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勇者になるのを断ったら世界樹に転生した  作者: 央美音


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夢は所詮夢だと気づいた

「いやいやいや、その事はちょっと待って欲しい。そもそも、どうして長はこんな状態になっているんだ? 生きているのは分かるんだが、どうしてこんなに地面に押し付けられているんだ?」


 サクの疑問はもっともだね。怒りの長を追いかけたら、まさかの地面にべったり押し付けられてるんだから。


「僕が、魔力で作った膜を使って閉じ込めてるんだよ。サク達から聞いてた苛烈な人の意味がわかったよ。めっちゃ怒ってて、僕が世界樹になったのは僕のせいじゃないのに、僕が全て悪いって斧で殺そうとしてきてさ、僕死なないけど。普通に防御した後で反撃してもよかったけど、長に怪我させちゃダメだろうって考えて、魔力の膜を作って拘束したんだ。全自動斧振り下ろしはちょっとした反撃? 報復? で、帰る時は膜で包むから担いでいってね。森の入り口までは膜は消さないし、冷静に話ができるまで長は出禁で」

「あ、はい」


 アルがぽかんとした顔で返事した。レンは神妙な顔して何度も頷いてる。

 長が管理場所から出禁になるなんて驚きだろうけど、また斧担いで突撃されるのは嫌だ。

 サクは何故か長をじっと見つめた後に長を指差しながら僕を見た。


「膜? お前が作った膜が長を抑えているのか?」

「あれ、見えないの? こう、長にぴったりひっつくように抑えてるんだけど、分からない?」


 僕の説明を聞いてもサク達は分からないみたい。まじですか。


「アル、どうだ、分かるか?」

「いえ、全く。俺には長が地面に食い込むように倒れているようにしか見えませんね。そもそも、ここは世界樹の領域、世界樹の力が満ちた場です。世界樹が近くに魔法を放っていても、余程の魔力感知が上手い人間でもない限り感じ取るのは難しいと思います。……世界樹の力って魔力なのですかね?」

「へーそうなんだ。知らないけど魔力なのかな? 説明する時便利だしそれでいいんじゃないかな? 長には怪我させてないはずだから、話が終わるまで放置してても平気だよ」

「世界樹の寛大な処置に感謝を。長が、人間と世界樹の力の差を忘れるほど激昂するとは、俺達も想定外でした。本当にセンさんに怪我がなくてよかった」

「世界樹に一族の代表の一人として感謝の言葉を。いくらなんでも長のやりようは異常だ。いきなり世界樹であるお前に危害を加えようとは」

「世界樹に感謝を。親父の殺意に殺意を返さなかったセン殿に、今後どう報いればいいのか」


 何故かアル、サク、レンに感謝された。長への処分を出禁で済ませたのが良かったのかな?


「感謝なんて別にいいよ。僕も思い立ったが吉日みたいなノリでやらかしたし、死ぬことはないって分かってるから襲われてもただ驚いただけだし」

 

 長の本気の攻撃だったんだろうけど、今の僕を殺すのは無理って事を怒りで忘れてたんだろうな。

 村に住んでる一族の人達を全無視して自分の怒りを優先するってすごい長だね。流石苛烈な人。


「長の行動は、落ち着いて話ができるようになったら聞いてみてよ。長が見た夢の内容も気になるから聞いておいてね」


 僕と違って木の世界樹相手にあんな事は起きないだろうけど、対策は考えとかないとね。

 今回は僕のせいで長が怒っただけの話だけど、今までになかった一族の悪意にどう対処するべきかは、おいおい考えよ。


「そうか。……すぐに話が聞けるかは分からないが、長にはきちんと今回の行動の件を説明してもらう。夢の話もちゃんと聞いておこう。久しぶりの長の暴走だったが、こうなった長を止められる人はそうはいないんだ。今回の件で村中が混乱していたし、その人も対応に難儀していたから長を止められなかった。世界樹が原因だと、いち早く気づいた長が世界樹がいるここへ突撃したのはそれが原因だ」 

 一族の長が考えなしで行動するって危ないと思うけどな。大丈夫なのかな、村にいる一族の人達とそれ以外の人達。


「確か昨日サク達から聞いた話だと、村には一族の長とは別に、村全体で選ばれた村長がいるんだよね? その人は止められる人じゃないの?」  


 僕の言葉にサク達は遠い目になってる。なんで?


「今の村長と、うちの長はほとんど交流がなくてな。長の方が一方的に村長を毛嫌いしているから、向こうもあまり近づいてこない。長の代わりに俺が村長と村のことなど話をしているんだが、それも気に食わないみたいで皆んなが参っているんだ」


 サクが長に対しての愚痴を吐いてる。確かに一緒の村で住んでるのに、一族の長が村長に対してそんな態度じゃ村の空気も悪くなりそう。


「あれは親父が悪い。王都出身の者が村長に選ばれたというだけで拒絶している。村長になったあの人は、この村に来て三十年以上経っているんだぞ。村長になってから二十年、あの人のおかげで大きな問題が起きても被害が最小限で済んでるのに、頑なに村長のおかげだと認めない頑固者で、正直村の人だけじゃなく、一族からもなぜそこまで村長に辛辣なのかと疑問視されているんだ」

「わあ」


 地元生まれじゃない奴はよそ者で、みんなが認めても絶対に俺は村長とは認めないってか。めんど。


「村長とは関係ない所ですと、一族の私達にとっても村の人にとっても、あの人は偉大な長なんですがね」


 生きてたら合う合わないがあるのが普通だし、大事にならないうちになんとかなるといいね。

 まあ、とりあえず長の襲撃や村事情はそこらへんに置いといて。僕としてはサク達から夢について感想を聞きたい。


「それで、どうだった?」

「夢の事か? どうと言われてもな。そうだな、無事に目が覚めた時の安心感が凄まじかったくらいしか。すまないが俺は普段から夢を見ない。だから役には立たんな」


 サクが頭をかきながら答えてくれる。

 なるほど、夢の内容を覚えられない人もいるのか。僕は大体覚えてる方だからなんか新鮮な気持ちになる。

 ぼくのかんがえたさいきょうのぼうしさくは、めちゃくちゃ考えた結果、夢を見せるのがおまけになった。夢だけだとインパクトが弱いなと気づいたから。

 僕の作った魔法は、次世代に続くように遺伝子レベルで身体へと強制的に刻み付けてるから夢の内容を覚えてなくても大丈夫なんだけど、念のために覚えてない人でも覚えていられるように改良しとくべきかな。

 やり方わかんないけどまあいけるでしょ。


「じゃあ、アルとレンはどうだったの?」


 今回、サクは役に立たないので、僕は二人に聞いてみる。

 どっちも夢を見ないタイプだったら長から話を聞くしかなくなるな。だってあんなに怒ってたんだから結構覚えてそう。


「俺は、少しだけですが、おそらくヌシが狩られている瞬間を繰り返し見たのと、暗闇の中、突然足元に衝撃が加わる感覚がして、大事なものと切り離される、恐怖を」


 アルは夢の内容を少し思い出したみたいで、顔を青ざめながら答えてくれた。アルは夢を見るタイプだったようで大体覚えてるみたいだ。


「アリステーラ神国」


 レンさんや、いきなりどうしたの。


「……まさか、その国が」


 アルが分かったような顔してるけど、僕にはさっぱり分からない。いや、ちょっと考えたら気づけたけどさ。


「ああ、アリステーラ神国の王太子、ザスカッツェがべらべら自分たちの事情を勝手に話した後、あちらの要求を断ったセン殿を殺害したのをはっきりと見た」


 そっか、僕がこうなったのは、そんな名前の国とバカのせいだったんだ。まあ、名前を知ったところで今更それがどうしたって話だけど。


「それだけ? 他には何かなかった? レンは普段から音まで聞こえる夢を見るタイプ?」

「覚えているのはこれだけなんだ。申し訳ない。俺は時々夢を見る方だが、音を聞くような夢は今回が初めてで、普段は見たことがないな」

「ああ、謝る必要はないよ。まだまだ改良しないとダメって分かっただけでもいいんだからさ」


 レンは僕が殺された場面を見ただけなのか、覚えているのがこれだけだったのか分からないな。

 夢の内容なんて覚えてなくても別に問題ないんだけど、何となく全部覚えてて欲しい気持ちもあるんだよなぁ。

 人間だった頃の僕視点の内容だけだと、自分が殺されてるような感覚かもしれない。それだけだとただの怖い夢だ。

 どうもレンには映像だけじゃなくて音も聞こえてたみたいだけど、僕は音声付きの夢なんて見た覚えがないからどう改良するか悩みどころ。


「アルが見た夢には音はあった?」


 アルに聞いてみると、首を横に振っていた。

 僕が見せた夢の内容は、人によって覚えている内容が違うことが分かっただけでもいい収穫だった。

 僕がおまけで見せてる夢は、歴代の世界樹達の死にざまをたった一晩で体感できるやつ。本命にした魔法は別にある。

 アルはヌシの死にざまと木の死にざまを覚えているようで、まさしく理想的な夢の見方をしてくれていた。

 レンは僕の死にざまだけを追体験したのかな?

 僕が覚えてなかっただけで、死にざまを覚えていた僕の魂には、しっかりとバカとのやり取りが記録されていたのは面白い発見。まさか音まで聞こえるとは思わなかった。これは誰もが聞こえるように要改良。

 いっそ、木やヌシの死にざまでも音が聞こえる仕様にできないか調整してみよう。 

 素材は簡単に揃えられる。

 僕が見せた夢の素材は、世界樹の情報から探してきたもの。引き継ぎに必要なのか疑問だったけど、今まさに役に立ってる。とてもありがたく使わせてもらってます。

 僕もいろんな情報を次代達に渡したいな。

 一応、木と人間の感性の違いで問題が起きなさそうなの選んだ方がいいとは思うけど。

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