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転生ヒロインは攻略しない⋯⋯逆ハーレムは望まないので物語には逆らってみようと思う  作者: おかき


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7話話 私の大切なお嬢様

ミリアの前世、ナタリーの過去のお話です。流産に関する内容が一部あります。

苦手な方はブラウザバックをお願いします。

私はミリアお嬢様の専属侍女のナタリー・デグシラ、20歳。


子爵家の三女として産まれた私は、16歳の時に政略的な理由で伯爵家へと嫁ぎました。

子爵家は裕福ではありませんが、決して貧かった訳ではありません。

私が格上の伯爵家に16歳の若さで嫁いだのには訳がありました。


私の姉である長女のオティーが結婚当日に駆け落ちをしたため、急遽妹であり婚約者のいない私が花嫁の代理とされ伯爵家に嫁ぐ事になりました。


姉の裏切りにあったお義兄様。いえ、元夫の気持ちも理解出来ます。

お義兄様と呼んでいた頃は私にもとても優しく接していただきました。


オティーお姉様の裏切りの憎しみが私へと向けられる事は、仕方がなかったのかもしれません。

私は伯爵家では夫人としてでなく、使用人として……いえ、使用人以下の扱いを受けていました。


例え憎んだ相手の妹とはいえ結婚した以上後継は必要でした。

私は拒否する事など出来る立場ではありません。


私は邸の仕事を熟しながら、夜は後継のために呼ばれる。

私を一切見ない元夫から手を出される。暗闇の中で私は気が付かれないように泣きながら元夫の手を受け入れるしかありませんでした……


とても悲しく惨めでした……。


そんな日々が続くなか、私は気が付かないうちに子を宿していました。

ですが使用人以上に働かされた私は倒れ、子を亡くしてしまいました。


痩せ細り泣く事もなくベッドで呆然と天井を見つめるだけの私の姿を見た元夫は、初めて自分がどれだけ酷い扱いをしたのかに気が付いたようでした。


膝を突き泣いて謝罪されましたが、私にはもう何も思う事も考える事も出来ないほど精神的に追い込まれていました。


私は「離縁をして下さい」

それだけは伝える事が出来ました。


元夫は「やり直したい。大切にしたい。離縁はしたくない……君に甘えていた。これからは夫として寄り添う」


そう何度も言われましたが、私の感情は少しも揺れる事はありませんでした。


伯爵家で過ごした思い出は、オティーお姉様への恨み辛みをお義父様とお義母様、邸中の者からぶつけられた事以外に何もなかった。


伯爵家の者全員で虐げたくせに、今更です。


私は頑なに離縁を言い続け、18歳になりお医者様の診断書を盾に離縁をする事が出来ました。


子爵家に出戻りし両親との久々の対面で、両親は泣いて何度も謝罪してくれました。


私を伯爵家に嫁がせる以外に手立てが無かった事は理解していました。

貴族の責任として、家族を助けるためにと覚悟を持って嫁ぎました。


ですが、私が伯爵家で虐げられている時に姉のオティーは子爵家に戻っていたのです。


私は知らされていなかった。

両親は姉を匿い、伯爵家に知られないように私にも秘密にしていたのです。


許せない。

許せるはずがない。


姉は恋人とは別れたものの、腕の中に赤子を抱いていたのですから。


私は何も言わずに出戻ったその日に子爵家を出て行き貴族院にて除籍の申請をしました。

役所の方が身内の印が書面にない為に受理出来ない。

と、私に説明してくれました。


私と役所の方のやり取りを聞いていたアーノルド様が私を保護して下さりました。


妻のサリー様に私は預けられ、根気よく何も話さない私と向き合って下さりました。

私はサリー様に少しずつ話す事が出来ました。


子を亡くして初めて泣いた私は、母になりたかったのだと。嫌いな元夫との子であっても宿した命を大切にしたかったのだと。

自分の気持ちを初めて知ったのです。


私は子爵家から籍を抜く事はありませんでした。

伯爵家で働く為には貴族である事が有利になるからです。


子爵家には伯爵様が説明をして下さり、私は子爵家に籍は置くものの縁は切らせてもらいました。

元夫からは復縁の話が何度か来ましたが、伯爵様が対応して下さりました。


私は 伯爵一家のためにこれからは尽くそうと働き始めました。


そんなある日。アーノルド様に隠し子がいた事が発覚し、伯爵家は大騒ぎとなりました。


サリー様は発狂し、泣きながら旦那様を責めていらっしゃいました。


サリー様と出会われる前の恋人だったらしく、結婚も考えていらっしゃったようです。


烏滸がましいのは承知したうえですが、私はサリー様の気持ちも理解出来ます。ですが、旦那様のお気持ちも理解出来ます。

旦那様は亡くなった女性よりも、お子様が心配なだけなのだと……。


サリー様は愛する旦那様に以前そのような女性がいた事は婚約の時に伝えられていたようですが、「旦那様の子供がいた」となると話は別なのでしょう。


旦那様は伯爵家の血を継ぐ者として、お子を引き取る事を決心されました。


旦那様のお子であるミリア様の姿を使用人達とこっそり覗き見しました。

痩せ細り粗末な服を着てはいても、その可愛らしい容姿は誰が見ても褒め称えるほどでした。

伯爵令嬢として教育をうければ、社交界で輝く事は間違いないでしょう。


その日ミリア様を迎える為の夕食に、ミリア様が姿を見せる事はありませんでした。


私は旦那様に呼ばれ、退職された元執事一家が住まわれていた離れに同行するように言われました。


離れに入ると、ミリア様はソファーに横になり眠っておられました。

旦那様がミリア様を起こされますが、全く起きる気配がありません。


旦那様がミリア様を抱きかかえ、ベッドへと運ばれました。

ミリア様を抱きかかえた旦那様のお顔は、とても優しく幸せそうなお顔でした。


不遇な環境の中を必死に生きてこられたミリア様に、温かな家庭を与え守る事が出来るからだと旦那様が嬉しそうに話されました。


「ミリアは教会で教育を受けている。とても大人びていて8歳とは思えない。だが、どんなに大人びていようとまだ子供なのだ。これから家族となるミリアをナタリーに任せたい。頼む」


そう仰られました。


本邸から旦那様と執事と私の三人で、ミリア様の衣装や必要な物を離れに運び入れました。


明日のミリア様との対面を楽しみに私は離れを後にしました。


朝、ミリア様と初めてお話をした時に旦那様が仰られた大人びているという言葉は直ぐに理解出来ました。

大人びていると言うより、周りに気を配りすぎる。が、正解な気がします。


本邸に朝食に向かうと、マリアンネ様の拒否する態度にミリア様が自分から引く事を判断なさいました。


ですが、まだミリア様は8歳なのです。


親に甘えたい年頃のミリア様はもしかして泣いているのでは?と思い、私はミリア様の後を直ぐに追いました。


ミリア様はポロポロと静かに泣きながら歩いていらっしゃいました。


8歳の子供が大人にならざるを得ない環境を思うと、胸が締め付けられます。


私はミリア様に仕え少しでも支えになれればと考えていましたが、ミリア様は一人で沢山の事を考えていらっしゃいました。


伯爵家から出る為に働きたいと動かれました。

ミリア様に与えられた仕事は、普通の子供が熟す内容ではないのです。

他国の本や書類の翻訳。

専門家が担う仕事を8歳のミリア様が熟す姿は感動と尊敬しかありません。


私はミリア様と一緒に伯爵家と商会を行き来するようになると、カルロス様に個別で呼ばれました。


「君はミリアから信頼をされている。ミリアへ毎日の給金は渡しているが、本来の給金の一部しか渡してはいない。残りは商会で預かっている。

もしミリアに金が必要な時は、商会に預かっているお金がある事を覚えておいてくれ」


私はそんな重要な事を伝えられ驚きと少しの恐怖を感じましたが、その時には私の中でミリア様は亡くなった子供のようで愛しく思う方となっていました。


私はミリア様を幸せにする事により一層力を注ぐ事にしたのです。


亡くなった子供の代わりではなく、ただ可愛らしいミリア様に尽くそうと。

ミリア様を幸せにする事は、伯爵様への恩返しにもなると……そう考えました。



ミリア様が転生者である事を知ったのは、ふわふわな生き物を保護した時でした。

ネズミのような容姿が猫に変わり、言葉を話した時には驚きました。

レン様は神獣様では?尋ねたくとも聞く事は出来ませんでした。


ミリア様が黒猫を「レン」と呼ばれ、再会に涙を流されていました。

感動の再会を果たしていると、カルロス様が一人の少年を連れて来られました。


ミリア様の学友として紹介されました。


少年はエアハルト様と紹介されました。

貴族特有の傲慢さを少し持っていましたが、ミリア様の事情を聞きミリア様の素直な態度に直ぐに傲慢さが無くなりました。

ミリア様は人たらしである。

そう確信しました。



その次の日、私はミリア様に離れで泊まるように言われました。

前日の寝る前に何か私に伝えたそうにしていましたので、その事でしょう。



私はミリア様から前世と言われる転生前のミリア様のお話を聞く事になりました。



ミリア様は、麻生亜由美さんとして生きていました。

今と同じように翻訳の仕事をされていたそうです。

そのお仕事の世界では名のしれた人物だったようで、少し照れながら説明されるミリア様はとても可愛らしかったです。


ミリア様は赤子の時に捨て置かれていたらしく、孤児院で育ったそうです。


前世の世界では孤児院育ちでも普通に生きて行けるようで、身分制度もなく自由な世界。

素晴らしい世界であると思いましたが、ミリア様が仰っしゃるには個人的な考えの中に孤児である事を嫌悪する方や、下に見る方もいたようです。


お友達の陰口を耳にした内容は、「捨て子の癖に生意気」などあったようで虐めの対象になった時もあったと……。

人を信じる事が怖くなり、翻訳の仕事ならば人に接する機会が少ないと沢山学ばれたそうです。が、周りはそれすらも気に入らなかったそうです。

虐めは加速して行かれたようでしたが、生きる為の仕事を目指し必死に耐えられたそうです。


学生を卒業され、お仕事をされるようになると男性とのお付き合いもあったようでした。

私は恋人がいた話を聞いて安堵しましたが、孤児である事を理由に結婚を約束した方のご両親の反対にあいお別れになったと……。しかも、二度も。


淡々と話されるミリア様を私はじっと見つめ、静かに聞くことしか出来ません。

辛かったでしょう。苦しかったでしょう。

気持ちを想像するしか出来ません。


そんな私に気が付かれたミリア様は、

「前世の事だから、大丈夫」

控えめの笑みを向け私を気遣われます。


ミリア様は話を続けられました。


お仕事を成功される中で、ミリア様は育てて下さった孤児院に寄付をしたり贈り物をしたりと何度も訪問していたようです。

その時に黒猫のレン様が事故にあい倒れているのを見つけ保護した事が出会いであったそうです。

ミリア様のお家は動物が飼えなかったため孤児院で飼っていただき、毎日のようにレン様に会いに行かれていたと。

ミリア様にとても懐き、自分で作られた首輪も贈られたそうです。

ミリア様は動物を飼えるお家を探し一緒にレン様と過ごせるように考えていらっしゃったと。


そんな中お付き合いする男性とも出会われたそうで、その方は孤児である事も気になさらず大切にして下さったそうです。


幸せな日々は長く続かず男性の浮気を知ったそうです。


「結婚するなら亜由美しかいない。でも、結婚するまでの恋人は別の話だ」


そう言われたそうです。

ミリア様は自分が孤児である事を気にされ、恋人となる方に献身的に尽くしたから自分が悪い。


そう悲しそうに呟かれました。


私はミリア様は悪くない!

そう叫びたい気持ちをスカートを握りしめる事で、必死に我慢しました。


恋人に裏切られたのは初めてだったミリア様は、行き場のない思いを抱えながらも、仕事に孤児院の訪問にもきちんと熟されていたと。

ミリア様は恋人と別れる事を選び、辛い気持ちを抱えながらもレン様と一緒に住めるお家を見つけられ孤児院にレン様を迎えに行かれましたが、外に出たままいなくなっていたそうです。


家族となるレン様を失い、恋人とも別れ部屋に籠もったまでの記憶で前世の事は終わりを告げたのだそうです。


そして、レン様が言った「物語」のお話も教えて下さりました。


ミリア様が沢山の男性を侍らせる?

悪役令嬢との対決?

複数の男性との結婚?


確かにこの国では陛下が認め、その様にするべしと判断された際は一夫多妻や一妻多夫が認められます。

ですが、それを申請しても通る事はほぼありません。


聖女や聖人、膨大な魔力持ち。

よほど特別でない限りありえません。


私はミリア様にこれからどうしたいのかを尋ねました。


「私は逆ハーレムはしない。愛する人は一人が良いの。伯爵様のように相手を大切にして他者にも優しい伯爵様のような人を自分で見つけたいの」


(旦那様!ミリア様が、ミリア様が旦那様の事を褒めております。理想の殿方と口にされましたよっ!)


心の中で私は旦那様に大声で報告しました。


「私はミリア様を大切に思っています。可愛い私の娘とも妹とも思っています。私も微力ながらお助けしますので幸せになれるように一緒に考えて行きましょう」


ミリア様には私の過去のお話を全てお伝えしました。

ミリア様だけお話するのは不公平です。


ミリア様は私の過去に涙されました。


「ナタリーさんも幸せにならないといけません。亡くなったお子様もそう願っているはずです。私と一緒に幸せな道を探しましょう」


私の涙腺は決壊し涙を止める事が出来ません。

ミリア様と二人で泣き続け、泣き止んだお互いの顔を見て笑い出すまで時間はかなり過ぎました。


その日から、私は離れに部屋を借りミリア様と一緒に暮らす事になりました。


私の幸せな日々を旦那様が時折羨ましそうな顔で見ますが、大丈夫ですよ旦那様。

ミリア様はちゃんと旦那様を見ていらっしゃいます。

父親としてではありませんが、一人の人物として好ましく思われていらっしゃいます。


ミリア様本人が伝えられるその日まで、お待ち下さいませ。


旦那様の大切なお嬢様は、私の大切な可愛いお嬢様ですので。


今日もジト目を向ける旦那様に、私は頭を下げその場を離れました。



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