シーズン2 第10話:神殿大掃除計画
シーズン2第9話をお読みいただきありがとうございます!
記憶の核心を取り戻し、神殿への怒りを新たにした茜。第10話では、救出した橘と共に神殿を文字通り「徹底的に大掃除」するための壮大な作戦会議と、反撃の幕開けをお届けします!
帝都ヴェルガの暗がり、身を潜めるのに最適な古びた安全家屋。
ランプのオレンジ色の灯りが照らす部屋の中で、宮内茜は地図の広げられたテーブルに向かい、シャープペンシルを小気味よくトントンと叩いていた。
「……ふう。神殿の構造はだいたい把握できたわ」
茜の向かいのソファに座り、まだ少し体調の優れない様子ながらも鋭い眼光を向けているのは、先ほど地下牢から救出された元高校教師・橘だった。
「まさか、たった一日で神殿の地下牢から私を連れ出し、さらに要所の警備配置まで完璧に頭に叩き込んでしまうとはね……。君のその戦闘力と頭脳、本当に元・主婦なのか?」
橘が呆れたような、しかし深い敬意を込めた笑みを浮かべてそう言った。
茜はふわりと上品に微笑み、紅茶のカップを一口啜る。
「主婦を舐めないでほしいわね。毎日の献立のやり繰りだって、冷蔵庫の残り物と賞味期限、家族の好みをすべて同時並行で管理する高度なマルチタスクなんだから。神殿のセキュリティの穴なんて、期限切れ間近の特売品を探すよりずっと簡単よ」
冗談めかして言いつつも、茜の瞳の奥は氷のように冷徹に輝いていた。
彼女の手元にあるメモ用紙には、『神殿大掃除計画』と鮮やかな文字で記されている。そこには、神殿の魔導結界の要である動力炉の破壊、歴代神官長たちの防衛網の無力化、そして帝国内で茜に味方する第2皇子ルキウスの勢力と連携した陽動作戦が、一切の無駄なく緻密に組み込まれていた。
「正面からガチンコで神殿の軍勢とやり合うつもりはないわ」
茜は冷徹に言い放つ。
「あんな巨大で歪んだ組織はね、根っこから力任せに引き抜こうとしても、周囲の土が崩れてかえって面倒なことになるの。だからこそ――不要な配線はプチッと切り、腐った部分はきれいに削ぎ落とし、全体を丸ごと『漂白』してあげるのよ」
「漂白、ね……。神殿の連中が聞いたら、それだけで泡を吹いて倒れそうだな」
橘は苦笑しながらも、その作戦のあまりの完璧さに舌を巻いていた。
神殿が何百年にもわたって築き上げてきた絶対的な支配システム。それを、一人の元主婦が「家の大掃除」と同じ感覚で解体し、更生させようとしているのだ。これほど痛快で、これほど恐ろしい話があるだろうか。
「それに、忘れないで」
茜はスッと立ち上がり、愛用の魔導銃を手に取って、カチリと小気味よい音を立てて弾倉を装填した。
「私には、この世界で守るべき王国(我が家)があるし、何より、私やアルスの平穏な日常を踏みにじったあの傲慢な連中に、本当の『礼儀』というものを教えてあげる義務があるわ」
その姿は、かつて理不尽な運命に翻弄された素人の主婦などではない。
世界の理すらも自分の管理下に置こうとする、真に気高く、そして絶対的な「女王」そのものだった。
「橘さん。あなたには安全な場所で休んでいてもらいたいところだけど……もし手伝ってくれるなら、最高の特等席を用意してあげるわ」
茜の言葉に、橘は深く息を吸い込み、力強くうなずいた。
「……ああ、喜んで。あの傲慢な神官どもが泡を吹いて驚く顔を、一番近くで見せてもらうよ」
帝国の夜明け前。
静寂に包まれた帝都ヴェルガの空に、神殿の威信を揺るがす「最強の大掃除」の狼煙がいま、静かに上がろうとしていた。
シーズン2第10話「神殿大掃除計画」をお読みいただきありがとうございました!
救出した橘と共に、神殿を文字通り「家の大掃除」の如く徹底的に解体・更生するための完璧な作戦を立案する爽快な準備回でした。いよいよ次話からは、神殿の中枢へ向けた怒涛の反撃劇が始まります!
次回、第11話もお楽しみに!よろしければブックマークや評価、感想をよろしくお願いいたします!




