序章
なるべく“日本語表現”にこだわった文章を心掛けており、カタカナ語(固有名詞を除く)や最近の言葉などはあまり使っておりませんので、多少読みにくい点もあるかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。
なお、この物語は、法律・法令に反する行為を容認・奨励するものではありません。また、歴史上の出来事や人物・宗教等に幾らか似たような描写等もありますが、あくまで“参考程度”であって、実在のものとは一切関係ありません。
⋯暗い⋯
ちがう、目をとじてるんだ。でも、いい。まぶたが重たいし、今は闇の安らぎに身を任せていたい。
⋯なんだろう、まぶしい⋯
⋯まぶしい?目をとじてるのに⋯?でも、なんだかとてもあたたかい。
「⋯だれ?」
まなざしを感じた気がして、だれかがいる気がして、なんとなく訊いてみた。自分でもおどろくくらい、弱々しい声だった。
「生きてる⋯けど、手当てしないと⋯」
娘を庇うように抱きながら砂浜に横たわる母親の腕から、女は優しく丁寧に少女を抱き上げて、連れの男の敷いた上着の上に寝かせて、処置を施す。
「生きてんのか、その傷で⋯」
後から来た初老の男が、処置されている少女の傷を見て半ば驚く。決して浅くはなく、下手をすれば致命傷でもあり得るような傷だ。
「何でもいいが、あまり長居はしない方がいい。」
少し離れた所ではためく襲撃者の“忘れ物”に、彼は不安を覚えた。
翼を持つ鳥頭獣肢の聖獣⋯濃紅地に金の紋章は、“その国”の王家の旗。砂浜の中ほどに立てられたそれは、持ち主は疾うに退去したにも拘わらず、甚だ周囲を威圧する。
「心配しすぎだって。そもそも、オレ達がここに着いた頃には“あの国”の船影すら視えなかったって言っただろ。」
先刻から空を見上げるように立っていた青年が、空から降りてきた鷹を腕に迎えながら、溜め息混じりの言葉だけを初老の男に向けた。腕に留まった鷹に、褒美とばかりに餌をやり、その頬を愛でる。
「念のために周囲の島も視てみたけど、奴等の姿は無いよ。それに、襲撃されたのも、ここだけだね。」
「⋯だろうな。」
報告には特に興味を示さず、男は手際よく処置される少女をただ見守る。
「姪御は連れて帰るとして、妹御や義弟御、ご両親はどうするんだ?」
処置を終え、医具を片付けながら、女は訊ねた。男は少女の母、つまりは彼の妹の息無き骸軀を抱き上げ、森の向こうに立ち上る黒煙の方を見つめる。
「正式に火葬してやりたいところだが⋯せめて土葬するさ。」
姪を女に任せ、自身は妹を抱えたまま、男は森へと向かった。
小さな島の小さな村の惨事など意に介さぬと言わんばかりに、陽は高々と照る。
ちなみに、タイトルの読みは『昊天の射手が矯める〜』です。




