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転生ヒロインは攻略しない⋯⋯逆ハーレムは望まないので物語には逆らってみようと思う  作者: おかき


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5話 ぽっちゃり男の子の初恋

僕はカルロスさんに呼ばれ、商会に連れて来られた。

叔父のアドルフさんからの紹介で、ある人に会う為だと。

それだけ聞かされていた…。


部屋に入ると、侍女らしき女性と小柄な可愛らしい女の子がいた。

カルロスさんに笑顔で答えるその顔は、まさしく天使だった。


自分の頰が熱を帯びるのが解る。

恥ずかしさを誤魔化すために、そっぽを向いた。 


「ミリア。この子はエアハルトだよ。仲良くしてくれ」


カルロスさんが僕を〈エアハルト〉と、いきなり偽名で呼んだ。


どうして良いか解らないので、そっぽを向いたまま小さく頭を下げた。


「私はミリアです。宜しくお願いします」

と、可愛らしい笑顔で挨拶をしてくれた。


(本当に可愛いな⋯⋯)


今まで見て来たどの令嬢達よりも圧倒的な容姿だった。


(僕はこんな容姿だから、好かれないのは仕方ないけどね⋯⋯)


どんなに痩せようと頑張っても太るばかりで、何をやっても効果はない。

母親に連れられてお茶会に行けば、笑われ馬鹿にされあからさまに煙たがれる⋯⋯。


私は邸に籠り本ばかり読むようになった。そのせいか、同年代の中では神童とまで言われるようになった。

容姿で下に見られる僕は、知識や語学力でそいつらを下に見て馬鹿にしてやった。


そんな僕に会わせたい子って⋯⋯。


(婚約者候補ではないよな。貴族だとしても同じくらいの爵位なら顔合わせがあったはず。会った事がないならば、爵位が合わないか平民だからか。

平民ならば婚約なんてもっと無理か⋯⋯)


彼女と縁が無い事にガックリする自分に驚いたが、そんな感情は見せない。

高位貴族として感情を上手く隠した。


「ミリア。エアハルトは語学力に優れている。ミリアの相手に調度良いだろうと、アドルフが私に紹介してくれたんだ」


カルロスの言葉に、エアハルトは引っかかりを覚えた。


「私に調度良いではなく、彼女に調度良いとは?」

少しムッとした僕は、嫌味っぽく伝えた。


「エアハルトより、ミリアの方が知識も語学力も遥かに上だからだよ」


カルロスが平然と答えた⋯⋯。


信じられないエアハルトは、余り知られていない国の言葉で彼女に話しかけた。

すると、彼女は流暢に同じ言語で返事をする。

それどころか、この国の言葉は使えるのか試すように他国語で次々と会話をしてくる。


「ミリアさん。貴女は何カ国の言葉を話すのですか?」

僕は3カ国語を話せるが、多分僕より多いはず。

だって、知らない言語があったから。


「今は5カ国です。今試験中だから、それに受かれば6カ国ね。」

自慢するでもなく、普通に答える彼女⋯⋯。


「そんなに⋯⋯。」


僕は自分を神童だと言われる事で見栄を張れたのだ。

なのに、平民の彼女に負けるなんて⋯⋯。


落ち込みたくないが、落ち込んでしまう。

容姿で勝てない自分の唯一の武器だったからだ。


「エアハルト。ミリアは午後からその試験を受けに行く。一緒に行ってみるか?」


カルロスがエアハルトに問いかけた。


「一緒に行きましょう?エアハルト様は語学に堪能ですから、きっと面白いと思いますよ?」


彼女が優しく誘ってくれた。

自尊心が傷付いたことに気が付かれたかな⋯⋯。

気を遣われて、何だか恥ずかしくなり

「見に行く⋯⋯」

僕はポツリと返事をするのがやっとだった。


「お仕事がもう少しで終わるから待ってて下さい」


(仕事?僕と同じくらいなのに⋯⋯)


平民とは大変なんだと考えていたら、侍女らしき女性が彼女の名を呼ぶ敬称にさらに僕は驚いた。


「ミリアお嬢様。お仕事を終えましたら、昼食にしましょう。エアハルト様も一緒で宜しいですか?」

侍女らしき女性が彼女に丁寧に話しているのだ!


「そうね。一緒で大丈夫なら皆で食べましょう」

ニッコリ笑顔で答え、彼女は机に戻ると何やら書き始めた⋯⋯。


(様付け?彼女は貴族なのか?)


僕は彼女をじっと観察する。

小さな手に大きな羽根ペンを持ち、真剣に目の前の何かを見ては書いている。


「エアハルト。座って話そうか」


カルロスさんが僕をソファーに座るように促した。


「ミリアは伯爵令嬢だ。訳あって、最近まで市井で暮らしていた。私が推薦した教会で教育を受けているから、とてつもない知識と語学力を身に着けている。

だがな、その知識と語学力は本人の努力で手に入れたものだ。

アドルフは、お前の成長の助けになるとミリアを選んだ。ミリアと接してみろ。お前の世界は必ず変わる」


アドルフ叔父さんは、邸に籠り続ける僕をいつも心配してくれていた⋯⋯。

アドルフ叔父さんが選んだ彼女は、嫌われる容姿の私をちゃんと見て会話をしてくれた。

何かを変えなくてはいけないのは僕が一番解っている!

僕が出した答えは⋯⋯。


「彼女と一緒にいる。一緒に色々学んでみたい。」

だった。


昼食まで時間があるので、彼女について質問してみる事にした。

事情を知っていた方が良いだろうと、カルロスは大まかに教えてくれた。


僕は彼女の身の上話を聞いて、更に驚かされた。


伯爵の隠し子?

令嬢になれたのに、平民に戻ると?

仕事をして、自活している?


なぜ⋯⋯。


幼いながらにも優雅にお茶を飲み、贅沢をする貴族の令嬢しか知らない。

平民が一生贅沢出来る手立てを、自ら手放すなんて信じられない⋯⋯。

僕はカルロスさんの話を聞きながら、彼女をじっと見た。

仕事をしていた理由が、伯爵家から出る為⋯⋯。


(僕とそんなに変わらない年齢なのに⋯⋯)


「彼女が仕事をしているとしても、子供が稼げる仕事は余りないのでは?」


彼女の先行きが心配になり、カルロスに聞いてみた。


「まぁ普通の子供ならお駄賃程度の仕事しかないがな。ミリアがやる仕事は他国語の翻訳だ。しかも仕事は全てアドルフから持ち込まれている。毎回毎回、大量にな!」


カルロスさんが叔父の行動に呆れているのが解る。

きっと、とんでもない量なのだろう。


「アドルフ叔父さんの仕事。ですか⋯⋯」


僕のその言葉と同時に、

「お仕事、終わりました。」


彼女の声と重なった。

自信のない僕の声⋯⋯。

自信に満ちた彼女の声⋯⋯。

僕は、恥ずかしさを感じた。


彼女を見ると、満足気な笑顔でカルロスさんに本を見せた。


「私はこの国の言語は解からん。アドルフに見せて満足するなら大丈夫だろう」


カルロスさんが優しく彼女の頭を撫でている。

彼女は目を閉じ、撫でられる心地良さに浸っているみたいだった。


(猫みたいだ⋯⋯。)


「あ!さっきの黒猫は?」


彼女と一緒にいた黒猫を思い出した。


「猫は籠の中で寝ていますよ」

侍女らしき女性が返事をくれた。


籠を覗くと、真っ黒な塊が真ん丸になって寝ている。


「可愛いですね」


「でしょう?蓮は可愛いのよ!」


彼女が隣に来て、一緒に覗き込んできた。


ふわりと香る石鹸の匂いに、クラクラしてしまう。

香水じゃない香りに、僕の心臓が煩くなるのは何故だろう⋯⋯。


僕は胸を押さえて暫く考えるが、答えが出ない。

カルロスさんが僕の頭をポンポンと触る。

見上げると、意味ありげな視線でニヤリと笑っていた。


「エアハルト。その胸に感じたものを忘れないようにな」


その言葉の意味は解らないが、忘れてはいけないと自分でも感じていた僕は、心臓の鼓動の速さと彼女の笑顔を大切に刻んだ。


昼食はナタリーさんが用意してくれた。

カルロスさんも一緒に食べる。と、商会の営む食堂から色々持って来てくれた。


沢山あり過ぎて食べれないのに⋯⋯。

そう思っていると、


「カルロスさん。残ったら勿体ないから夕食に貰っていい?」


ミリアさんがカルロスさんに【勿体ない】と伝えた。


勿体ない?


「余る予定で買ってきたんだ。ミリアが持って帰れるようにな」


カルロスさんは、またミリアさんの頭を撫でる。


「もったいない。って、どう言う意味です?」


僕は初めて聞く単語で解らなかった。

異国の言葉を全て知っている訳では無い⋯⋯。


「言葉の意味を説明するのは、少し難しいけれど⋯⋯。

例えば、この料理を作るのに農家の方や商会に料理人と沢山の人が関わっています。そんな料理を捨てるのは失礼です。

世の中には、食べたくとも食べれない人もいます。自分の立場を考え、食べ物は残さない。物は大切に扱い修理出来るなら、なるべく使うか貴族であれば教会や孤児院に寄付する。

つまり、誰かが作ったものは大切にする?感じかしら⋯⋯?」


説明しにくいのか、段々と声が小さくなって行く。

でもぼくは理解出来た。

勿体ない。は、とても良い言葉なのだと。


「ミリアさんの説明で理解出来ました。ありがとうございます」


笑顔でお礼を伝えると、彼女の頬が薄っすら赤くなった。


さっきの僕と同じだ⋯⋯。

じっと見つめると、彼女がはにかんで笑う。


「エアハルト様の笑顔はとても可愛いから、少し照れてしまいます」


いきなりの言葉に、エアハルトが慌てて口を開く。


「私が可愛いなんて、ありえませんよ!ミリアさん、そんな気を遣わなくても大丈夫だから!」


エアハルトはミリアが気を使ったと思い、気を使わないで欲しいと伝えた、



ミリアが首をかしげ、キョトンとする。


「気は使ってないわよ?エアハルト様の顔立ちは………。うん。やっぱり整っているし、笑うと可愛いもの!」


ミリアは話しながらエアハルトの顔を覗き込み、可愛いさを確認した。


エアハルトは恥ずかしさより、信じられない思いでミリアを見ている。


「僕は……大きいでしょ?この容姿のせいで、馬鹿にされるんだ。ミリア嬢はそんな僕が可愛いって本気で思うの?」


エアハルトは涙声でミリアに問いかける。

今にも零れ落ちそうな涙を、ミリアはハンカチを目尻にあて優しく吸わせた。


「私は嘘は言ってないわよ?大きいから馬鹿にするって変よ。私は逆にガリガリだから馬鹿にされちゃうわね。

知識を得るのにエアハルト様が努力したのが解るもの。聖国と少数民族の言葉はとても勉強しないと習得出来ない事を私は知っているもの」


ミリアはエアハルトと両手を繋ぎ、話を続ける。


「それに、本当にエアハルト様のお顔は可愛いのよ?痩せたら、きっとモテモテだと思うわ」


ニッコリ笑い、ミリアが伝える。


「痩せないんだ…。何をやっても。でも、頑張ってみるよ。ミリア嬢が褒めてくれるように!」


エアハルトは心からの笑顔をミリアにむける。

ミリアの胸がギュッとなったが、ミリアは胸の痛みに何があったのか解らずにいた。


ミリアは前世は大人だった。

今の容姿は子供だが、自身を大人と認識している。

エアハルトの笑顔を見て、胸にあった感情の理由を好意とは認識していなかった。


ミリアは一瞬悩むが、気に留めずエアハルトに話しかける。


「昼食が終わったら教会に行きます。エアハルト様も一緒に行きましょうね」


二人は仲良く昼食をとり、ナタリーを連れ教会へと馬車で向かう。


ミリアは仕事もしているので、商会で働いている時に外出する際は馬車移動となった。


理由は幾つかあるのだが、カルロスはミリアには理由を話してはいない。


ミリアとエアハルトの乗る馬車が教会の裏手に回った。

馬車から降り、慣れた動きで教会の中へとミリアが入って行く。


奥に進むと廊下に騎士が一人立っていた。

関係者なのか、ミリアを見ると部屋の扉を開けてくれた。


「こんにちは。先生」

ミリアがシスターと呼ばれる先生に、カーテシーをした。


先生と呼ばれる女性を見て、エアハルトは驚いた。


が、先生と呼ばれる女性の物凄い視線の圧に黙ってしまう。


(正体を知られては、ならないのだな)


私が黙りになると、先生はミリアにようやく声をかけた。


「合格です。長く姿勢を保てました。今まで見たどの令嬢よりも美しいカーテシーでした」


先生の言葉に、エアハルトはブンブンと首を縦にふっていた。


(どの令嬢よりも可愛くて、頭も良くて美しい所作で……。褒める事しかないよ!!)



僕はミリア嬢と仲良くなりたい。

そう強く思った。


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