狙いを定めて
作戦会議の後、夕方の屋台の方へ行った。
食べ物や雑貨の店、ゲームの屋台などがずらりと並んでいた。
僕はたくさんの物が階段状の台に並んでいる屋台を見つけた。
「あれ、何?」
「あぁ、射的か。やるか?」
「やりたい!」
ダイヤは店の人にコインを渡す。
「一回頼む。…テオは?」
「俺はいいわ。」
「そうか。」
僕は店の人から大きな銃を渡された。
「この銃で欲しいものを狙うんだ。どれにする?」
僕は僕に少し似ている暗い色の猫のぬいぐるみを指さした。
「あれにする。」
「あれか。じゃあ肘ついて、右手であのぬいぐるみに銃の先を向けろ。頭のところに狙いを定めて、左手で引き金を引くんだ。」
僕は言われた通りにぬいぐるみの頭を狙い、引き金を引く。
すると、コルクの弾がぬいぐるみに当たる。
「当たった!」
「そうだな。でも、あれは倒さないと貰えないんだよ。」
「そうなの?」
ダイヤはうーんと考えた後に、もう一度口を開く。
「じゃあ、次はあのぬいぐるみの隣のお菓子の箱を狙えるか?」
ダイヤは、ぬいぐるみの左隣にあるお菓子の箱を指さす。
「わかった。」
僕は言われた通りお菓子の箱を狙うが、外れてしまった。
「あぁ、」
「大丈夫、あともう一発あるだろ。落ち着いて、もう一回だ。」
「うん。」
僕はもう一度お菓子の箱を狙う。
落ち着いて、狙い引き金を引く。
すると、コルクの弾はお菓子の箱に当たり、弾はそれに弾かれてぬいぐるみに当たる。
ぬいぐるみは横にコテンと倒れた。
「倒れた!」
「あぁ、僕、喜んでるとこ悪いけど、あの棚から落ちないと商品はあげられないんだ。」
「そんな。」
店の人と、僕の反応を見て、ダイヤがテオを下ろす。
「もう一回頼む。」
「はい、まいど。」
「もう一度聞くが、あの棚から落とせばいいんだよな。」
「あぁ、そうだよ兄ちゃん。できるならやってみな。」
僕はダイヤを心配そうに見つめる。
「大丈夫だ、古い友達が得意でな。コツを知ってるんだよ。」
ダイヤは銃にコルクの弾を詰める。
狙いを定めて、引き金を引く。
ダイヤが狙ったのはぬいぐるみの後ろにある壁。
コルクの弾は壁に跳ね返ってぬいぐるみの後頭部に当たる。
ぬいぐるみは前にコロッと落ち、後ろに金属の支えが見える。
「ほら、落としたぞ。」
「あ、お、おめでとうございます!」
店の人は支えを隠すようにダイヤにぬいぐるみを渡す。
「まだ、二発あるぞ。テオ何かいるか?」
「じゃあ、あれ。」
テオが指さしたのは、僕が取ってもらったものと同じで、色が違うぬいぐるみ。
「あれだな。」
ダイヤは、僕のを取ってくれたのと同じように、テオが指したぬいぐるみを簡単に取ってしまう。
「ダイヤすごい!」
「お、お客さんすごいですねぇ!」
「まぁ、そうでもないがな。お前もこんな商売やめといた方がいいぞ。」
「はいー、そうしようと思います。
あっ、そうだ!お客さん、これさしあげますよ。」
店の人は、ダイヤの手に何かをねじ込ませた。
ダイヤがぱっと手を開いて、確認すると、どこかの招待券だ。
「これ、偽物じゃないよな。どこで手に入れたんだ?」
「前の仕事の時に譲り受けたものです。貿易関係の仕事をしていました。三人で行ってみてはどうでしょう。」
「なるほどね。行ってみるか?」
ダイヤは僕たちに尋ねる。
「二人が行くなら、俺は行くで。」
「どこなの?」
「秘龍の国だ。」
「秘龍の国!?
そんなん観光とかで行けるん?」
「普通は行けないが、招待券だからな。いい経験にはなるんじゃないか。」
「でも、魔人と龍人の国なんて…、」
「行ってみようよ!何かあってもダイヤが守ってくれるよね。」
「そうだな。」
ダイヤは優しく僕に微笑む。
「じゃあ、一旦今日は戻ろうか。」
「お城に?」
「別の場所。」
ダイヤは、またテオを抱いて、僕と手を繋ぐ。
別の場所と言っていたが、ダイヤが向かっているのは、城と同じ方向。
そのまま、城に続く少しの上り坂を上がると思ったけど、少し道から逸れる。
ダイヤが歩いていったのは城の後ろにある大きな森。
「ダイヤが帰ってきた。」
「小さいのが二人いるね。」
どこかから小さな声が聞こえる。
「お前ら、こいつらに手を出すなよ。もし、何かしたら握りつぶす。」
「わー!ダイヤこわい!」
「リリィ様に怒られても、しらないんだからね!」
クスクスという笑い声に混じって、また小さな声が聞こえる。
どんどん森の奥に入っていく。
すると、小さな小屋のようなものが見える。
その奥には大きな泉。
「ここは?」
「リリィの家だ。リリィに連絡してから行こうと思ってな。」
ダイヤはそう言うと、魔法で扉を出す。
「準備してこい。ニーニャの部屋に繋げたから。
テオの準備も手伝ってやれよ。」
「わかった。」
僕とテオは扉をくぐり、城に戻ってきた。
僕は、ララ達に気づかれてはいけないと思い、静かに準備を済ませる。
テオを連れて、隣の部屋に入り、テオの準備も済ませると、ここに来たのと同じ魔法の扉で、リリィさんの小屋に戻った。
城から戻ると、ダイヤが水晶に向かって話していた。
「うん、もう決めたから。」
「アルちゃん、かなりしょげてるから一度帰って話をしてよ。」
水晶の向こう側からリリィさんの声も聞こえる。
「あいつも、もう子どもじゃないから。アルが話す準備が出来たら、自分で連絡してくるだろ。」
「そうかもしれないけど…。」
「俺たちを信じろ。アルがどうするつもりなのかは、正直分からないが、あいつなりの答えはもう出ているはずだ。」
「ダイヤが言うならそうなのかもね。」
ダイヤはクロム様の病気の薬の話を少しだけして、水晶をしまった。
「よし、じゃあ行くぞ。」
僕とダイヤ、テオは森を抜け、車に乗る。
行先は大きな港。
秘龍の国に向けて車が動き出す。




