やりすぎよ…
「ふふふ! セリス、確かこの前、一つの物に二つ魔法の付与ができるようなったって言ってたよね?」
「そうですね!」
「ちょっとこの水に、私が言うイメージで魔法を付与してほしいの」
「いいですよ」
私は水を汲んだボールを、セリスの前に置いた。
「まず、弱めの回復魔法の効果を。弱めね!」
「はい」
セリスはそう言うと、水の上に手をかざしながら目を閉じた。
「できたと思います」
「次にこの水が蒸発せずに垂らした場所に維持する感じで、風の魔法で蓋をする感じにして欲しいの」
「ちょっと難しいですね。やってみますね」
そう言うと、セリスはさっきと同じように水の上に手をかざし、目を閉じた。
さっきより長い時間セリスは手をかざし、
「大丈夫…だと思います」
「出来上がり!」
「なんだこれ?」
アリオンがボールを覗き込んだ。
「ふふふ、リリア、ちょっとささくれにこの水塗ってみて」
「うん?」
リリアはよくわかっていないようだが、水を少しスプーンですくうとささくれに垂らした。
「しみないね」
「あれ? ちょっと見せて?」
と私はリリアの手を見るが、ささくれが少し治ったりはしていなそう。
「あれ…」
私はそう言って自分の手に掬い取り、それを腕に塗ってみた。
うーん…。
「セリス、いくら弱めとはいっても回復魔法の効果が出たら、もう少しなんか改善しそうじゃない?」
「そうですね…。私のイメージではもう少し効果があるはずなんですが…」
そう言いながらセリスも水をすくった。
「んー…セリスのイメージの問題じゃない…」
「あ、フィオラさん水じゃないですか???」
「水?」
「はい! 付与しててわかったんですけど、例えば新品の縄と、使い古した縄だと、同じイメージで付与しても効果が変わったんですよ!」
「そういやそうだったな。古い縄は少し切れにくいぐらいにしかならなかったんだよな」
とライールさんが言った。
「なるほど! 水だ! オフィール!」
「え? 俺?」
「そう! 綺麗ないい水、格安で仕入れれるようにして!」
「ああ、そういうこと…。でもこれ何なんだ?」
「ふふふ、女の人の顔に塗る肌を回復させる水! 化粧肌専用水!」
と私が人差し指を立てて言うと、皆沈黙した。
暫くするとライールさんが、
「なるほど…。これは売れるぞ…。またとんでもないものを…。しかも広げ方を考えれば恐ろしく高額で」
「でしょ!」
「広げ方は考えてるのか? 貴族相手にした方がいいぞ」
「そうよねー。ライールさん?」
と、私が少し見上げるように言うと、ライールさんは私が何を言いたいのか悟ったのか、頭を掻きながら、
「まぁそうなるわな。一人だけ信用できる上に、その影響力のある貴族がいる」
そう言うとキッチンに置いてあった紙に何かを書き出した。
そして、
「アリオン、この手紙をフィレス公爵家に」
「おっけー、玄関でいい?」
「大丈夫だ」
「了解!」
そういうとアリオンは手紙を受け取り消えた。
「オフィール、水を!」
私がそう言うと、
「わかったよ。少し待ってて」
オフィールはそう言うと、キッチンから出ていった。
私とリリアとセリスの女子陣は、セリスの魔法イメージをもっと鮮明にしようと効果イメージを話し出し、暫くして戻ってきたアリオンとライールさんは飽きたのかキッチンから出ていった。
そして1時間ほどすると、オフィールが一人のおじさんを連れて帰ってきた。
「ライールさんすいません、俺だけだと信用が足りないので」
「構わんよ」
「初めまして、レジータ商会の王都支店の支店長をしているカルバンと申します」
そういうとおじさんは帽子を手に取りお辞儀した。
「初めまして、元王国第5騎士団長のライールです。ここじゃなんですから中にどうぞ」
ライールさんはそう言うと、カルバンさんをリビングに案内した。
私達も後ろをついていき、リビングに入ると、ライールさんとカルバンさんが向かい合ってソファーに座った。
「なんでもここでライールさんが子ども達を面倒見てらっしゃると伺いまして」
「ええ、間違いないですよ」
「それで、病弱な子どもがいて、どうしても綺麗な水が必要だと?」
「…えぇ…」
そう言いながらライールさんはオフィールの方をチラッと見た。
オフィールは斜め上をみて知らんぷりしている。
交渉スキルを使ったのね。
「私共の商会の本店は辺境にございまして、辺境の更に辺境に、アルバの泉と言うのがあるのはご存じですか?」
「ええ、存じてます。なんでも辺境ではその水で料理を作れば病気も治るとか」
「はい。まぁ病気が治るというのは迷信なのですが、この王国で手に入る水の中では随一の綺麗さではあると思います」
「なるほど。それを譲っていただくわけには?」
「勿論可能ですが、なにぶん辺境からですので輸送費がかなりかかりまして…」
「いかほどですか?」
「1樽100万ゴルドでいかがでしょう」
1樽で、小瓶100本ぐらいだ。
1本に使う水のお金が1万ゴルド。
流石にこれは高すぎる。
「…高すぎますね……」
「そうですか…しかし我々も商売ですから…」
するとオフィールがライールさんの横に、スチャっと座った。
「そういえば、この水は、ある方から依頼された物の開発にも利用することを検討していたんでした!」
「ほう?」
「依頼主がフィレス公爵家でしたねぇ。おお! フィレス公爵と言えば、魔法師団長殿ですね!」
オフィール交渉スキル使ってるわね…。
「フィレス公爵?!」
「いやー、フィレス公爵に認めてもらえたら、この水をレジータ商会から仕入れていると明言することもできますねぇ」
「ほ、本当ですか?!」
「いやぁでも、流石にこの値段では依頼された費用を上回ってしまうので難しいですね…残念です」
「ぐ……」
「そういえば依頼されたものは消耗品ですから、もしかしたら魔法師団や王城でも話題になるかもしれませんねぇ。話題になったら、王城の入場許可なんかもあり得るかもしれませんねぇ」
「……………………おいくらならば…?」
「1樽1万ゴルド」
100分の1…。
オフィールやりすぎよ…。
「いやいや、流石にそれは!!」
「そうですかぁ残念です…ではミケル商会さんにお願いするしかないですね…アルバの泉ではないですが、それに追随する水があるそうですから…」
オフィールがそう言うと、カルバンさんをじっとオフィールを見て、
「いやはや、わかりました。では今後こちらには定期的に1万ゴルドでお出しします。特別ですからね?! 絶対内緒ですよ?!」
「もちろんです!」
オフィールはそう言うと立ち上がりカルバンさんと握手した。
「王城での話題期待してますからね!」
「恐らくそれは間違いなく、話題になると思いますよ」
ライールさんはそう言った。
「わかりました。それではとりあえず、店にあった1樽は持ってきていますので、置いて行きますね」
「ありがとうございます。セリス」
ライールさんがそう言うと、セリスが部屋を駆け足で出ていって、お金の入った袋をもって戻ってきた。
「こちら1万ゴルドになります」
「はい、確かに。しかし君、オフィール君だっけ? その年齢で素晴らしいね。うちの店に来ないかい?」
「いえいえ、私なんかじゃただの足手まといですよ」
「そうですか、まぁ気が向いたらいつでも来てください。歓迎しますよ!」
「ありがとうございます」
「それでは私はこれで失礼しますね。詳細な必要数やタイミングは後日店の者を越させますので」
そういうとカルバンさんは出ていき、ライールさんが見送りに行きアリオンとオフィールもついて行った。




