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身代わり

私は急いでリリアと別宅で必要なものをまとめていると、秘密の扉からライールさんが出てきた。




「フィオラお客さんだ」




そういうと、秘密の扉からもう一人男の人が現れた。



あの時の王国騎士の人だ!


まぁもうここ出るのなら拠点もバレても構わないわ。




「あの時はありがとうございました。フィオラ・ジョルトでございます」




私はそう言ってカテーシーをする。




「ザッハだ。平民故、そのような挨拶は不要だ」


「左様ですか」




するとライールさんが、




「こいつは昔からこんなんでな。不愛想なんだわ。まぁただ同じ平民上がりなんで仲は良いんだ。ちなみに王国の暗部だ」


「あら、そうだったんですの。てっきり王国騎士の方だと思っていました。それでその方がどういった御用で?」


「まぁ、あれだ、ルイン殿下が今噂で城を開けれないから、どうしても一度話がしたいんだとよ」


「そうですか。私は話すことがないんですが…」




私がそう言うと、ザッハさんは片膝をついて、深々とお辞儀した。




「秘密裏で構いませんので何卒…」




えぇ?! 王子様の為にそこまでする?? いや、するのかな? 私が変なのかな?




「ま、まぁ…準備がありますので少しでよろしければ…」


「感謝する!」




そういうと、さらに深くお辞儀をした。




「どこに行けばいいの?」


「執務室に15分後、私が扉を開けておりますのでその隙に入っていただければ」


「そう。リリア、悪いんだけどアリオンを呼んできて」


「はいよー!」




そういうとリリアが消えた。


ザッハさんはその様子を見て、




「あれでは見つけられん…」




とボソッと言うと、




「あはは! ザッハ! お前の無音に脚力強化のかけ合わせだ! すげーだろ!」


「あぁ、天眼だとルイン様から聞いたがまさか本当に…」


「あら、あなたも見て差し上げましょうか? お土産です」




私はそう言うと目に魔力を集め出した。




無音歩行

幻影




「無音歩行と幻影ですわね」




私があっけらかんとそう言うと、




「なんと…無音は本当は無音歩行で、更に幻影と言うスキルまであるのか…」


「影を作れるんでしょうね? 暗部にぴったりだわ」




私がそう言うとザッハさんはお辞儀をして、




「ありがとうございます。それでは15分後お待ちしております」




そういうとザッハさんは音もなく消えた。


凄いわ。


脚力系のスキルがないのに、本当に消えるレベルだったわ。


ものすごい鍛錬をされたのでしょうね…。




「そういうわけなんでライールさん、最後にルイン殿下に会ってくるわ」


「最後でいいのか?」


「どういう意味よ」


「気になるんだろ?」


「そうよ。でもアリオンとリリアが人を殺してしまった時に決めたって言ったでしょ? それにアマレーヌの身代わりになるはずが、ルイン殿下の身代わりになるだけよ。余程有意義だわ」


「そうかよ。ついて行くぜ我らが姫」


「ふふふ、頼んだわよ」




暫くすると、リリアとアリオンが戻ってきた。


そして15分後になったので、私はアリオンに抱えられた。


そして絵の具の中を進む。





しばらく絵の具の中を進み、止まると目の前にルイン殿下が座っていた。


すぐに扉が締められた。




「ほ、本当に急に現れたようだ…」


「なんでもお話ししたいとのことで」




私はアリオンにおろされながら話した。




「あぁ、あれはどういうことだ」


「どうもこうも記載の通りです」


「私は自分でなんとかする」


「これが一番早いですわ」


「それはそうかもしれないが、それでは君が…」


「別にいいのです。アマレーヌの身代わりだったのが、殿下の身代わりに変わっただけ。自由なだけ随分とましですわ」




と私が言うと、ルイン殿下は何かを言いたそうにして下を向いた。


しばらくの沈黙の後、




「ご用は以上でしたら帰らせていただきますが」




私がそう言うと、ハッとルイン殿下は顔をあげて、




「ま、待ってくれ!」




そして私の立ち上がり私の目の前まで来ると、膝をついた。


そして片手を胸に当て、持っていた長剣を床に突き立てた。



こ、これは、き、騎士の挨拶。


王に恭順を示す時に騎士がとる正式な挨拶。


でも、こ、この場合は…。




「フィオラ嬢、私は君の事を好いている。もっと一緒にいたい。どうか俺に守らせてくれないか? 王国は変えるが、そなたがいないのは…嫌だ……どうか俺の妻になってくれ」




そう言って、剣を床に置くと、その手を私に差し出した。


ぷ、プロポーズ?!?!?


い、いきなり?!?!





だめだ。


この手は私を本当に迎えに来ている。


ダメ!


既に汚れている私の手は、こんな綺麗な手を握ることは出来ない!




でも、その手を握りたい気持ちがどこかにある。






私、いつの間に殿下のことが好きだったんだわ…。



確かに同年代の異性と言えば、アリオンやオフィールがいるけど、彼らは仲間と言う感じで、初めて純粋に興味を持ってしまった人だ。



しかも、長身でスラっとしていて、でもしっかりした体つきでかなり格好いい…。



それにスキルなしであんな身のこなしなんだから、きっと努力もされてるんだわ…。


私も自分なりに努力してきたつもりだけど、王子様も努力しているんだと思うと頑張らなきゃって思う。


そりゃ気になっちゃうわよ…。


本で嫌って程、愛だの恋だのは読んで来たけれども、いつもそんな一目惚れとかする?! って思ってた。


一目惚れではないけど、恋をするのは一瞬なんだなって初めて気が付いた…。






でもダメよ。



私が人を殺したわけではないけど、私は決めたはずよ、その罪は私の罪だと。


私の手はもう汚れてる。



国を導くべきこの人の綺麗なその手は握れないわ……。





私はそう心に決めて、何も言わず後ろを振り返った。




「アリオン、行くわよ」


「あ、あぁ」




そういとアリオンは私を抱きかかえようとした。


その時、




「7日間!!! 7日間だけ待ってくれ!!!! 必ず結果を出して見せる!!!!」




そのまま私は何も言わずに、アリオンに抱きかかえられ、その場をあとにした。






絵の具の中を進む私の頬には一筋の涙が流れた。






さようなら、私の初恋。








別宅に戻ると、準備を終わらしたみんなが待っていた。




アリオンがばつが悪そうな感じで聞いてきた。




「よかったのか…?」


「いいのよ」


「どうしたの?」




リリアが聞いてきた。




「プロポーズされたわ」


「「「「「はぁ?!」」」」」





ライールさんが驚きながら、




「こ、断ったのか…?」


「何も言わず出てきたわ。私の手はもう汚れているの。国を導くあの人の綺麗な手は握れないわ」




私がそう言うと、皆はシーンとして下を向いた。




「さっ! みんな行きましょう! 帝国も楽しみだけど道中も楽しみだわ!」


「わかったよ。皆行くぞ」




ライールさんがそう言うと、皆荷物を持ちだした。


そして私達はその日のうちに王都を出た。

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