なぜ?
「うーーーーーーーーん、なぜ?」
私は地下の作戦拠点で、皆が化粧肌専用水を作ってる脇で私はソファーに膝を折り曲げて座りながら、一通の手紙を眺めている。
「第3王子主催の夜会なんて初めてなんじゃねーか」
ライールさんがワインを飲みながら話してきた。
「そうなの?」
「まぁ夜会ってのはいわば派閥づくりだからな。確か第3王子は王太子に興味なかったはずだ」
「へぇ」
「まぁ俺は噂だけで、赤ん坊の頃しか知らねーけどな」
「その人がなぜ私を名指し??」
「知らねーなー。持ってきたのが暗部な上に寮に持ってきたから、よほど確実に届けたかったんだろうな。」
「どういうことなの…」
私が悩んでると、アリオンが、
「フィオラ、上に人が来る。後50メートル」
と言った。
「子爵と奥さんと娘さんだね」
とオフィールが言う。
「リリア、戻るわよ」
「了解!」
そう言ってリリアと二人で急いで秘密の扉から別宅に戻った。
戻って私がソファーで本を読み、リリアが後ろに控えるように立っているとドアが開いた。
3人は中に入ると、子爵がソファーに座る私を見ながら聞いてきた。
「フィオラ、少し聞きたいことがある」
「なんでしょう」
「どこかで王家の方と会ったことはあるかね?」
「ありませんわ」
「そうか」
そういうと、アマレーヌが、
「ほら! 絶対私宛なのを間違えたのよ!」
「しかし王家がそんなミスを…」
「あなた! この子は会ったことないんだから間違いないわ!」
「どうかされたのですか?」
「いやな…」
「なんでもないわ! あなたには関係のないことよ! さ、いきましょうあなた!」
奥さんはそう言うと、強引に子爵の腕をつかんで出ていった。
3人が戻ったことをリリアが確認してくると、
「あれ、絶対あの招待状のことだよね」
「恐らくね」
「子爵家に届いたんだろうけど、名指しなのに間違えるなんてアホなことあると思ってるの?」
「思ってるんでしょうね…」
私とリリアが地下に戻ると、皆は爆笑していた。
「いやー、あの子爵家なんだかバカ過ぎて、笑えてきちゃったよ!」
とオフィールが笑いながら言った。
「そ、そうね…」
「んでフィオラよ、どうすんだそれ?」
ライールさんが聞いてきた。
「どうしましょうか…。正直面倒くさそうだから行きたくないのだけれど…」
「お前…一応王家からの名指しだぞ? 本来断れるようなもんじゃねーぞ?」
「知らないわよそんなの。私のことは私が決めるわ」
「お前…でも、夜会に出れる礼儀作法と、ダンスもワルツは完璧だろ」
「私はライールさんがダンスまでできたことの衝撃を今でも忘れられないわ」
「…一応騎士団団長だったんだぞ……お前らと一緒にいると本当自信なくすわ…」
するとリリアが閃いたように言った。
「あ、でも、もし第3王子がフィオラのこと好きになったら、たかだか伯爵家の婚約の話なんて消えてなくなるんじゃない?!?!」
すると皆もはっとした。
暫くすると、アリオンが、
「フィオラ、行くべきだ」
と私の肩に手を置いた。
「でも、伯爵家の婚約も、もっと別の方法でもつぶせそうじゃない? だって普通に悪いじゃんあの伯爵。いざとなったら伯爵家つぶそうと思ってたんだけど」
「確かに」
「それに子爵家も潰せるわよ? 子爵家つぶせばそもそもなくなるんじゃない?」
「た、確かに!」
「もし、自惚れてみたとして、王子に好かれたりしたら面倒くさくない? 私、もっと自由に生きたいのだけれど」
私がそう言うと、皆「確かにな」と頷いている。
正直義賊活動はもうやることはないと思えるぐらいの収入があるのだが、婚約の話はまだ残っていたので、あの後も子爵家と伯爵家の諜報活動だけは合間をみて継続してもらっていた。
すると出るわ出るわ。
もう叩けばホコリしかでない。
よくもまぁこんなにもと思ってしまうほどだ。
しかもアマレーヌにいたっては既に生娘じゃないときた。
もうびっくり!
あの子今後どうするのかしら…。
隠し通せるとでも思ってるのかしら…。
ウィルオス伯爵の次男に見初められたのも、その次男が好みの使用人を見つけたので人気のないところへ連れ込んでいて、そこにあの子も別の子爵家の次男と一緒に同じような理由で行って鉢合わせしたのが原因だ。
「でも、出ようかしら。ちょっとここら辺で子爵家には大人しくしてもらいましょうか」
「大人しく?」
ライールさんが聞き返してきた。
「第3王子は私を名指ししているということは、私に何か聞きたいんでしょ? 私貴族なんてフィレス公爵家の人達しか会ったことないし、あの人たちは私の事情も知ってるから多分話すことはないでしょ」
「そうだろうな」
「だとすると会いたいなんてことがあるとは思えない。恐らくウトリル関連で何かしら聞きたいんだと思うわ」
「まぁ暗部も俺等とフィオラが一緒にいることは流石に把握しているだろうからな」
「別に必要以上に隠してもいなかったしね。なんなら寮の表でフィレス公爵家の方々に挨拶したぐらいだし」
「うむ」
「ということは何か聞きたいんでしょ。そうとわかれば、逆にその人が使えそうな人なら、皆の為に何かできるかもしれない!」
「まぁ第3とは言え王子だしな」
「だからそれを見極めつつ、私と王子が話したりしているのを見たら、子爵家も私に下手なことはできなくなるでしょ?」
「なるほどな」
「だから出るわ!」
私はこぶしを握り締めて言った。
「フィオラ、その夜会はいつなの?」
リリアが聞いてきた。
「2カ月後だって」
「よーーーーーーーし!! フィオラをめちゃくちゃ綺麗にするぞ!! セリス!!!」
「はい!!! 最高効能のお水を準備します!!!!」
「ほ、ほどほどにね…」
こうして私は、リリアとセリスによって、夜会までの2カ月間磨きに磨かれた。




