね。」
コクエンさんはにっこり笑うと、僕たちを車に乗せ、車を走らせる。
「見ない間にだいぶ栄えたな。」
「百年経てば、街も変わりますよ。」
「百年!?ダイヤとコクエンさんはいくつなの?」
「正直、俺今の年齢わかんないんだよなぁ。」
「僕も虚しくなるので数えるのを辞めました。
そういえば、お名前お聞きしていませんでしたね。」
「僕はニーニャです。」
「俺はテオ。」
「あなたは、ダイヤさんでよろしかったですか。」
「あぁ、今はそれで通ってる。」
「今はって、前は違ったの?」
「まぁな。色々あるんだよ。」
「そうなんだ。」
ダイヤの向こう側に見えた、テオの顔が曇ったような気がしたので、この話はこれ以上しないことにした。
しばらく車に揺られていると、大きな城が見える。
見た事ないような形の建物で、東の国の城よりも大きい。
「大きい。」
「この国の城は昔からでかいよな。」
「国のシンボルでもありますからね。」
車は城前の門をくぐり、正面玄関の前まで来た。
車から降り、荷物をおろしていると、玄関の扉が突然開き、大きな尻尾がはえた人が現れた。
「久しぶり〜!」
「うわぁ!」
尻尾の人はダイヤに飛びつき、その反動でダイヤは後ろに倒れてしまう。
「重い!自分のデカさ考えろよ。」
「ごめんねぇ。」
ダイヤは尻尾の人を雑にどかす。
「ダイヤさん、すみません。」
「大丈夫だ。」
「ダイヤ?」
「今回は”ダイヤ”で頼む。」
「ふーん。」
尻尾の人は地面に座って、不思議そうにダイヤを見つめる。
「君も大変だね。」
「うるせぇ。」
ダイヤの顔は、怒っているようだが、なんだかとても楽しそうだ。
城の中から、靴の音が聞こえる。
軽いけれど、軸がしっかりとある音。
「ソラ、中で話したらどうだ?」
「そうだね。話したいこといっぱいあるんだよ!」
城の中から顔を出したのは、青みがかった銀髪に赤い目。
それに、ダイヤと同じような尖った耳。
一目で魔人だとわかった。
僕らは応接間に通されると、向かいに魔人と尻尾の人が座る。
「改めて、僕ソラ。よろしくね。」
「私はセンリだ。」
「僕はニーニャです。」
「俺、テオ。」
コクエンさんが紅茶とジュースを持ってきてくれた。
僕は、ジュースのストローに口をつける。
「今はダイヤって言ってたけど、自分で考えたの?」
「友達が考えてくれた。」
「良かったね。」
ソラさんは優しく笑った。
「これから、どうするの?」
「さっき見た感じ、前に来たときよりもだいぶ変わってたからなぁ。
まぁ、こいつらが行きたいところに、行こうと思う。」
「じゃあ、案内してあげなきゃ。ね。」
「そうだな。呼んでくるよ。」
センリさんは部屋から出ていった。
誰を呼んでくるのだろう。
そんな事を考えていると、テオが口を開く。
「この国の王は二人おるん?」
「そうだよ。龍人の僕と、魔人のセンリで、この国を治めているんだ。」
「二人で喧嘩になることはないんですか?」
「喧嘩するよ。でも、ぶつかることも時には大切なんだ。
話し合って、気持ちや意見を伝えて、この国をより良くする。それが、僕達の役目。」
「ソラさんとセンリさんの役目…。」
コンコンコンと扉がノックされる。
「入るぞ。」
センリさんは二人の子どもを連れて戻ってきた。
二人とも、僕と同じくらいの歳の子たちだ。
「こんにちは。」
僕は椅子から立ち上がり、挨拶する。
「こんにちは…。」
センリと同じような髪と、赤い瞳、尖った耳を持つ子どもはセンリの後ろに隠れてしまった。
「こんにちは、俺はジン。彼はレンシン。よろしくね。」
一歩前に出た尻尾がついた青髪の少年、ジンは僕と握手しようと、手を伸ばす。
「僕はニーニャです。」
僕はジンの手をとる。
じんと僕の手の上にテオが両手を置く。
「俺、テオ。よろしく。」
「うん、ニーニャとテオだね。旅行で来たって聞いたんだ。
俺達と一緒に、どこ行くか決めない? いいところいっぱい知ってるよ。」
「ええやん。そうしようや。」
テオは僕の方を見る。
「テオがそう言うなら…お願いしようかな。」
「じゃあ、決まり!俺の部屋に来て!」
ジンは僕の手を引いて、応接室を出る。




