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元主婦、異世界で暗殺者となり世界を救う ~裏切られたので暗殺ギルドごと王国を乗っ取りました~  作者: 凪塩 未来


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シーズン2 第8話:神殿の地下牢

シーズン2第7話をお読みいただきありがとうございます!


第2皇子ルキウスを手玉に取り、帝国の内側から崩壊させる足がかりを掴んだ茜。第8話では、いよいよ神殿の隠された中枢――「神殿の地下牢」へと単身潜入し、この世界の秘密に迫ります!)

帝都ヴェルガの地下深く。

地上の華やかな繁栄と歓楽が嘘のように、そこには不気味なほどの静寂と、凍てつくような冷気が漂っていた。

『神殿地下牢』――そこは、帝国や神殿にとって都合の悪い人間、あるいは世界の理に触れた者たちが、永遠の闇に葬られる禁忌の監獄である。


分厚い黒鉄の扉の影から、音もなく姿を現した影があった。

純黒の潜入用防具に身を包み、足音一つ立てずに石畳を進む宮内茜その人だ。第2皇子ルキウスから手に入れた最高機密の通行証と、暗殺ギルド『カナリア』で培った究極の潜入術の前では、神殿の厳重な警備網など、まるで穴だらけのザルに等しかった。


(……それにしても、空気が澱んでいるわね)


茜は鼻を突く血と消毒薬の匂いに眉をひそめながら、幾重にも張り巡らされた魔導の結界を巧みにすり抜けていく。

ルキウスを操り、帝国の内部から混乱を引き起こしている間に、彼女が自らここへやってきたのには明確な理由があった。茶会で耳にした「別の世界から訪れた特異点」という言葉。そして、自分がこの世界へ召喚された本当の理由。そのすべての答えが、この地下牢の最奥にあると確信していたからだ。


通路の突き当たり、ひときわ厳重な魔法の鍵がかけられた独房の前に、茜はたどり着いた。

格子窓から中を覗き込むと、そこには薄暗い石の床に横たわる、ボロボロのローブを纏った一人の人物の姿があった。


「……誰?」


茜が低く声を漏らした瞬間、その人物がゆっくりと体を起こした。

銀色の長い髪は乱れ、全身に魔導の枷(かせ)が嵌められているが、その瞳にかつての世界の面影宿す、信じられない光景が広がっていた。


「っ……!」

独房の中にいた人物は、茜の顔を見た瞬間、息を呑んで目を見開いた。

「あなた……まさか、私と同じ……『異世界からの召喚者』……?」


その声を聞いた茜は、ハッと目を見開いた。

日本語――それも、間違いなく自分と同じ現代日本からやってきた人間の言葉だった。


「嘘……あなたも、日本から……?」

茜が驚きを隠せずに格子に近づくと、牢の中の人物は苦そうに自嘲気味の笑みを浮かべた。

「驚いたな……まさか、私以外にもこの狂った世界に引きずり込まれた人間がいたなんて。私の名前は橘(たちばな)……十年前に、この世界へ神殿に召喚された元・高校教師だ」


橘と名乗る男の言葉は、茜の脳裏に雷が落ちたような衝撃を与えた。

十年前に召喚された教師。そして、彼が神殿の地下牢に幽閉されている理由。それは、神殿が隠している「この世界の残酷な真実」を彼が知ってしまったからだった。


「神殿の連中が企んでいるのは、単なる帝国による世界征服などというチンケなものじゃない」

橘は血にまみれた手を震わせながら、床に這いつくばって語り始めた。

「あの者たちが何世代にもわたって行ってきたのは、定期的に別の世界(地球)から人間をこの世界へ引きずり込み、その『魂の特異点』としてのエネルギーをすり潰すことで、世界の理を神殿の都合のいいように書き換えることだ……! アルスも、そして君も、すべては神殿の魔術を起動するための『使い捨ての道具』にすぎなかったんだ……!」


頭の中で、すべてのピースがカチリと音を立てて噛み合った。

なぜ自分がこんな世界に呼ばれ、なぜ我が子であるはずのアルスがああも残酷な運命を背負わされなければならなかったのか。そのすべての元凶が、この世界の理を我が物顔で汚し続ける神殿の連中にあると分かった瞬間、茜の中で、抑えきれない怒りの炎が沸騰した。


(――ふざけないでよ)


茜の瞳の奥から、かつてないほど冷徹で、そして底知れぬ狂気を孕んだ殺気が溢れ出した。

家族との平穏な日常を奪い、自分たちをただの「道具」として玩具のように扱ってきた神殿のシステム。主婦の目から見たら、これほど悪質で、これほど片付け甲斐のない「ゴミ屋敷」は他になかった。


「よく分かったわ、橘さん」

茜は冷たく、しかし優しく微笑みながら、手元から特殊な解錠用の魔導ツールを取り出した。


「なっ……君、その鍵は神殿の最高機密の――」

ガチャリ、と音を立てて、絶対に開かないはずの鉄格子と魔導の枷が綺麗に外された。


茜は圧倒的な手際で橘の枷を外し、彼を優しく支え起こした。

「安心しなさい。私はクタバレ王国の女王、宮内茜。そして、ただの怒れる母親よ」


茜は地下牢の暗がりを見据え、冷たく言い放った。

「こんな狂った世界、そして勝手に我が家を荒らしまわる神殿の連中なんて……私が根こそぎ、綺麗にお片付けしてあげるわ」


最奥の真実を知った元主婦の反逆は、いよいよ神殿そのものを飲み込む最終局面へと突入する。

シーズン2第8話「神殿の地下牢」をお読みいただきありがとうございました!


帝国と神殿の裏に隠された「異世界召喚の真実」が明らかになり、10年前に召喚された先駆者・橘との出会いから、物語が一気に核心へと加速する重厚な回となりました。神殿に対する茜の怒りはついにMAXへ――!

次回、第9話「母の記憶」もお楽しみに!よろしければブックマークや評価、感想をよろしくお願いいたします!

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