第20話 【個別加護と、それぞれの戦い】
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村へ戻ったレオルたちは、ダンジョン攻略の成果を仲間に報告しながら、次なる準備を整え始めていた。
広場に集まった面々を前に、レオルは一歩前へ出る。
「みんな。これから“加護”を一人ひとりに付与する。これは、俺の新しいスキル[個別加護]の力だ。
みんなの長所をさらに伸ばす形で、俺の力を流し込む」
レオルの声に、全員の表情が引き締まる。
「……じゃあ、私からお願いするわ」
最初に名乗り出たのは、ミルだった。
彼女は手に持った魔導書を握りしめ、真っ直ぐにレオルを見る。
「私はまだ戦いに慣れてないけど、知識ではみんなを支えたい。加護でその力を増幅できたら……」
「わかった。ミルには”知識の加護”を!」
レオルの掌が光り、魔力の帯がミルの胸元へ吸い込まれる。
【加護付与完了•ミル】
【加護[叡智の泉]•知識探査力の上昇、未解読文字の自動理解、魔導計算の高速化】
「うわっ……頭の中がすごく整理されてる感じ。これ、やばいわ……」
ミルの瞳がキラキラと輝き、周囲から歓声が上がる。
「次、俺にも頼むっ!」
バンザイが二刀を構え、どこか誇らしげに胸を張った。
「戦って、食わせて、守る! これが俺の信条だ!」
「じゃあ君には“武と食の加護”を」
レオルの手が再び輝き、バンザイの両腕と腰元へと加護の光が流れる。
【加護付与完了•バンザイ】
【加護[双牙の職人]•剣技の動作効率向上、料理の素材解析、自動包丁術】
「うおおおおっ!? 何これ!? 包丁が勝手に動いてやがる! すげえ!」
すでに持っていた包丁が宙に浮いて、ネギを刻み始めた。
「……これ、戦闘よりやばくない?」
セラが小声で笑い、続けて一歩前へ出る。
「私は……氷精族としての誇りがある。
でも、いざって時に、守れなかったら悔しいの。
だから、私にも力をちょうだい」
「了解。セラには“氷結の加護”を」
氷の羽が淡く光り、彼女の体に氷の粒子が流れ込む。
【加護付与完了•セラ】
【加護[氷精の鎧]•魔力循環による氷結生成強化、周囲温度調整、霜の盾展開】
「わっ……身体が軽くなって、魔力が回りやすくなってる」
セラが嬉しそうに笑った。その笑顔に、レオルの心も暖かくなる。
「じゃあ、私もいいかしら」
次に出てきたのはエルフィナ。
彼女はすでに弓を構え、魔力の流れを感じ取る準備ができている。
「君には“精密射撃の加護”を。
狙いは外さない、最強の狩人になってくれ」
【加護付与完了•エルフィナ】
【加護[魔弓の眼]•照準精度強化、魔力付与弾丸の生成、弓射程の拡張】
「これで、どんな敵でも正確に討ち抜ける……ありがとう、レオル」
エルフィナの頬が少し赤く染まったのを、レオルは見逃さなかった。
「最後は……ルーナだな」
「べ、別に期待してるわけじゃないわよ! ただ、他のみんながもらってるからってだけで!」
ツンとそっぽを向くルーナ。だが、耳はしっかりレオルの声を待っていた。
「君には“影の加護”を。裏の世界で戦ってきた力を、仲間を守るために使ってくれ」
【加護付与完了•ルーナ】
【加護「月影の刃]•隠密行動強化、暗殺技術向上、影縫い術の使用】
「……っ。ありがとう。別に、嬉しくなんか……
あるけどっっ!」
ツンデレ炸裂に、皆が大笑いした。
加護の儀式を終えた頃には、陽は傾き始め、村に温かい光が差していた。
「レオル!」
ミルが声をかける。
「これで私たち、また一歩先へ行けるわね。
加護ってのは“みんなの力を信じる絆”なのね」
「そうだな。これからが本番だ」
空を見上げるレオルの瞳は、まだ見ぬ敵と試練を見据えていた。
続