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第二十二話 魔鏡


 砂塵と風の竜巻がぶつかり合い、互いに打ち消し合う。

 砂が散って霧状に立ちこめると、それを突き破るようにガーゴイルが来る。


「おっと」


 得物の錫杖が振るわれ、それを回避。

 続けざまに繰り出される攻撃を躱しつつ、反撃の時を待つ。


「誰か忘れてない? そう、私!」


 待つまでもなく、伊吹が作り出してくれた。

 跳び上がった伊吹は両手を獣のそれに変え、ガーゴイルの背後を襲う。

 虚空を引き裂いて落ちた一撃は、岩の肌を深く削り取り、石の羽を片方落とす。


「ガァアァァァァアアッ!?」


 たまらず悲鳴を上げたところへ追撃。

 渾身の力を大鎚に込めて振り上げ、ガーゴイルの腹部を穿つ。

 深い亀裂が走り、大きな塊がごとりと落ちる。


「ん?」


 破壊した腹部から、内部の何かが露出した。

 光沢を帯びた黒い球体。それは微かに空中に浮かぶ砂塵を吸収している。


「グォオオオォオオオオッ」


 負傷したガーゴイルは周囲の砂を操り、俺を遠ざけようと波を起こす。

 呑まれる訳にもいかず、もくろみ通りに距離を取った。


「キリがないねぇ」

「そうでもない。コアを見つけた」

「ホント? じゃあそれを壊せば」

「あぁ、倒せる」


 とにかくガーゴイルの外皮を壊してコアを露出させないと。

 そのためには。


「伊吹。俺に良い案がある」

「へぇー、どんなの」

「こういうの」


 スキルを発動し、新たに魔法を再現する。


鏡魔法ミラーミラージュ


 魔法を唱えて発動し、周囲に魔法の鏡を展開した。


「わおっ! これミラーダンジョンのだ!」

「あぁ、そうだ。それで鏡に伊吹を映せば」


 鏡面に伊吹の姿が映り、展開したすべての鏡からドッペルゲンガーが現れる。

 それらは伊吹の姿を忠実に再現し、鏡面から這い出るとそのままガーゴイルへと襲いかかった。

 両手の獣爪を振るい、全方位からガーゴイルの外皮を削りに掛かる。


「あははっ! いいね! 私もまーざろ!」


 そこに伊吹も加わり、偽物と本物が入り乱れて獣爪が乱舞した。

 瞬く間にガーゴイルは削られていき、ついに腹部のコアが露出する。


「これで終ーわり!」


 光沢のある黒の球体に獣の爪を立てる。

 そのまま引き裂くように破壊しようとするが、獣爪の先は深くまでいたらない。


「かったい!」


 弱点であるためか、コアはほかよりも硬い材質で出来ていた。

 弾かれたように伊吹は体勢を崩し、そこを付くように砂がうねる。

 砂の波はドッペルゲンガーたちを一息に飲み込んで攫い、伊吹にも牙を剥く。


「穂人くん!」

「大丈夫だ」


 すでにショートカット機能で鳴神に持ち替えてあるし、鞘にも収めている。

 全身には紫電が迸り、いつでも駆け出せた。


「紫電一閃」


 地面を蹴ったと同時に、何よりも速く前進する。

 砂の浸食で狭まる足場を難なく乗り継ぎ、至近距離へ。

 伊吹の側をすり抜けて踏み込み、紫電を帯びた一閃を見舞う。

 稲光の居合い斬り。

 それを振り終えた頃には、すべてが終わっていた。

 ごとり、ごとりと二つに割れたコアが地面に落ちる。

 瞬間、ガーゴイルの石の体が砕け散った。


「やったー! さっすが、穂人くん!」

「伊吹が削ってくれたお陰だよ」

「あはー」


 伊吹はにっと笑った。

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