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【異世界スゴロク】止まったマスで転移する呪いの冒険譚 ~ゴールしなければ生き残れない~  作者: 幸運な黒猫
転移の秘密

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第71話・さよなら、ベルノ

 鈴姫(べる)さんは、(あおい)さんとベルノを連れて転移した。スマホに[二人で協力してクリアしてください]と表示され、葵さんがルーレットに選ばれたためだった。


 ……どうやら彼女だけ()()()()()/()()()()が発動し、50%の確率で引き当てられたらしい。



 ――そして、十分ほどで三人は戻って来た。わずか五日間の冒険だったようだ。


「もう、葵ちゃんメチャクチャなんだもん」

「だって、あの男がちんたらしてるのが悪いんじゃない!」


 帰ってくる早々、言い合いをする二人。とは言えケンカではなく、仲良くグチを言い合っているように感じられた。


「なにがあったの?」

「葵ちゃんが選んだ【君はジュラノサウルス】って、ラブコメだったのよ」

「マジっスか~。葵ちんがラブコメ二連発って、世紀末っスね」


 ……直後、バチンッと響く無言の蹴りが、(かなめ)の尻にヒットしていました。


 二人が転移したのは、化石発掘が趣味の女子高生と、その街に引っ越してきた男子高生のボーイ・ミーツ・ガール物語だった。


「消極的な男の子が、意を決して告白するまでの手伝いミッションだったんだけど。葵ちゃんってばいきなり二人を校舎裏に呼びだしてさ」


 ……もうこの時点で不安しかありません。


「並んで座らせたと思ったら、『好きなの? どうなの? 告白するの? しないの? ハッキリしなさい、このバカちんがぁ~』って」

「本当にメチャクチャだな」

「それで上手くいったのが、不思議でしょうがないわよ」

「え~……」


 葵さん、高校生の甘酸っぱくも繊細な心のやり取りを、力技でくっつけてしまったのか。


「男が何日もウジウジしてるの見せられたら、誰だってそうするよね?」

「しませんって。むしろ男の気持ちの方がよくわかります」


 ちなみに、今回ベルノはまったく出番がなく、ずっと猫のままだったそうだ。おかげでストレスが溜まってしまい、今は颯太をキャットタワーにしてあそんでいた。


「ま、なんにしても残りはふたつ。どんどん行こう!」


 妙にテンションが上がっている葵さん。きっと、もうすぐベルノを家族の元に帰せるのが嬉しいのだと思う。天真爛漫なこの子と離れるのはちょっと寂しくはあるけど、やはり親と一緒にいるのが一番だ。

 

「残ったのは二冊だけど……葵さん、どっちがいい?」


 その瞬間、みんなの目が僕に刺さった。今までことごとく”外れを引き続けた”彼女にゆだねるのか? と。


「でも、ここまで外れ続きだったのだから、そろそろ当たりを引くような気がするんだけど?」

水音(みなと)くんは、絶対にギャンブルしちゃいけない人だね」


 ……どういう意味なのだろう?


「みんなちょっとまって欲しいっス。まだ時間があるから、スモアパーティーでもどうっスか?」

「要さ、アンタなにを言ってるかわかってる? ホントただのうぇいバカだと思ったら……」


「――葵ちゃん、やろうよ」


 葵さんの言葉をさえぎったのは、意外にも鈴姫さんだった。これまで周りの人を立てて、人の話に割り込む事なんてなかったのに。これには颯太も驚き、目を丸くして女性陣二人を見ていた。


「なんでよ。早く帰してあげようよ」

「ベルノちゃんにとって、次が最期の冒険かもしれないでしょ? そうしたらこれでお別れだよ?」


 僕は……いや、鈴姫さん以外は、誰も要の真意を読み取れていなかった。彼の優しさからでた言葉は、静かに胸に染み入り、みんなの心を静かにつなぐ。


 もちろん誰も反対はない。葵さんも『そっか……そうだよね』と伏せ目がちにつぶやいていた。


 そして……


「だから(あお)ちん、火力強すぎだって言ってるじゃないっスか」

「うっさいわね、アンタがもうちょっと離せばいいんじゃない」

「え~、マシュマロだした瞬間に黒コゲなんスよ!」


 二人の足元には、残念な黒い塊がいくつもあった。


「大きい線香花火の燃えカスみたいだ」

「仲がいいのか悪いのかわからないわね」

「でも、美味しいですニャ!」


 焼きマシュマロをチョコレートとビスケットで挟んだお菓子のスモア。ベルノは満面の笑みを振りまきながら、際限なくサクサクもきゅもきゅと食べていた。


 ……しかしこれ、メチャクチャ甘いな。





「じゃ、行くっスよ!」


 結局どちらの世界に転移するかは、運まかせにする事にした。つまり、二冊とも持って転移するという方法だ。


「みんな、ありがとですニャ!」


 ベルノは頬を赤らめて、みんなに抱きついた。精一杯の感謝の気持ちなのだろう。


「ベルノ、元気でね」

「またどこかで逢えるといいね、ベルノちゃん」

「自分も、年の離れた妹みたいで嬉しかったです」

「僕らも楽しかったよ……」


 突然、鈴姫さんが連れてきた猫耳幼女。最初は『厄介事か?』と思いもしたが、一緒に異世界転移し、苦楽を共にするうちに、本当に頼れる仲間だとわかった。


 ……そして、可愛い。


 もちろん、みんなもそれぞれ思い出があって、名残惜しい気持ちが溢れでている。


 でも、そろそろ時間だ。残り二つの候補のうち、どちらかがベルノの世界。早く帰してあげたいけど、今回ばかりは外れて欲しい気持ちもある。


「要、ちゃんと……」

「わかってるっス。みんなの分も頑張ってくるっスよ」


 要はルーレットに手を伸ばして弾くと、ジジジ……と回り始めた。これが止まったらサヨナラだ。


「さよなら、ベルノ。元気でね!」

「ベルノちゃん、私たちの事を忘れないでね!」

「うう……」


 涙を浮かべる葵さんと鈴姫さん。颯太に至っては男泣きを見せ、言葉がでないようだ。だけど、それは僕も同じ。なにを言えばいいのかわからなくて……


「ベルノぉ〜〜」


 ……最後は名前を呼ぶだけしかできなかった。


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