【ルイン視点】毒を盛りました
俺はサシェル義兄様に連れられカイエン兄上がいる、第2騎士団長室にきた。
医師も含め全員人払いをして、部屋の扉の前にはザッハを警戒体制で立たせている。
「ルインなにをするんだい」
「解毒します」
「ミゼールの花がないんだろ?」
サシェル義兄様は首をかしげながら言った。
「ないです。なので、別の解毒薬を作りました」
俺はそう言うと懐から小瓶を取り出した。
「そ、それって血かい?!」
「はい、俺の血です」
「ど、どういうこと?」
「サシェル義兄様、ここだけの内密にしてください。この件はザッハしか知りません。父上すら」
「う、うん?」
「俺には3つスキルがあります」
「え?」
「暗視、状態異常耐性、錬成です」
「ええ????」
サシェル義兄様は驚きながら言った。
「時間がないので詳しくは後ほどお話ししますが、フィオラ嬢はスキルが見えるのです」
「そ、そんなことあるのかい?!」
「あるんです。それで俺が状態異常耐性のイメージを込めて、俺の血を錬成して、それを詰めました。リコリラの毒を解毒できることは、俺とザッハで証明済みです」
サシェル義兄様は唖然として固まった。
「い、色々聞きたいことはあるけど、そのスキルがある前提で考えれば可能性はあるね! 早く飲ませよう!」
「はい」
俺はそういうと、横たわるカイエン兄上の頭を少しだけ持ち上げ、小瓶を口につけ飲ませた。
そして、サシェル義兄様がしっかり飲めるように、少量の水の魔法でカイエン兄上の体の中に流し込んだ。
そして暫くすると、ほぼ全身を覆うかのように広がっていた紫の斑点が少しずつ薄くなっていった。
「よかった…間に合った…」
「こ、これはすごいことだよ…! もはや万能薬じゃないかい!」
「俺の血はそんなに出せません」
俺は呆れながらサシェル義兄様を見た。
「し、しかし、解毒できてよかったね…」
「はい。しかしどれぐらいでカイエン兄上は起き上がることができるでしょうか…」
「そうだね、かなりギリギリっぽかったからね。1日ぐらいかかるかもね…少し回復魔法をかけておこうか」
「そうですか…」
俺が少し安心しながらそう言い、サシェル義兄様がカイエン兄上に回復魔法を使っていると、ドアが勢いよく開いた。
「ルイン様!」
「どうしたザッハ。まだ終わっていないぞ!」
「も、申し訳ございません! たった今、フィオラ嬢の所のスキル持ちが私宛にこれを…」
そういうザッハの手には1枚の手紙が握られている。
「フィオラ嬢の所からザッハに?」
「差出人はライールです」
「ライール殿から? なんだって?」
ザッハは音もなく俺の横に来ると、手紙を手渡した。
俺は手紙を見た。
ザッハ
昨日ルイン殿下と会ったぜ。中々しっかりした王子様も王国にはいるんだな。
ところで急ではあるんだが、俺達は王国を出ることになった。
フィオラが決めた。今回ルイン殿下が犯人じゃないかと噂が広がっているらしいじゃないか。そんでリコリラの毒を解毒できるミゼールの花がないらしいじゃないか。
フィオラがそれを考えた結果、自分の仕業にして、ルイン殿下にはもう少し王国の為に頑張ってもらおうということだそうだ。
だからフィオラにはその容疑がかかる。だがもちろん俺達はそんなことやってもいないので、捕まるつもりはない。
ルイン殿下から聞いて欲しいが、フィオラは天眼と言うものを持っているらしい。
どうも、フィオラはその天眼が導いたという帝国を見てみたいということだ。
そういうわけなんで、一緒に酒は飲めなそうだ。またどこかで。
ライール
「ザッハ、今すぐ止めに行け!」
と俺が言うと、今度は騎士団員が入ってきた。
「る、ルイン様! こんなものが王城に!!」
「なんだ!」
俺は騎士団員に渡された書状を見る。
不当に拘束された子爵家の報復として、カイエン殿下に毒を盛りました。
フィオラ・ジョルト
「ど、どうしますか…」
「こんなもの虚偽だ!」
「し、しかし…現状犯人がわかっていない中で、自分がやりましたと言っているので…」
く…くそ…。
犯人の目星はついているが証拠がない…。
その中で犯人だと名乗る人間が現れた。
しかもそれらしい理由まで添えて。
この状況で虚偽だとわかっていても、決めつけることは出来ない。
「ぐ…」
「ル、ルイン様?」
どうする。
まさかフィオラ嬢がこんなことをすると思ってなかった。
ライール殿手紙を読むに、恐らくあの聴力強化と身体強化のスキル持ちで、城内の話し声を拾って一連の事件の情報を知っていると考えられる。
しかし、俺がスキルを使って解毒薬を作れたことまでは流石に知らないのだろう。
カイエン兄上を助けることは出来ないが、セルジュ兄上の思い通りにはならない。
そんな一手ではある。
国のことを考えてと言うことだが…確かに彼らなら捕まることはないだろうから無事帝国まで行けるだろう。
だが、ルイン個人として全く嬉しくない!!!
「第2騎士団に、最少人数で最大限ゆっくり、出来れば明日以降ぐらいに子爵家を調べさせろ」
「りょ、了解しました…」
騎士団員はそういうと、ゆっくりと歩いて出ていった。
流石カイエン兄上の部下だ。
命令に忠実で、既にゆっくりだ…。
「ザッハ。今すぐライール殿の所に行き、なんとか一度フィオラ嬢に執務室まで来てもらえないだろうか? 彼らならできるだろ? 噂のある現状で俺は王城を出れない」
「はっ必ずや」
ザッハはそう言うと音もなく消えた。
一部始終を聞いていたサシェル義兄様は、
「これは私の所にも連絡が来ていそうだなーーー」
すると、ディアッハが外で俺を探している。
「どうしたディアッハ」
「はっ! ルイン殿下探しました! 実は至急フィレス公爵に…ってフィレス公爵!!」
「やぁディアッハ君どうしたんだい?」
「あの、その、これを! あとレミアにフィオラ嬢から手紙が届いたようで、王家に大激怒しているので、直ぐにお戻りいただきたく…」
「あぁ、それは怖いね…。ルイン、君たちのせいで私が娘に殺されてしまうかもしれないよ…」
サシェル義兄様は手紙を受け取りながら額に手を当て悲しむ仕草をしながら言った。
「あぁこりゃ帰らないと…。ルイン、フィオラ嬢のことは任せたよ」
そういうとサシェル義兄様はフワッと飛んで部屋から出ていった。
俺は急ぎエリオートを呼び、暗部全員で、移動系のスキル持ちがいることを考慮したうえで、24時間体制でカイエン兄上から目を離さず監視するように伝えた。
そしてザッハがフィオラ嬢を連れてきてくれることを信じ、執務室に戻った。




