表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつかあなたを  作者: Jun
救済の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/65

62 女神の救済2

 ローズは二人の話を聞きながら混乱していたが、リアムとエリナがもう亡くなっていて、今またローズを置いて去って行こうとしているのが分かって取り乱した。

「嫌よ。私だけ置いて行かないで。このままこの世界に皆でいれば良いじゃない。私はお父さんとお母さんと離れたくない。

 ベルフリーデには何度でも浄化をかけるわ。あの子は私がトムと仲良くなってるって誤解して、勝手に妬んでるだけなんだから。そうだ。トムのお母さんは、ベルフリーデに入れられた黒い魔力を吸い取る事が出来るの。だから私はあの子にやられたりしない。ダメならここを離れて、別の神殿に移れば良いのよ。そうしたらベルフリーデとも離れられて、三人で安全に暮らしていける。お父さんやお母さんとずっと一緒にいられるでしょう」


 泣きながら二人に縋りつくと、エリナは「ローズ、今何て言ったの。あなた、ベルフリーデにあの魔力を身体に入れられたの?」と驚いて聞き返した。

「うん。魔力がほとんどない所に黒い魔力を入れられて、毒が流れ込むみたいに苦しかった。だけど、トム…新しく来た神官のお母さんが、それを吸い取ってくれて助かったの。その人はケイトさんって言うんだけど、ケイトさんはそのせいか黒い魔力が身体に溜まっていて、定期的に浄化をしないといけないみたい」


「そうだったの」エリナはリアムを見た。

「何かが違ってきていると思ったけど、きっと女神様に力を借りた人がこの世界に他にもいたんだわ」

「そうだな。おそらくその人もあららの世界と関係のある人なんだろう」


 二人はローズをしっかり抱きしめて話した。


「ローズ。私たちはあの時全力で戦ったが、ベルフリーデに憑りついた悪魔に敗れる寸前だった。最後に女神様に命を捧げて貸してもらった力で、お前を逃がし悪魔を打ち破れたんだ。女神様はお前を逃がす為、お前をこことは違う世界に送ってくださった。

 その世界はかつて悪魔が現れ、女神様の力を持つ聖女によって封印された世界だったが、悪魔の封印が解けたせいで、お前に危険が迫ったんだ。女神様はお前を助ける為、再びこちらの世界に呼び戻したんだよ」

「あなたは本当はとても力の強い聖女なの。あちらに移る時その力は封印されたけど、この世界に戻って、その力を再び取り戻す事が出来た。だからあちらの世界に戻ったら、取り戻した聖女の力を使って悪魔を滅ぼしなさい。

あなたは今は忘れているけれど、本当はあららの世界に大切な人がいて、危険な目にあってる。そしておそらくトムという神官とケイトという母親も、あなたと同じなんだと思うわ」


「そんなの知らない。あららの世界にいる人なんて、誰の事も覚えていないもの。トムもケイトさんも、私はついこないだ会ったばかりの人よ。あの人たちの事情なんて分からないわ。私にはお父さんとお母さんがいてくれたら、それで良いの。だからお願い。消えないで」

 必死でかきくどくローズを見て、二人は辛そうな顔で涙を浮かべた。

「ごめんなさい、ローズ。それは出来ないの。私たちの時間は限りがあって、もうそれは尽きたわ」

「ローズ。私達は、お前と一緒に過ごせたこの何でもない毎日が宝物だったよ。

 …お前が、祭りの提灯の話にうんざりしていたのは分かってたんだ。でもな、あれは数少ない幼いお前の思い出だったから、つい何度も話してしまった。すまなかったな」リアムが泣き笑いの顔で言うと、エリナも「あの時のあなたは顔を真っ赤にして泣いて怖がって、私たちはとても困ったけど、可愛くてたまらなかった」と言って、ローズの頭にキスをした。


 自分の身体を抱きしめてくれていた二人の姿が、だんだんと薄れていく事に気づいて、ローズは泣き叫んだ。

「行かないで!私を一人にしないで!」

『最後にあの日本当は何が起こったのかを、あなたに伝えておくわ。私たちがあなたを大切に思っていた事、あなたが小さい時から勇敢な女の子だった事を、覚えておいて』


 エリナの言葉が最後に聞こえて、二人の姿が完全に消えた時、ローズの意識は闇に沈んだ。


『ベルフリーデ!どうして?私達親友だったでしょう』苦しみながら声を振り絞るエリナの手を、嬉しそうに笑うベルフリーデが握っている。

『親友? 私はあなたがずっと目障りだった。小さい頃から、あなたがいなければ私が一番優秀な聖女だったのに。リアムだって私の方が先に仲良くなっていたよ。それがいつの間にかあなたと付き合って結婚すると言い出して。その上あなたの子どもが今までにないほど力の強い聖女だと聞いた時から、いつかあなたをこうしてやりたいって思ってたわ』


 黒い魔力という毒を注ぎ込まれ、息も絶え絶えになったエリナに止めを刺そうとしたベルフリーデに、部屋に飛び込んで来た小さい影が体当たりした。

『きゃあ!』衝撃にたたらを踏んだベルフリーデがエリナの手を離すと、その影は倒れたエリナに抱き着いた。

『おかあさん!』

『ダメよ、来ちゃいけない。ローズ』エリナが弱々しい声を出すと、すぐに立ち直ったベルフリーデが大声で笑い出した。

『なんて馬鹿な子だろう。エリナ、あなたにそっくりよ。隠れていれば良いものを良い子ぶって、自分を犠牲にしても人を助けたいなんていう所がね。

 いいわ、一緒に逝けたら幸せでしょう。いくら魔力が大きくても、何の修行もしていない子どもになんて負けやしない。聖女なんて今のうちに始末した方が、都合が良いもの。あの人は、さぞ悲しむでしょうね』ベルフリーデが二人に近寄って行くと、ドアが開いてリアムが駆け込んで来た。


『エリナ、ローズ、大きな音がしたが大丈夫か』リアムはさっと室内の様子に目をやると、さっきのエリナと同じく、信じられないという顔でベルフリーデを見た。

『ベル。これは君の仕業なのか』そう聞きながらもすかさず魔法を放ち、エリナとローズの周りに円柱状の障壁を作った。

 それを見たベルフリーデは、ついに溜まっていた憎しみが満ち溢れ、その姿を蛇に変え始めた。

『蛇だと。お前、悪魔なのか』愕然とするリアムに、悪魔となったベルフリーデは笑った。

『その通りだ。まずはお前からか』

 完全に蛇となり姿を現した悪魔は、宿主のベルフリーデが憎んでいた相手を葬ってやろうと決めたようで、黒い魔力を無数の蛇に変え、リアムに襲い掛かった。


 リアムも自分の魔法で蛇から逃れようと応戦したが、疲れを知らない相手にやがて劣勢になっていって、遂に終わりを悟った時叫んだ。

『女神様、私の命を捧げます。どうかエリナとローズをお守り下さい』

『お前の祈りなどが女神に届くものか』蛇は、リアムを捕らえると締め上げた。


 障壁の中でそれを聞いていたエリナは、ローズを抱きしめて祈った。

(女神様。私の魔力も命も全て捧げます。どうぞこの子だけはお救いください)

 次の瞬間、部屋の中にいたはずのエリナ達は澄んだ水の底にいた。

 エリナ達を囲んでいた障壁は消え去り、リアムは水底に倒れ、エリナの腕の中にいたローズは水面から差してくる眩い光に包まれて昇っていく。

『逃すか!』叫んだ蛇がローズを追おうとしたが、ローズを包む光に身体が触れると形を保てなくなった。

『まさか、本当に女神が祈りを聞き届けたと言うのか』信じられないという思いで叫びながら、悪魔となったベルフリーデは蛇の姿のまま崩壊し消え去った。


 水面に浮かび上がって行くローズを、エリナは水底に倒れたまま見つめていた。

 彼女の両目からは、安堵の涙がとめどなく流れ、澄んだ水に溶けていった。やがてローズが見えなくなると、エリナは這いずりながら倒れたリアムに近づいて、まだ暖かいその体を抱きしめて祈った。

『女神様。ありがとうございます。どうか、この先もあの子をお守りください。もしあの子に再び魔の手が迫った時は、私達にあの子を守らせてください』

 エリナの最後の祈りも女神に聞き届けられ、三人はこの世界でもう一度出会えた。



読んでいただき、ありがとうございます。


続きが読みたいと思っていただけたら、ブックマーク、評価(下の方にある☆☆☆☆☆)、いいねで応援してくださると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ