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モンスターテイマー、魔法少女に託す

 草原で衝突する冒険者達とならず者ども。

 前線を走るハリスとリンゴは、たちまちゾンビに囲まれる。


『良くもやりやがったな、てめえら!』


 背中合わせの二人に罵声を浴びせるゾンビたち。

 しかしハリスは容赦なくリベイルケインを振り上げる。


 伸縮する硬鞭を円形に回転させ、敵を吹き飛ばす。

 負けじとリンゴも杖を上に向けて詠唱する。


「『シューティング・ライトレイ!』」


 杖から花火のように打ち上り、無数の隕石がごとく降り注ぐ光。

 巨大な光弾に飲み込まれたゾンビ達は、感電したかのように身体を痙攣させ、地面に倒れる。


 それを見るや否や、ハリスは他の冒険者に叫ぶ。


「回収部隊! たのむ!」


 ハリスの声に誘われ、大勢の冒険者が彼等の下へ現れる。

 すると彼等は倒れたならず者たちを担ぎ上げ、戦うことなく退散しようとする。


 彼等の行動を怪しみ、道を塞ごうとするゾンビ達。

 しかしその攻撃は、ハリス達により阻まれる。


「お前達の相手は俺だ」


「ここから先へは行かせません!」


 二人の言葉にたじろぎつつ、それでも攻撃する荒くれ者たち。

 数では圧倒的に有利な彼等を、ハリス達は二人で制する。


 彼等のような戦いは、草原のあちこちで巻き起こっていた。

 ためらいなくゾンビと化した者たちを倒し、倒れた彼等を回収部隊と呼ばれた戦士達が運んでいく。


 普段人間と滅多に戦わない冒険者たちは、自分たちを奮い立たせるように叫ぶ。


「敵はほぼ不死だ! こちらも殺す気で戦わないと敵わない!」


「回収部隊の増員を頼む!」


 声が飛び交い、ゾンビと冒険者とが入り乱れる戦場。

 そんな中、別の冒険者と戦っていたかつてのハリスの仲間たちは、視界にちらりと彼のうしろ姿を捉える。


 背後ががら空きな彼の背中に、ニヤリと笑うリーダー。

 彼は仲間達と頷き合い、戦っていた冒険者を放置して走りだす。


「待て、どこへ行く!?」


 取り残され、当然の反応をする冒険者。

 彼の言葉などつゆ知らず、三人はがら空きのハリスの背中を狙い、一気に距離を詰めていく。


『死ねやァ!』


 リーダー達の武器がほぼ同時に振り下ろされる。

 ハリスの背中に迫る殺意に満ちた攻撃。


 しかし彼は振り向くことなく、リベイルケインで同時に受け止める。


「ワンパターンだな、相変わらず」


 今まで戦っていたゾンビを片付け、彼は三人へ身を翻す。

 すると三人は正三角形を描くように散開し、ハリスを囲む。


『あの街ではよくも俺達をコケにしてくれたなあ!』


『おかげで仕事も無くなって、ほぼ盗賊みてえな生活をさせられたんだ!』


 恨みつらみを漏らし、武器を振り上げハリスへ迫る。

 彼はそんな三人を、硬鞭片手にいなしていく。


 当然ながらリーダー達に対し、彼は一切苦戦を強いられることはない。

 そんな中で、ハリスは三人の言葉に返答する。


「そもそも先に手を出したのはお前達だろう」


『テメェんトコのガキが俺達の問題に首突っ込んで来たんだろうが!』


「俺が言っているのはモノの話だ。アイツは恩人だからな」


 彼等の攻撃を余裕の表情でかわすハリス。

 大男にスキを見つけた彼は、硬鞭を敵の腹部に突き入れながら続ける。


「まあおかげで、俺は恩人をお前達のような悪漢から解放できたのだがな」


『グ、オォ……ッ!』


 思いきり突かれた腹部を抑え、地面に膝をつく大男。

 直後にハリスが睨むと、彼等の攻撃が一瞬止まる。


 冷ややかな視線をで二人を見下ろし、ゆっくり歩みよるハリス。

 だが次の瞬間、ハリスの背後に巨大な影が横切り、冒険者とならず者が衝突戦場に突風が走る。


 影の正体は、空を乱舞しながら戦闘を続ける暗黒龍と黄金龍であった。


「レナ……!」


 気づいたハリスが振りかえり、彼女達の軌道を見る。

 二体の龍は一進一退の攻防を繰り返しつつ、無機質に暴れるファブニルに引っ張られる形で、世界樹のほうへ飛んでいく。


(まだ冒険者の撤退とゾンビの保護・・・・・・は終わっていないが……)


 意味深に思考を回しつつ、龍を見つめるハリス。

 表情を顰める彼の背で、体勢を立て直した大男とリーダー、無精髭の男が集まり、彼を見る。


(チッ! 俺達との因縁より龍が優先かよッ!)


(余裕綽々で、どこまでも気に食わねぇ奴だ……!)


(許さねぇ、許さねぇぞ!)


 三人は私怨を胸に宿し、武器を握りしめて立ち上がる。


 状況に眉を顰めるハリスの背を、三人が襲う。

 彼等を隠すように巻き上がる土煙……叩き下ろされた武器は、当然のように止められていた。


 やがて煙は晴れるが、攻撃を制止していたのはハリスではなかった。


「再三にわたる不意打ちとは、相変わらず卑怯ですね……っ!」


『あの時のガキ……!?』


 ハリスが握っていたはずのリベイルケインを手に、三人を睨み上げるリンゴ。

 遅れて彼は状況の変化に気づき、四人のほうへ振りかえる。


「リンゴ……!」


「レナさんが心配なのはわかりますが、油断なんてらしくないです……よっ!」


 最後の一声に力を乗せ、リンゴは三人を弾く。

 よろめく三人を尻目に彼女は、ハリスに硬鞭を返す。


 そしてリンゴは懐から杖を取り出し、リーダー達と対峙する。


「ハリスさんはレナさんのところへ。ここは私が何とかします!」


 とは言うものの、周囲にはまだ夥しい数のゾンビが冒険者と戦いを繰り広げている。


 リンゴの魔力も回復しておらず、ハリスの戦力があるに越したことは無い。

 それでもリンゴは、振り向かずに叫ぶ。


「早くっ!」


「……任せたぞ」


 リンゴの背中に頷き、ハリスは走りだす。

 進行方向に立ちはだかるゾンビはことごとく蹴散らされていく。


 残ったリンゴは、冒険者達とともに敵の軍勢に囲まれる。

 それでも臆することのない彼女は、杖を前に構えて念じる。


「『ライトレイ・ブレード』……!」


 詠唱と共に、杖を核として光の大剣を作り出したリンゴ。

 彼女はそれを担ぐように構えると、ゾンビの壁へ駆けていく。


「はああああああッッッ!」


 ぶっきらぼうに薙ぎ払われる大剣は、ゾンビ達を吹っ飛ばす。

 彼等は宙を舞いながら、全身から黒い瘴気を吐きだす。


 それは、彼等をゾンビとして強化する力の源であった。


「「「ぎゃあああああぁぁぁッ!?」」」


 激痛と共に人間に戻った彼等は、地面に落下し気絶する。

 彼女に続き、他の冒険者たちもゾンビを無力化するために戦闘を続行する。


 そんな中、リンゴ一人を取り囲むように、ゾンビの一団が現れる。

 彼等の中心にいたのは、他でもないあの三人だった。


『街では世話になったなぁ、クソガキィ……!』


「アレで改心すればよかったものを、滑稽ですね」


『生意気なガキだ。随分殺されたいようだな』


「そんなあなた方は、私なんかよりも世間知らずのようですが」


 煽り返すリンゴに、三人は激怒する。

 彼等と周囲のゾンビ達は、各々に武器を構え、彼女を囲む。


 それでもリンゴは剣を構え、自分を狙う大勢の敵に向かって、叫ぶ。


「みんなまとめて、かかってきなさい!」


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


この作品を「面白い!」「もっと続きを読みたい!」と少しでも感じましたら、

広告下の☆☆☆☆☆評価、ブックマークをしていただけますと幸いです。


執筆の励みになりますので、何卒よろしくお願いいたします。

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