ようやく来たわね
ルイン殿下とダンスを踊った後、フィレス公爵、ライールさん、ディアッハと踊り、私は一息つくためにフィレス公爵家の方々がいるところに戻った。
「フィオラ、ルイン殿下とのダンスすごかったわ! 他の人が踊るのやめちゃったもん!」
「皆さんルイン殿下に気を遣ったのでは?」
「いやいや、流石にそれはないわ。ルイン殿下がいきなりファーストダンスをフィオラに申し込んだのにもびっくりしたけども」
「しばらく噂されそうで面倒くさいわ」
「でも、もうホールの真ん中で踊る2人は完璧な王子様とお姫様だったわよ?」
「ルイン殿下リードがうまいのよ。知らないステップでも次どう動けばいいかなんとなくわかるの」
「そうなの?」
「うん。レミアも踊ってきたら?」
「そうするわ!」
するとレミアは、公爵令嬢になり、優雅に歩いて行った。
今では孤児院や就業支援の効果もあって、王国内で最大の発言力を持つ公爵家と言っても過言ではないレミアが歩いていくと、ルイン殿下と踊りたい令嬢たちも道を開ける。
レミアは本当に堂々としているわね。
私がそんなことを思っていると、後ろから声をかけられた。
「ふぃ、フィオラ! どういうことだ!」
ようやく来たわね子爵。
「どうもこうも招待状が来ましたので参加したまでですわ」
「そんなはずわ!」
「あ、私に直接国の方が届けてくださいましたの」
「王家には会ったことないと言っていたではないか!」
「はい、今日初めてルイン殿下とはお会いしましたわ」
「嘘をついたのか!」
「いえ? 届けてくれたのは国の方であって殿下ではありませんよ?」
「ぐ…」
子爵がそう言って言葉に詰まると、横にいたアマレーヌが、
「あなた、ルイン殿下とファーストダンスを踊っていい身分だと思ってるの!」
「私はルイン殿下に誘われましたのでお答えしただけで、それをお聞きになりたいのであればルイン殿下に直接聞いたらいかがですか?」
「はぁ?! 何ダンス申し込まれたからって偉そうに! しかも、あなた前見たいときにと随分容姿が違うじゃない!」
「ええ、最近お陰様で食生活も安定しましたから急激に成長したようです」
「そんなバカな話あるわけないじゃない! 何か変な薬でも飲んでるんでしょう! しかもなにそのドレス!」
「フィレス公爵家の方々にご助力いただいただけですわ」
なんだか面倒くさくなってきたわ…。
私がそんなことを思っていると、ライールさんとフィレス公爵が戻ってきてくれた。
「これはこれはジョルト子爵」
「ふぃ、フィレス公爵…」
「どうですか? フィオラ嬢のドレスは、妻と娘が見立てたものなのですよ!」
「そ、そうでございましたか…言っていただけましたら我が家で…」
「そうだったのですか? なんでもご実家からは今回の話が来ていないと伺いましたもので!」
「そ、それは…」
「そういうわけなんで、今日のフィオラ嬢は俺がエスコートしたわけですわ」
とライールさんが目を細めて言った。
「そんなことは少しも…」
「ああ、俺の招待状はサシェルが手配してくれたんでちゃんと正規に入城しておりますのでご心配なく。それとも何か問題が? よかったですね、王家がフィオラにも招待状を届けてくれて! 危うく名指しを無視するところでしたね!」
「ぐ……アマレーヌ行くぞ…」
「お、お父様!」
そう言うと子爵は苦虫を嚙んだような顔をして、アマレーヌを連れいなくなった。
「まだ、なんかやらかしそうだなあいつは」
とライールさんが言った。
「まぁでも、私に王家の目があると思うと、悪いことはやりにくいでしょ」
「それはそうだろうな」
「私自身への何かは、正直防げないようなことはないと思っているわ」
「まぁな」
そう話しているとレミアが戻ってきた。
「フィオラ! すごいわ! ルイン殿下は本当にお上手よ!」
「だよね」
「適度にお話なんかも交えつつ、正直第1も第2も大したことなかったけど、ルイン殿下は凄いわ!」
「流石公爵令嬢ね」
「ディアッハ!」
「なんだいレミア?」
「今すぐセルジュ殿下の側付きなんてやめて、ルイン殿下にしなさい!」
「えぇー! それは俺だけじゃ決めれないんだけど!」
「あなたは決めなくていいわ! 私が決めたから!」
「そんな無茶苦茶な! 実家にも相談しないと!」
「ティエルの家には私から言っておくわ! 絶対ルイン殿下と一緒の方がいい人間になれるわよ!」
「もぉー…わかったよぉー、フィレス公爵も来てくれませんか…」
「構わないよ~」
そう言って三人はティエル公爵家の所へ向かった。
レミアはなんだかアニール元王女みたいだわ…。
私はそんなことを思いながら3人の後ろ姿をライールさんと眺めていた。
そうして初めての夜会はその後は何事もなく終わった。
私はフィレス公爵家の馬車で送ってもらい、そのまま別宅に帰った。
別宅に帰りしばらくすると、アマレーヌが夜会の姿のままやってきた。
私はソファーに座ってリリアが後ろに立っている。
「あなた、一体どうやったのそれ」
「なんのこと」
「その体よ! どう考えたっておかしいじゃない!」
「お伝えした通り。急激に成長しただけですわ」
「嘘をおっしゃい! その使用人ね! その使用人が何か特別なことを施しているのね!」
「そんなことはしてないわ」
「その使用人は私につけるわ! お父様に言ってくる! あなた一緒に来なさい!」
こいつ…。
リリアに手を出すなんて許さないんだから。
私は小さな声で「リリア、あいつに生娘って言って」というと、リリアは何も言わず、入口を入ったところにいるアマレーヌの横まで行き、何か耳打ちした。
「な、な!!!!」
私はすかさず、
「あなた。私知っているのよ。いいのかしら」
「ななな、なんのことよ!!」
「別に放っておいてくれれば何もしないわ。ただ、リリアに何かしてみなさい? 一生後悔させてやるわ」
私はキッとにらみながら言った。
「ちょ、調子に乗らないでよね!!」
それだけ言うとアマレーヌはバタバタと出ていった。
本当あの子バレてないと思ってるのかしら…。
レミアもそれらしきこと言ってたわよ?
噂になってるんじゃない?
まぁ知ったことではないけど。
私はそんなことを思いながらリリアのいれてくれた紅茶を飲んだ。




