アイディアを出してみた
「一口に改造とはいっても色々あると思う。パワーを上げたり、スピードを速くしたり、はたまた丈夫にする、軽くする、目的のために必要な機能をつけるなんて言うのもいいだろう。 シュウマツさんは案はある?」
改造したいと言うのなら力を貸すのはやぶさかではない僕は、語る。
だがシュウマツさんは今のところ明確にやりたいことがあるわけではないようだった。
「それはやはり持ち主に聞いてみないと始まらないだろう? 君はどんな改造がお好みかな?」
そうして突然振られたもちぬしは、盛大に言い淀んでいた。
「え? ええっと魔法を使ってやりたいこと?……うーん……そうだなぁ」
困惑顔のフーさんを見て、そんないきなり振られても咄嗟に反応はできないんじゃないかなと僕は思った。
「それって結構無茶ぶりなんじゃない? スペーススーツって言うのは高度な技術力の固まりだよ? いきなりいい改造のアイディア出せなんて無茶ぶりしたら、開発者の方々も大激怒じゃない?」
「ふむ。では君はどう思うのだね?」
シュウマツさんは、改めて僕に問うが、修理にプラスアルファというとなかなか難しい。
「……そうだなぁ。今後デブリ拾いなんかも頼むだろうから、アームを大きくしたり、けん引するワイヤーなんかをもう少し増設してみるとか?」
手堅く言うとそんなところだろうか?
機能を拡張して、作業を効率化することこそアウターの意義だ。
改良と言えばこんなところだろうと僕が言うとシュウマツさんは難色を示した。
「ふーむ……せっかくなら、もう少し遊びを入れてはどうかと思う。私ならそうだな……一部に私の世界の金属を使ってみるなんて言うのはどうかな? 今より軽く、丈夫に出来るし、私の世界の防具の中には自己再生するモノだってあった。私ならそれを君達の機体で再現することだって可能だとも」
「じ、自己再生ってそりゃすごいなぁ。遊びか……なら、でっかいバーニアとかつけてみる?」
「いいね。ならば私は、先ほどの翻訳をより広域に発信する補助魔法陣も組み込んでみるかな?」
あっという間に、なかなか熱い意見が飛び出した。
もし出来るならそれはとても興味深い。
なるほど、おとぎ話に出てくる伝説の武器みたいな効果を、よりにもよってロボットに搭載できるということか。
ある意味浪漫だと、僕はその面白発展性に戦慄していた。
そう言うことなら確かに、フーさんに意見を聞いた方が面白くなりそうだ。
むしろ、僕の凝り固まった頭の中よりも、より柔軟な発想が飛び出した方がいい。
僕も納得し、自然とフーさんに視線が向く。
フーさんは何か考え込んでいたが、さっと手を上げて渾身の要望を口にした。
「じゃあ、私! 宇宙を自由に飛んでみたい! ヘルメットなしで!」
「「ええ?」」
一瞬意味が分からなくて、僕は混乱した。
だって引き算にもほどがあるって話である。
「そ、それってアウターに乗りたくないとかそう言うこと?」
「違うよ。インナーのヘルメットも全部外して宇宙を飛びたいってこと! だって邪魔でしょあれ?」
「お、おっそろしいことをいう子だなぁ」
「そうかな? 一度綺麗な視界で宇宙を飛んでみたいって思ったことない?」
アウターどころかインナーまで脱いで宇宙遊泳を楽しみたいと?
まぁ言っていることはわかるが、インナーなしでは当然、人間は宇宙空間で生存できない。
うっかり事故でちょっとした亀裂からアババな感じになった色々も見たことがある僕としてはなんとも言えなかった。
しかしフーさんは自分の名案に目を輝かせて力説した。
「せっかく魔法を体験できるんだから、普段できないことしたくない? 肌でダークマターを感じたい!」
「おおっふ……」
ダークマターを感じる前に、宇宙放射線とかにやられそうな行為に背筋が寒くなる。
いくらなんでも危険なのではとシュウマツさんの様子を窺うと、低い光量で明滅していたシュウマツさんは、とんでもなく楽しそうに言った。
「もちろん可能だとも」