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昊天の射手が矯める亡国の獅子:岩山の学舎  作者: 栖乃晢


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第3章 4:兄の意地、姉の鉄槌

「う~ん…男の子の方は、何だか見覚えがある気が…」

 答えは解っているけど認めたくない…レンディーネはそんな顔をする。

「同感だ。大天幕の『大目玉』として、オレも見た気がするよ。」

 ノァルカッサの直球発言に、

「…やっぱり?」

レンディーネは半べそになり、

「もぉ…どうやって連れ出したのさ?」

露骨に呆れ顔でナァセに問うが、

(いや)。事ここに至っては、そこはもはや問題ではなかろう。ナァセ、その子等を、どうするつもりなのだ?」

レヴが早速本題に入る。

「故郷に帰してあげたい、っていうのが一番だけど…たぶん、かなり難しい。ファーツ、ミーツィ、今、何処にいるか解ってる?この家の事じゃなくて、ざっくり“世界のどの辺り”とか…」

 ナァセに訊かれて、二人は首を振る。

「つかまった時に何かで眠らされて、起きた時にはもうオリの中だった。さっきの暗い部屋か、たくさんの人たちに囲まれた真ん中か、移動中はずっとデッカイ布がかぶせられてて、外も見たことない。」

「…想ってた以上だね…でも“帰る場所も、道も、分からない”って事は、はっきりした。『解放してあげたから、後はご自由に』なんて無責任な事はできないし…だから、わたしは、二人に“生きていく力”を身に付けさせてあげたい。」

「んーちょっと待って。」

 突然、レンディーネが意見有りと手を挙げる。

「この子達の故郷なんて、アヴァナッドに訊けば分かるんじゃない?」

「たぶん知らないよ。」

 ナァセは即答した。

「巡業先の地域での“人攫い”くらいなら自分達でやってるみたいだけど、『南の大陸』に赴いて“人獣族の子を攫う”なんて事は、“専門家”にでも委託してるか、或いは“その()の商人”から買ってるか―」

「“人獣族”とな?」

 気になった単語に、レヴが話の腰を折った。

「あ、そっか…」

 肝心な事を言い忘れていたことにナァセは気付くが、

アヴァナッド(あそこ)の人たちもオレとミーツィのことそう言ってた気がするけど、“ジンジュウ族”って何?」

ファーツからも疑問を投げられた。

「…そうか、北大陸(こっち)が勝手にそう呼んでるだけだから…昔、『南の大陸』を旅して無事に帰ってきた人が残した“記録”の中に、『ヒトにもケモノにも姿を変えられる種族』っていうのが紹介されていて、記録(そこ)では“人獣族”って呼ばれてるんだけど…君達は、違う?」

「たぶん、ちがわない。いつもはだいたいこの姿でいて、狩りの時とかケンカする時なんかに、()()姿()になったりするから。」

「あの姿…“大っきなネコ”って感じだったね。」

 独り言のつもりでレンディーネは呟いたようだが、ナァセを始め実際に大天幕で見た5名が微妙な視線を向ける。

「ファーツ、君達の種族の大人…たぶん男の人達って、“獣型”になった時、君とちょっと雰囲気違ったりしない?」

 半ば確信しているナァセは“たてがみ”を想起させるような手振りを添えて訊く。

「ちょっとじゃないよ。父さんとか大人の男の人たちは、りっぱはタテガミがあった。」

 はっきりと憶えているようで、ファーツは即答した。

「“ネコ科”には変わりないじゃんか…」

 レンディーネは不満げにぼそっと漏らす。

「ほう、『獅子』の人獣ということか…」

 レヴは少し関心を見せた。

「そっか、『ローウェンハルト』…だからナァセ、他人事とは思えなくて?」

「うん・まぁ、大きな動機の1つではある。」

 “獅子”から思い当たったエレアノーラの指摘を、ナァセは認めた。

「だから、ぇ…と、どこまで話したっけ?」

「いや、話は概ね解った。この子等の()()()()次第でもあるが、今ならまだ来年度に間に合おう。校長へは、儂から話しておく。」

 いつもながら祖父の察しの良さに、ナァセは感動すら覚える。

「おじぃ様、ありがとう。よろしくお願いします。」

「ふむ。して、この子等が“人獣族”である事は、校長には話しても良いとは思うが、()()()()は如何する?曲芸団から“連れ出した”ことも、正直に話すか?」

「ん~…()()()()()もあるし、たぶん大目に見て下さるとは思うけど、とりあえず『故あって預かってる』くらいでいいんじゃない?で、詳しく訊かれたら話してもいいと思う。」

「“アシェの件”て?」

 レンディーネはそこを聞き流せなかった。当人に目配せで確認してから、ナァセは“誘拐事件”を手短に話した。

「…アシェには悪いけど、それがうちの妹じゃなかったのが幸いだな、()()()()()()…」

 話を聞いたノァルカッサは、不穏な笑みを浮かべる。

「いいよ別に。あたしだって、ミーリィじゃなくてよかったって思うから。でも、なんで気付かれなかったんだろ?」

「……ミーリィのやつ、最近“被り物”にハマってるみたいだからな。今日なんかは、イヌみたいな“たれ耳”の付いた帽子を被ってたな。」

「マジでヤバイよ、それ。可愛さ何割増しだよ…」

「だろ?」

 エレアノーラのややアブない反応に、兄は同調した。

「うん・まぁ、そういうワケで、校長先生は割とすんなり受け入れて下さるんじゃないかと。」

 話が脱線しかけたので、ナァセは軌道修正をかけた。

「ただ、学舎の中でも外でも、“人獣族”である事をいずれは公にするとしても…2~3年は待つべき、かな。」

 ナァセの提案をレヴは“是”とするも、

「なんで?“秘密”を抱えた生活って結構窮屈だし、“いずれ”と言わず最初からでもいいんじゃない?」

エレアノーラは思った事を率直に述べるが、

「アヴァナッドの連中に、二人がここにいるのを知られるのは好ましくないでしょ。」

「…あー、そか…」

ナァセの述べた理由に得心する。

「それを言うなら、既に騒ぎになってるんじゃないか?二人がいなくなって。」

「んーどうかな…二人がいた部屋に通じる通路の入り口に、番人1人と番犬1匹いたけど…夜の間とか、誰か見回りに来たりしてた?」

 エルセネの指摘を受け、ナァセはファーツに問う。

「寝てる間のことはわかんないけど、朝・食べる物持ってきて、後は出番の時とで、1日3回…ほかはほとんど来ないよ。」

「てことは、朝まで気付かれない可能性も十分あるんだ…」

 エレアノーラはちょっと呆れる。

「ちょっと“細工”してきたから、『誰かが連れ出した』っていう可能性()()も考えてくれるかも。」

「…どゆコト?」

 エレアノーラのみならず、皆がそれに興味を持った。

「二人から外した手枷・足枷、施錠して置いてきたの。『影飛び』で、わたしが出入りした形跡も無いし。」

「なるほど。二人が煙の如く忽然と姿を消した、とも思えるか。」

「…あ~、アレって、そういう…」

 レヴの言葉を聞いて、ファーツの疑問も解消された。

「そ。だから、一応は探すかもしれないけど、諦めも早いんじゃないかと思う。」

「ん~でもそれなら、アイツら今月中にはアィエンダーラから出てくし、2~3年も黙ってる必要、無くない?」

 エレアノーラは改めてその点を気にするが、

「噂って、割と早く広まるよ。陸路でも早ければ次の滞在地で追いついちゃうだろうし、海路なら先回りもしちゃう。だから、少なくとも連中が大陸の東域にいるうちは、“アィエンダーラに人獣族の兄妹がいる”なんて噂、立たない方がいい。」

ナァセの説明に、エレアノーラは改めて納得した。

「あとは、君達自身だね。変身したい時に変身できる、と思っていいかな?」

 ナァセの質問に、ファーツは少し考える。

「…そのつもりは無いのにしちゃうコトもある、のかな?」

「…本気でケンカする時とか、勝手になっちゃった…かも…」

「“闘争本能”か、単に“ブチ切れたから”か…てトコ?」

「まぁ、“自制心”は鍛える必要がある、という事じゃな。」

 レヴが結論を出した。

「ここまで、勝手に話・進めちゃってるけど、二人とも、そんな感じでいい?」

「…よくわかんないけど、これからここに住んで、ここで色々教えてもらう、ってコトだよね?」

「うん、しばらくはこの家(ここ)で、だね。色んな人達と一緒に勉強したりする《学舎》っていう所があって、早ければ来年から、二人ともそこで色々学ぶことになる。」

「マナビヤ…ん~何でもいいけど、それ、オレだけでいいよ。ミーツィのことはオレが守るから、ミーツィはあぶないこととか、しなくていい。」

 (ファーツ)は少し胸を張ってそう主張するが、

「お兄ちゃんとして立派な心構えだとは思うけど、それは君が決める事じゃないよ。ミーツィにも、選ぶ権利がある。」

ナァセは即座に咎め、

「ミーツィは、どうしたい?」

(ミーツィ)に訊く。

「…ん、おにぃちゃんがまもってくれるのは、うれしい。でも、おにぃちゃんだけ()()()のはヤだから、ミーツィもつよくなりたい。」

 ミーツィの真っ直ぐな瞳を受け、ナァセは優しく少女の頬を撫でた。

「休みが明けたら特に昼間は構えなくなるけど、休みの間にできる限り、基礎からしっかり、わたしが教えて、鍛えてあげる。」

「…お姉ちゃんが?そっちのお兄ちゃんたちじゃなくて?」

 突然、ファーツが不満げに疑問を漏らした。唐突に指差されて、ノァルカッサは面白そうに笑みを浮かべ、オストロクは少し戸惑いを見せる。

「何かフシギな力があるのはわかったけど、ケンカが強そうには見えない。俺、1コ2コ上の子にもケンカで負けたことないんだ。」

 ファーツはまた胸を張る。

「試してみる?ラゲルさんにいっぱい食べさせてもらったから、元気はあるよね?」

「ちょっナァセ―」

 レンディーネが止めようとするのを、レヴが手で制した。

「思い切りやれた方がいいから、外・出ようか。」

 特に怒っているわけでもなく、ただ穏やかに微笑んで、ナァセはファーツを促し外に出る。

 空は既に薄暗くなり始めていたので、ルッキアに照らしてもらい、

「ホントに本気を出したかったら、変身してもいいよ。大丈夫、君の攻撃は絶対に当たらないから。」

穏やかに微笑んだまま、ナァセは態と挑発した。

 ファーツは見事に乗り、獣型になってナァセに跳びかかるが、宣言通り掠りもしない。攻撃を何度もひらりと躱され続けて苛立ってきたファーツは、両前肢の爪を剥き出しにしてナァセに突進する。

 1秒にも満たないその間に、ナァセが目を閉じていることに、ファーツは気付いた。次の瞬間、ナァセが視界から消え、かと思うと腹部に重めの衝撃を受けた。

 そして、気付けば投げられて、地面から空を見上げていた。

 姿を人型に戻し、仰向けで空を見つめたまま動かないファーツの腹の上に、

「ぅえ゙っ⁉」

ナァセは腰を下ろした。

「ん、意識はあるね。」

「ぃやいや、他にも方法はあるでしょ…」

 レンディーネを始め、大半が呆れ返った。

「まず最初の課題、『動きは小さく的確に』。動きが大きいとその分体力を使うし、相手に読まれやすい。相手の攻撃を避ける時も、小さく躱して相手からなるべく離れなければ、隙を見て反撃もしやすいし、相手の勢いを利用すれば、こちらは少しの力だけで済むことも多い。」

「…そんな戦い方―」

「カッコわるい?でも実際の“結果”は、この通り。」

 相変わらずファーツの腹の上に座っているという構図を、ナァセは再認識させる。

「それに、本当に強い人って、動きに無駄が無いの。それは人獣族だって同じなんじゃない?」

「…はっきりはおぼえてないけど、なんとなく…」

 素直には認めないが、理解はしたようなので、ナァセはファーツから退()き、手を差し出して彼を立たせる。

「せっかくキレイにしてあげたのに、また汚れちゃったね君は。夕飯前に、お風呂行くよ。」

「は⁉」

 唐突すぎて、ファーツはまた頭が追いつかない。

「おふろ、ミーツィも行くぅ!」

 聞いたことはあるのか、目を輝かせるミーツィだが、

「ん~~~、ミーツィは汚れてないから、また後でね。」

ナァセは遠慮を求めた。

「ミーツィはごはんの準備、お手伝いしよーか。」

 エレアノーラが別の興味を差し出すと乗ってくれたので、手を繋いで連れて行きつつ、ナァセに目配せした。


「なんだよ、さっきの『花水浴(あれ)』でいいじゃん!」

 風呂場に来てもまだごねるファーツだが、

「あれは緊急用。お風呂があるなら、お風呂に入る。」

当然ナァセは譲らない。

「ほら、脱いで。」

「…?」

 何故かキョトンとするファーツ。

「…ぇ、もしかして裸になるの、恥ずかしい?」

「…ああ、こういうコト?」

 理解したらしいファーツは、“服”と思われていたモノを“体毛”に変えた。

「…ぇ、そーゆーコト?…て、そうか、さっきも()()だったね。その辺の事も色々聞きたいけど、とりあえず…毛の長さとかって調整できる?できれば首から下は肌が見えるようにしてほしいんだけど。」

 袖の無い服を着ているナァセは、自身の腕を“類人猿”のような姿のファーツに見せながら訊いた。

「ぇ…」

 少年は躊躇いを見せる。

「さっきのミーツィの言葉が気になったの…見せたくない?」

 少し間を置き、意を決したファーツは首から下の体毛を短くしていく。

「…思ったより酷いね…」

 露になったのは肌ばかりでなく、鞭打ちと思しき無数の傷痕。特に背中は、素肌の見える箇所は僅かしかない。真新しいものが何本かある。

「今日も、あの後、打たれたんだね…でも、しばらくぶりみたいだけど…どうして?」

 再びしばしの沈黙の後、ファーツは口を開く。

「…今日の1回目の時、すごくヤな言葉が聞こえたんだ。何て言われたのか思い出したくもないけど…2回目の時も、また言われるんじゃないかと思って…」

「それで、すぐには変身しなかったんだね。」

 当時を思い出して、ナァセが続けた。

「でも、君の事を何一つ知らない、何処の誰かも分からない人の言葉なんて、気にするだけ損だよ。そこに〈真実〉は無いんだから。」

「…そりゃ、そうかもしれないけど…」

「わたしも君の事はまだそんなに知らないけど、今・知る限りでは、君は妹思いの立派なお兄ちゃんで、強い男。それは確かだよ。」

「…さっきは“ダメなこと”みたいに言ってた…」

「ん?…あぁ、あれは、ミーツィに選ばせてあげたかっただけ。別に否定はしてないよ。ミーツィも強くなった方がいいけど、君が“お兄ちゃん”をやめる必要は無い。」

 その言葉を受けてファーツは顔が熱くなるのを感じ、咄嗟に顔を背けて湯船の方を見た。

 3つある中で最も湯気の濃いのに飛び込むと、

「~~~ぁっっつ!!」

熱さに当然の反応を見せるが、出てはこない。

「そこ、ほぼ源泉だから、まともに入れるの、おじぃ様くらいだよ。あと…」

 ナァセはファーツが声を堪えているのを見て、

「傷、最初はメチャクチャ沁みるでしょ。」

涙目になっているのも確認して、呆れる。

「そっちは池から引いてる水だから、気が済んだら冷ましてきなよ。」

 隣にある小さな浴槽を指し、ナァセが風呂場を出ようとすると、

「ナァ姉ちゃん!」

ファーツが呼び止め、

「これから、よろしくおねがいします!」

熱湯に浸かったまま、深々と頭を下げる。

「うん、よろしく。」

 初めての呼ばれ方に心地好さを覚えつつ、ナァセは退室した。


               ◇


 翌朝。中央公園(ミーディオ)の大天幕では異変が発覚していた。

「ちゃんと見張ってたんだろうな⁉」

 団長は、夜間の番をしていた2人の男を問い質す。

「いつも通りスよ。朝まで、誰一人ここを()()()()()()()。」

 一人が応え、もう一人はただ同調した。

「お前達に気付かれることなく、何者かが侵入して連れ出した、とでも言うのか?」

 “そんな馬鹿げた話”と言いたげな団長だが、「そんな事言われても」と二人は身振りで応える。

「煙のように消えてしまった、と考えてもおかしくはないな。」

 裏方の責任者らしき男が、部屋の方を見ながらそんな事を宣う。

「何をふざけた事を―」

「地面は(なら)されたままで、足跡1つ無い。檻も鍵が掛けられたまま。何より、全部の枷が施錠状態でその場に転がっている…“消えてしまった”と考える方が妥当だと思うけどな…」

「“どのようにいなくなったか”など、どうでもいい!()()()()()が大問題なんだ!」

「…まぁ確かに。」

 “方法”も十分に問題ではあるはずだが、そこは折れる。

「一巡したら、()()()に“獅子の人獣族”を献上する約束なのだ…5年の間に再び手配するなど、殆ど不可能だぞ…」

 訪れ得る“未来”に、団長は頭を抱える。

「“大目玉”を失くして、大目玉を頂戴するってか、イヒヒッ!」

「やかましいわ!!」

 大道化の冗談に、団長はブチキレた。


               ◇


 その頃、当の兄妹はナァセ達と一緒に、デュッカ高地にあるエルセネの実家に向かっていた。

 夕刻、けたたましく犬が吠える中、エルセネの両親・ファレクとイェルバに、ナァセは兄妹を紹介した。

「その“理由(ワケ)あって”っていうのは、聞いてもいい話?」

 ファレクは早速そこに飛びつく。

「いいですけど…食べながらでいいですか?」

 いい匂いが漂っていることも手伝って、ナァセは腹を鳴らして訴えた。

「あらあら、そうよね。さ、みんな入って。ツァード、いつまで吠えてるの?」

「てゆうか、何に吠えてる?」

 イェルバに咎められ、ファレクに頭を押さえられたツァードは吠えるのは止めたが、唸る。

「流石は猟犬…わかるのかな?」

 ナァセは兄妹の方を見る。

「ぅ~…なかよくしたいのに…ちょっとコワイ…」

 ミーツィは兄の背後に隠れてしまい、

「ミーツィを怖がらせたな…」

ファーツはツァードを睨みつけ、変身して威嚇した。

 猟犬は無論のこと、夫妻も驚きを隠せない。

「コラ、ファーツ。無暗に変身しない!」

 すぐ横に立つナァセは拳でファーツの頭を打つ。

「に゙ゃっっ⁉」

 ちょっと情けない声を上げて、ファーツは姿を戻した。

「ナァセがグーでいった…」

「明らかにグーだな。」

「容赦なくグーだねぇ。」

 アーシェカ、エルセネ、エレアノーラも、珍しい光景に寧ろ感心する。

「いい音したね。ナァねえちゃん、へーき?」

「ミーツィ、心配するトコちがうだろ。」

 兄は妹に文句を言うが、

「ファーツ、君、意外と石頭…」

ナァセは拳を摩る。

「フム。これはじっくりと話を聞きたいね。」

 ファレクはすっかり興味津々だ。

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