【ルイン視点】王国を壊す気か!
エリオートのジョルト子爵家の報告に俺は愕然とした。
こんな腐りきってる貴族が存在するのか?!
いや、逆に一人いるということはもっといるということだ。
これまでの経験上こういうのはうじ虫みたいなものだ。
しかも一人娘は既に生娘じゃないだと?
そんなの今の貴族社会でも受け入れられなくないか?!
しかし、それに他の貴族子弟も絡んでいるとなると、学院自体がもうそういう不純性行為の場所になってしまっているということか?!
親の貴族たちは知っているのか?
女子だけでなく、男子だって、そんな貴族子女と婚約もせずにそんなことをしてしまったなんて噂が流れたら、流石に貴族社会にいることなんてできないだろう?!?!
いや? できるのか? もしやもうそれほどまでに腐りきっているのか??
もし婚約していたとて、俺の認識では問題なのだが…。
俺はため息をついて言った。
「別件にはなってしまうが、近いうちに王立学院に手を入れるぞ」
「はっ」
しかし、こうなるとジョルト子爵家がいつライールの逆鱗に触れてもおかしくない。
叩けばほこりしか出てこない。
「ザッハ、どうにかしてフィオラ嬢をジョルト子爵家から救い出さねば、いつライールの逆鱗に触れてもおかしくないぞ」
「はい」
「ルイン様、本件に関係があるかはまだ不明ですが一つお耳に入れておいていただきたいことが」
そういうと、一人のメンバーが一歩前に出た。
「どうしたラジル」
「昨日、私が以前から内偵を続けておりました、王都外れの盗賊団が拠点ごと一人も殺されず全員捕まり壊滅させられました。献金のあった貴族の名簿も投函されています」
「あの人攫い集団か?」
「はい。それと同時に、私とエリオートで探っておりました、例の宿屋の地下も、警備隊長の関与の証拠と共に城の衛兵の詰め所に投げ込まれました」
「非合法な監禁と売春が噂されていたところか」
「はい。そして二カ所とも、こちらのメモが置かれておりました」
そういうとラジルは紙切れを2枚俺の机に置いた。
『活動資金として1割頂きます』
とだけ記載されていた。
「他の金品は?」
「宿屋の地下の方は、監禁されていた女性達が持ち出したのか、相当荒れており、想定の3割ほどしか残っていませんでしたが、盗賊団の方は想定の9割ぐらいは残っていたと予想できます」
「これらがどうした?」
「これらの2件が同一の人間の実行したことは明白なのですが、あまりにも短時間でして」
「どれぐらいだ」
「2つの裏組織の摘発と拘束、人質の解放含めて、目撃者の証言から推測すると2時間~3時間ほどではないかと。そして実行したのはマントを被った人間だったと」
「…ライール達か……スキル持ちがいるのであれば可能であろう…」
「更に、盗賊団の方は流石に戦闘になったようなのですが、切り口が特殊でして」
「切り口?」
「はい。剣で切ったような切り口なのですが、切ったそばから焼けているような…」
「火魔法ではないのか?」
「それにしては、切り口以外の洋服が燃えておらず…」
「…ま、まさか、魔法剣か…?!」
「可能性です」
魔法剣…。
かつて帝国が周辺国を従えていった時の、主要部隊が使用していたとされる、今は実現できないアーティファクト。
現在では帝国に数本現存するのみだと伝え聞く。
「更に盗賊団のアジトに囚われていた盗賊たちですが、謎の縄で縛られており」
「謎の縄?」
「こちらです。騎士団が駆け付けた際に地面と一体化しており、一つ切るのに30分ほど要したとのこと」
そう言って机に縄を置いた。
一見普通の縄だが…普通の縄なら切るのに30分もかかったりしない。
「魔法師団に鑑定させろ」
「はっ」
しかし裏組織の摘発とそこから一部の資金を得る。
我々がまだつかめていなかった証拠まで添えて。
「フィオラ嬢のことは以降も必ず誰かは追わせろ」
「はっ」
「今から、王都の大きな裏組織の摘発を進める。フィオラ嬢とジョルト子爵家の監視以外は全員そっちに当たれ」
「はっ、しかしフィオラ嬢の救出は?」
とザッハが聞いてきた。
「そっちは、ライールが見ているから変なことにはならないだろう。癪だがな。それより今は、ライール達の義賊だ。そんなに摘発現場に金品が残っていたとなれば、いずれ民衆も気づき、その現場に居合わせたやつが群がる」
「はい」
「意図しているかどうかはわからんが、これは富の再分配になる。民衆は一気に義賊と認めて傾くぞ! 王都から王国がひっくり返るぞ!」
「はっ」
「ライール達がやっていることはいいこととは言えないが、民衆からすれば国が見て見ぬふりしてきた膿を義賊が摘発し、そして必要以上に独り占めしない。王国から民衆の心が一気に寝返る!」
「ライール達を捕まえることは至難の業な上に、そうしようとすると逃げられる可能性もある。今すぐ、大きな裏組織の摘発に動け!」
「はっ!」
そう言うと全員部屋から出ていった。
ライール。
いや、考えているのはフィオラ嬢か。
一体何を考えている!
王国を壊す気か!!
いやでも、そんな王国であったこともまた事実だ…。
くそ…父上含め一体これまでの王たちは何をしてきたのだ。
兄上たちも誰が次の王になるかなんて競い合っている場合じゃない。
このままいけば次の王の椅子なんて存在しないぞ!!!
ずっと握っていた俺の拳からは血が流れていた。




