第二十一話 石像
「地形操作」
石材を積み重ねて作られたゴーレムが、魔物を蹴散らして進む。
魔物たちは小さな牙で立ち向かうが、生命のないそれに効果はない。
巨大な拳で握り潰し、大きな足で踏み潰し、太い腕で薙ぎ払う。
あっという間に魔物を殲滅したゴーレムは、役目を終えたように拡散する。
石材の一つ一つや、地面や壁や天井へと戻り、はめ込まれていく。
これもまた志鶴のスキルによるものだ。
「綴里。ほかに魔物はいる?」
「ううん、索敵にはなにも引っかからないよ」
綴里のスキルによって折られた犬が、周囲を駆け回っている。
二か三枚ほどで折られた簡易的なものから、何枚も重ねて折られた本格的なもので、いろんな種類の折紙たちが鼻をきかせていた。
「うんうん。お掃除ばっちり、あとはボスだけだね」
ボス部屋の大きな扉を前にして俺たちは準備を整える。
所持品をチェックし、気持ちを落ち着け、意を決した。
「よし、行こう」
大きな壁は触れるだけで独りでに開き、俺たちを中へと招き入れる。
ゆっくりとした足取りでボス部屋へと足を踏み入れるとばたんと扉がしまった。
もう後戻りは出来ない。
「なにが出るかなー?」
伊吹の暢気な声が響くと共に、部屋の明かりが灯る。
如何にもな広さの空間の奥に二体の像があった。
両方とも同じ石像で、蝙蝠のような羽を持ち、錫杖を握り締めた怪物。
それが同時に生命を得たように、動き出す。
「ガーゴイルか」
動く石像でお馴染み、雨樋のガーゴイル。
それらは錫杖の先で何度も地面を叩きながら近づいてくる。
「こういう時のセオリーは?」
「片方を先に叩く!」
「じゃあ、それで行こう。右の奴からだ」
標的を定め、各々が役割を果たすべく動く。
俺と伊吹は全身し、綴里と志鶴はその場でスキルを発動する。
それがいけなかった。
「ガァアァァアァァァアア!」
ガーゴイルが叫ぶと共に、ボス部屋を二分するように結界が構築される。
「なっ!?」
それは志鶴と綴里を分断し、戻ろうとしても遅かった。
「だったら、こうだっ」
伊吹の腰から生えた尻尾の鎌の一太刀が結界を斬る。
だが、傷一つ入った様子はなく、向こう側でも手裏剣が受け止められていた。
どうやらこの結界を破るのは困難らしい。
「くそっ、やられたな」
ガーゴイルが二体いたのはこういうことか。
「こうなったら二人でどうにかするしかなさそうだね」
「だな。なるべく早く仕留める。片方が片付けば結界がなくなるかも」
「なら、早くしましょう。もうそこまで来てるわ」
「どっちが早く倒せるか競争だね。負けないぞー!」
視線を合わせて頷き合い、俺と伊吹でこちら側のガーゴイルと相対する。
見ようによっては悪魔にも見える造形が吼え、こちらに駆け出した。
「先手必勝!」
両足が獣のそれとなり、伊吹は脅威の跳躍力を見せる。
頭上へと舞い上がり、その勢いのままに攻撃を振るう。
繰り出すのは、尾による攻撃。
ただし、鎌ではなく槌だ。
尾に槌を持つ魔物を模した伊吹は身をひねり、それをガーゴイルへと叩き付ける。
「グォオオッ」
強烈な一撃を受け、ガーゴイルが大きく怯む。
石像の体にも亀裂が走り、欠片が幾つか飛び散った。
「へっへーん。どんなもんだい!」
「自慢するにはまだ早いぞ」
そう言いつつ伊吹の側を通り過ぎ、畳み掛けにいく。
見るからに切断系は聞かなそうだ。
ショートカット機能を使い、得物を刀から大鎚へ。
「そらッ」
踏み込み、かち上げ、脇腹へと強打を見舞う。
「グォオオォオオッ!」
右に揺れ、左に揺れたガーゴイルは後ろへとよろけ、錫杖に寄りかかる。
「案外、余裕じゃない?」
「フラグだぞ、それ」
案の定、ガーゴイルはそれだけで終わらなかった。
錫杖を振るい、地面や壁や天井の石材を引っこ抜く。
それらを砕いて粉にすると自身を中心に砂嵐を巻き起こした。
「そら見ろ!」
「わー! ごめんごめん!」
砂の竜巻は勢力を増し、こちらへと放たれる。
呑まれればただでは済まない。
「しようがない。竜巻には竜巻だっ」
スキルを発動し、再現する。
「上級風魔法」
魔法を唱え、この空間にもう一つの竜巻を巻き起こした。
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