表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/60

劣悪パーティ、破滅へと踏みだす

 ハリス達が伝説の地を立ったころ。

 世界樹の町とその血を繋ぐ補給地点に、劣悪パーティの男たちはいた。


 ……正確に言えば、元劣悪パーティの面々である。


 モノに離脱され、ハリスと交代で仲間になった男女にも縁を切られ、冒険者ライセンスすら剥奪された彼らは、市場の端でしゃがみ込んでくだをまく。


「ハァ……俺たち、どうなっちまうんだろうな……」


「知るかよ。もうその話……何回目かもわからねーわ」


 髭の男と大男は、幾度となく同じ話をしては、ため息をつく。

 その目はうつろで、かつてあったイキった覇気は一切ない。


 彼等がうなだれていると、パーティを纏めていたリーダーが、苛立った足取りで二人の元まで歩いてくる。

 男達はリーダーを見上げつつ、呆れた顔で告げる。


「よう、新しい仕事は見つかったか?」


 するとリーダーは、充血させた瞳で彼等を睨み、地面を蹴って当たり散らす。


「見つかるわけねーだろ! どっかの用心棒になろうとしたって実力不足とか意味わかんねーこと言われるし、傭兵に申し込んでも返事はこねーしよォ!」


 一しきり物に当たった彼は、その勢いで髭男の襟首を掴んで持ち上げる。

 さすがにまずいと大男は彼を止めようとするが、髭の男は呟く。


「なあ……ひょっとして俺たちって、そんなに強くないんじゃねーかな?」


「何言ってんだ? ここまで来れたのは俺と、あとお前等の力のお陰で」


「だってよぉ、ハリスが抜けて一気に戦力落ちて、モノがいないと成り立たなくなったんだぜ? 後衛不足じゃ説明もつかないだろ」


 虚ろな表情で髭の男は語る。

 真実に気づいた彼は、冷静に状況を諦観していた。


 だが一方で、リーダーはそれを受け入れず、拳を握って振り上げる。

 その光景を見た大男は、声を上げて割って入る。


「待てよリーダー! さすがに暴力はおかしいだろ!」


 くだらない喧嘩が始まり、ぐだぐだと現実逃避を繰り返す。

 だがそのとき、彼等と全く関係のない市場の中から、悲鳴が響く。


「うわぁ! な、なんだよコイツ等!?」


 喧嘩を始めかけた三人が、その声に手を止める。

 すると騒ぎはみるみるうちに広がっていき、一帯はパニック状態になった。


 逃げまどう人々は、口々に叫ぶ。


「憲兵さん! おかしな人たちが、突然!」


「アイツ等の肌の色、本当に生きた人間だったか!?」


「誰か助けてくれっ! 変なヤツに腕を噛まれた!」


 巻き起こる大騒動に、劣悪パーティの面々は顔を合わせ、喧嘩をおさめる。

 そうして彼等は各々の武器を握りしめ、野次馬気分で走りだす。


 騒動の発端となった市場の中心につくと、彼等はその光景に驚く。

 そこでは多くの人々が、血色の悪い人間のような何かに襲われていた。


 目の前の光景にたじろぐ男達。

 その中でも髭の男は、人を襲う者たちを見て気づく。


「なあ、コイツ等アンデッドじゃねーか?」


「アンデッド……? 見たことないからわからねーけど、そうなのか?」


「話に聞く特徴には似てるぜ? それに最近、この辺りの道でたまに出るって聞いたし」


 大男が質問すると、髭の男は丁寧に解説して答える。

 すると一体のアンデッドが、彼等の存在に気づいて歩み寄ってくる。


 一見すると人間と何も変わらないモンスターに、攻撃をためらう大男。

 だがその一方で、リーダーは剣を握りしめて呟く。


「なあ、本当にモンスターなら、別に殺してもいいんじゃね?」


 放たれた言葉に、仲間である二人の男はリーダーを見る。

 剣を握る彼の脳内は、モンスターを倒すためや人を助けるためではなく〝正当な理由で人を斬れる〟という好奇心が立ち込める。


 そうしてリーダーは、自分の意見を正当化させるように、仲間たちへ説得する。


「ほら、みんな助けてっていってるしよ、助けてやらないと」


「そうかもしれないけど、俺たちも逃げたほうがいいと思うが」


「でも人間を斬れるなんて……じゃなくて元冒険者として、治安を守るのは悪いことじゃねーだろ」


 必死に言葉を取り繕い、仲間達を巻き込もうとするリーダー。

 やがて彼等の胸にも、溜め込んだ鬱憤を晴らしたいという欲望が膨れあがり、武器を握る力も強くなっていく。


 そのたかぶりに合わせるように、襲いかかる一体のアンデッド。

 瞬間、リーダーは剣を振り上げ、その体を両断した。


「……何だよ。他のモンスターと比べて、ずいぶん脆いじゃねーか」


 地面に倒れるアンデッドを見て、吐き捨てるように告げるリーダー。

 彼は口元をニタリと歪ませ、二人に呼びかける。


「さあ、冒険者として、街を救おうぜ?」


 爛々らんらんと揺れる瞳が、邪悪に二人を誘い込む。

 すると二人も頷いて、辺りにいるアンデッドを狩り始めた。


 そこからは地獄だった。

 街に放たれた大量のアンデッドに加え、劣悪パーティのような『ならず者』に近い人々が、好き勝手に暴れだす。


 憲兵やまともな冒険者も対処に当たるが、暴れる者達は何を思ったのか、自分の獲物を奪うなと言わんばかりに彼等にも攻撃を仕掛ける。


 さらにアンデッドに攻撃された者も、ゾンビと化して人々を襲う。

 アンデッドを倒していた憲兵も、先程まで普通の人間だったゾンビには手を出せず、攻撃の手を止めてしまう。


「クソ……人々の避難を優先させろ! 戦うのはあとだ!」


 苦渋の選択をする憲兵達。

 彼等はまともな冒険者と共に、人々を街の避難場所へ誘導し始める。


 その間に劣悪パーティを含む悪漢たちは、アンデッドもゾンビも関係なく片っ端から叩き斬り、ある意味で大活躍していく。


 やがてそんな中、リーダーは一人の怯える男の前に立つ。

 地面に尻餅をついた男の腕には、アンデッドに噛まれた傷跡。


 歯型を見て狂喜しながら剣を振り上げるリーダーに、男は制止する。


「待ってくれ、まだ俺は正気だ! 殺さないでくれっ!」


「でももうお前がアンデッド……この場合はゾンビか。それになるのは変わらねぇんだ。残念だったな」


 理由を押しつけられ、男に剣が振り下ろされる。

 途端に彼の声は止み、リーダーは恍惚な笑みを浮かべる。


 いつの間にか人々の避難は終わり、市場を中心とする一帯は、アンデッドとならず者たちだけが残る。

 するとその時、手を叩く音と共に、少女の声が響く。


「よくやってくれた! すごいよみんな!」


 彼女の声に応じるように、アンデッドの動きが止まる。

 リーダーたちが声のする方向である市場の中心を見ると、そこには白い髪の少女が屈託のない笑顔で立っていた。


 彼女は男たちに声をかけ、自分の元へ呼び寄せる。


「ガキがこんなところで何の用だ? 殺されてぇのか?」


「うーん、死にたくはないなあ。じゃあ先に自己紹介するね」


 少女はそう言うと、懐から金色の勲章を取り出す。

 リボンで飾られた『27』の数字が刻まれたそれを見て、劣悪パーティは表情を暗くする。


 だがそんな彼らと相反するように、少女は明るい声色で告げる。


「ボクの名前はヴァイス・オズワルド、見てのとおり勇者だ!」


「勇者が俺たちに何の用だ?」


 ポーラに植え付けられた偏見により、食って掛かるリーダー。

 だがヴァイスは彼に微笑み、優しく答える。


「みんなにはテストをしたんだ。アンデッドを使って、勇気と力のある者を選抜するためにね」


「ってことは、コイツ等を操っているのはお前か?」


「うん! 手を叩けばまた動き出すし、それなりに指示も聞いてくれるんだ!」


 頼れる仲間を紹介するように、アンデッドを紹介するヴァイス。

 そのまま彼女は、男達を扇動するように語り始める。


「ボクは君たちのような勇敢な戦士を探していた! どうか僕に、力を貸してくれないかな? 報酬はお金でも新しい力でも、望むなら何でもあげる!」


 ほがらかに語る彼女の言葉に、男たちはざわめきだす。

 特に彼女へ興味を抱いたリーダーは、彼女に尋ねる。


「お前の目的は、一体何なんだ?」


 リーダーの質問に、彼を気に入ったように目を輝かせたヴァイスは、胸を張って答える。


「ここから南に何日か歩いた場所に、世界樹の町があるだろう?」


「ああ、俺たちも行ったことがある」


「そうなんだ! 実はボクね――」


 ヴァイスはそれから、あまりにも稚拙な理想を語る。

 冗談のような彼女の目的に、ならず者たちはまるで、賛同するようにニヤリと笑った。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


この作品を「面白い!」「もっと続きを読みたい!」と少しでも感じましたら、

広告下の☆☆☆☆☆評価、ブックマークをしていただけますと幸いです。


執筆の励みになりますので、何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ