第34話 優太_千早の余計なお世話
廊下の向こう側から俺を見つけた千早が、ニヤニヤ笑いを隠し切れない様子で足早に近づいてくる。俺は今出たばかりのトイレに戻ろうと踵を返したが、すぐに肩を組まれた。
「まぁまぁ、待ちたまえよ。コーヒーでも一杯いかが?」
そういうと、廊下の端に置いてある自販機まで俺を引っ張っていく。それぞれ缶コーヒーを買うと、プルタブを開けながら千早が聞いてきた。
「で、どうだった?」
「…なにが?」
俺は素知らぬ顔をしてコーヒーを一口飲む。いつもより苦い感じがする。
「いやいや、行ってきたんでしょ。風俗」
おやおや、照れ隠しですかね、といった風に訪ねてくる千早がちょっとうざい。
「まだ、行ってない」
ぶすっとして答えた俺に千早が、え、なんで?と尋ねてくる。
「…まだどのお店にするか迷ってる」
そう言うと千早は盛大にため息をついた。
「どんだけ吟味してるの?もう1か月くらい経ってない?」
「どれがいいのか迷っているんだよ」
あのな、と千早は子供を元気づけるように俺の肩を叩いた。
「迷いだしたらキリがないから。気になった子をとりあえず指名しとけ。大和をみてみろ。あいつピンときたらすぐに動くやつだぞ」
「大和は本能に忠実すぎ。それより大和には言うなよ。うるさいから」
「はいはい」
やれやれといったジェスチャーをしている千早を横目に缶コーヒーを一気にあおった。するとエレベーターから降りてきた圭介がこちらに気づいて手を挙げながら近づいてくる。
「おつかれ。なんでそんなにニヤニヤしてるの?」
千早に目をやると、口元で手を隠しながら千早が言った。
「優太が大人の階段登ってるんだよ」
ホント、コイツ、マジで余計なお世話だ。




