(エピローグ)ミンジェ課長の休日:共同作業
週末。ミンジェのマンション。
ソファに座って映画を見ていたジミンは、無意識に左手の指輪を触っていた。
「緩いのか?」
コーヒーを運んできたミンジェが聞く。
「ゆるゆるというほどではないですけど……少し、緩いかも。
体調もあるかもしれないし、ほら、これから指が太くなるかもしれないし」
あはは、と笑うジミンと対照的に、ミンジェは真顔で指輪をじっと見ている。
「直しに行こう」
「え」
「購入したとき、サイズ直しはいつでも対応できると言われた」
なるほど。
ひとりで指輪を買いに来た男性客に、店員はきっと、そう説明したのだろう。
サプライズでも大丈夫です、と。
サイズはあとで直せますから、と。
もしかしたら、気に入らなかった場合の返品交換の可否まで聞いたかもしれない。
(課長だなあ……)
コーヒーカップを手で包み込み、見上げると、
ミンジェはまだ真顔だった。
「早いほうがいい。明日にでも行こう」
翌日、ジミンとミンジェは、地下鉄に乗って繁華街まで出て、
百貨店のジュエリーショップを訪れた。
ゲージを使ってジミンの指のサイズを測る。
ミンジェが購入した指輪は、わずかに大きめだった。
サイズ直しの注文を済ませ、ふたりで店を出る。
「手間をとらせて悪かったな」
ミンジェはばつが悪そうに言う。
「そんなことないですよ」
ジミンはふふと笑った。
「ふたりでこうやってお出かけして、お店で一緒に指輪のサイズ測って。
買うときは課長……じゃない、ミンジェがひとりで選んでくれたけど、
なんだか今日は、共同作業みたいでうれしいです」
ミンジェはわずかに目を開き、少し視線をずらした。
ジミンの手を握る指に、力がこもる。
カフェで休憩でも、と足を止めたとき。
見覚えのある二人が横切った。
「どうした」
「ソヨンさんと……ジフン」
ミンジェは虚をつかれたような顔で、駅の方向へと向かう人混みを見遣った。
(そうか、知らないんだ)
――卵入れるの、大好きなの。
あの時の、ソヨンの笑顔を。
会社で見せる顔とは違う、カジュアルな服装の二人の背中は、
すぐに雑踏にまぎれて見えなくなった。
「入ろうか」
ミンジェがカフェのドアを開け、ジミンを促す。
その横顔を見上げて、
「指輪出来上がるの、楽しみ」
そうつぶやくと、ミンジェは目を細めて笑った。




